いま、ウーバーイーツの配達員にチップを渡す人はどんな人なのか...の画像はこちら >>

最近の「チップ」事情についてお話しします

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第137回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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日本のウーバーイーツにチップ制度が導入されたのは、新型コロナで外出の自粛が呼びかけられていた2020年5月のこと。それから5年9ヵ月。

計算したところ、これまでにいただいたチップの合計金額は7万3305円でした。ありがたいことです。

おかげさまで、チップを受け取る側の気持ちがとてもわかるようになりまして、今後、チップ文化がある国へ出かけたり、自分がウーバーイーツを利用する側になったら、出せる範囲でチップを出そうと思うようになりました。ただ、残念なことに海外へ行く機会や私自身がウーバーイーツを利用するタイミングがないのですが......。

今回はそんなチップにまつわる話です。

チップは配達員用のアプリから、どなたからいただいたのかざっくりとわかるような仕様ですが、それを見ると20年の導入当初の多くは海外の方からでした。

仕事の関係で帰国できず、ホテルで生活している方への料理をフロントに渡したり、自動翻訳で日本語に変換されているものと思われる注意書きのある配達先に置き配で届けると、しばらくして300円前後のチップが入るというケースがほとんどでした。

日本人と思われる方への配達で受け取るチップは、チップ機能というものがどんなものなのか、お試しで使ったのかなと思われるケースが中心。そのため金額は100円未満で、中には1円というものもありました。

日本の方で金額が大きかったのは、新型コロナの患者さんが宿泊療養施設として入っていたホテルに届けるケース。ホテルの裏口に設置された受付で、スタッフの方に商品を渡すだけなのですが、防護服を着ているスタッフの方を見ると緊張感を覚えたのを記憶しています。

新型コロナが5類感染症に移行され、海外からの観光客も増えてくると、チップをいただける方の顔ぶれが大きく変わりました。

「日本は安く楽しめる国だ。円安で物価が安い上、チップも払う必要がない」といったニュアンスのことがSNSなどで広まったのでしょうか。海外の方からのチップが激減しました。一方、日本の方からのチップがものすごく増えました。

この1年でチップをいただけたケースはこんな感じでした。

●お正月、親戚の集まる家にすしを配達 
●気温が氷点下。雪の予報が出ている夜の配達 
●深夜、配達員がものすごく少なくなるお台場エリアの店からの配達 
●2Lのミネラルウォーター6本をエレベーターのない建物の5階に配達 
●スポーツドリンクやレトルトのおかゆなど、体調を崩していると思われる方への買い物代行 

いずれも、感謝の気持ちからチップをいただいたものばかりでした。

私が学生の頃に読んだ海外旅行のガイドブックには「チップ文化のある国では、給与が安いのでチップがないと生活が成り立たないという事情があるため、絶対にチップを渡すこと。チップを渡さなかったり、相場より安いと、明らかに態度が変わります」といった注意書きがありました。

それを読んで「感謝の意味から生まれたチップの概念が形骸化しているな」と感じました。ですが現在、ウーバーイーツでチップを出してくれる方は、感謝の意味合いがこもっているのだな、本当の意味でのチップを渡しているのだなと実感しております。

そんなわけもあって私は、他の配達員が断ったと思われる大量の商品を運ぶ依頼や、配達員が行きたがらないエリアの店からの依頼を積極的に受けて、チップを期待しながら日々配達を行なっています。

チップがもらえるかもらえないかではなく、チップがもらえるかもと思うだけでやる気が上がるので。宝くじを買って10億円が当たるか当たったらどうするかワクワクする、というのと同じ感覚ですね。

文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明

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