パトリック・ユウさんの退任に思う「スタジアムDJ」の大切さ【...の画像はこちら >>

スタジアムDJについて語った山本キャスター

パトリック・ユウさんの退任が発表されました。

パトリック・ユウさんは2008年から20年近く、神宮球場のスタジアムDJとして活躍されていた方です。

球場の雰囲気を盛り上げる大切な役割を担ってきた彼の名は、スワローズファンであれば知らない人がいないほどの有名人であり、その声は神宮での観戦になくてはならないものでした。

現在はメジャーになりましたが、日本においてスタジアムDJが登場したのは1990年代前半と言われています。アメリカには「野球の音を楽しむ」という文化があるため、DJやオルガン奏者が球場を盛り上げていますね。一方で日本のDJは、選手紹介や場内アナウンスなどで雰囲気を盛り上げる役割が主な役割と言ってもいいかと思います。

中でもパトリックさんは、選手紹介から応援の煽りを得意とされていました。「ゴーゴー、スワローズ」の掛け声は神宮の名物ですね。そして、つば九郎の相棒としてフリップを読み上げる重要なお仕事もあり、チームの一員のような立ち位置として、ファンからも大きな人気を獲得していました。

過去にインタビューした時に印象的だったのが、パトリックさんも、多くのプロ野球選手と同じように単年契約であること。だから毎年、完全燃焼するために全力を尽くしているんです、と語る表情はとても真剣でした。

実際に、ホームで試合が開催される日はかなり早い時間帯から球場入りし、時間をかけて丁寧に準備をされている姿も目にしていました。スワローズ関連のニュースやテレビ番組などに目を通して選手の情報収集を欠かさず、それが日頃の愛溢れるトークにつながっていました。

スタジアムDJとして"間の取り方"を大事にされている印象もありました。

常に最適なタイミングを探り続ける向上心に満ちていて、その様子はアスリートと重なる部分も多かったと思います。

パトリック・ユウさんの退任に思う「スタジアムDJ」の大切さ【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第204回
パトリックさんと『スワローズ研究所』でご一緒した時の一枚です。

パトリックさんと『スワローズ研究所』でご一緒した時の一枚です。

たとえば、登場曲の尺を完全に把握し、曲に合わせてどんな言葉を入れるのかなど、選手が打席にスムーズに入れるように研究を重ねていました。そのリズムが、打席の内容にも影響があるのではないか、とおっしゃっていたのも印象的です。それを知ってからアナウンスを聞くと、本当に見事なタイミングなんです。球場を一体にして、選手の背中を押す。まさに、プロの仕事。

余談ですが、神宮だけではなく、私がキャスターを務めていた『ワースポ×MLB』(NHK BS)でもご一緒したことがあります。各チームのスタジアムDJがナレーターを務めていた時期があったのですが、そのナレーションは生放送で、VTRを見ながら声を乗せるスタイルだったんです。でも、あまりにパトリックさんのナレーションがうますぎて、視聴者の方からは収録だと思われていたとか(笑)。

スタッフのみなさんとも一緒にお酒を飲ませていただいたこともあるのですが、そこでもサービス精神旺盛でした。乾杯の音頭としてあの声で「ゴーゴー、スワローズ」と言ってくれたり、とても盛り上がったことを覚えています。

今回の退任のニュースは、スワローズ以外のファンからも惜しむ声が多く聞こえてきます。パトリックさんの声、存在感、人柄あってこそですね。大好きな神宮の景色には、いつもパトリックさんの声がありました。寂しさは拭えませんが、まずはお疲れさまでした。そして、ありがとうございました。

これまでは、神宮にいる時はお酒を飲めなかったでしょうが、今シーズンはスタンドで飲みながら試合を楽しむこともできますね。いつか、一緒にビールを飲みながら観戦できますように。

ゴーゴー、パトリックさん!

それでは、また来週。

パトリック・ユウさんの退任に思う「スタジアムDJ」の大切さ【山本萩子の6−4−3を待ちわびて】第204回

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作

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