働きすぎだよ、高市さん! 衆院解散前日、官僚と公用車は飛び回...の画像はこちら >>

特許庁前の多重事故現場。内閣府の公用車は幹部官僚を乗せて首相官邸を出た直後、次々と車に衝突した

高市首相の〝働きたい改革〟で疲弊する官僚、高齢者の動員が進む永田町はまさに日本の未来の縮図。

過重労働社会の再来は近い!?

【総理のために間に合わせろ】

1月22日、官僚たちは分刻みの日程に追われていた。首相官邸には小池百合子東京都知事らが次々に来訪。国家安全保障会議や日本成長戦略会議の分科会が開かれ、公用車が界隈を駆け回った。経済産業省の職員は回想する。

「解散報道から解散まで2週間もありませんでしたから、官邸は『総理の予定に遅延が出ないよう解散までに間に合わせろ』と。あの日もぎりぎりまで各会議の運営や資料作成に追われていました」

同日の経済財政諮問会議終了後、幹部官僚2人が公用車に飛び乗り、官邸を出発。直後の午後6時35分頃、公用車は赤信号の交差点に進入し、タクシーなど6台と衝突した。

この事故でタクシーに乗っていた30代の男性乗客が死亡。官僚2人を含む男女8人が重軽傷を負った。警視庁交通捜査課は自動車運転処罰法違反の疑いがあるとみて、重傷の運転手の男性(69歳)を調べている。

総務省の職員は疲労感をにじませて語る。

「総理は仕事熱心で突発的な指示やレク(官僚らによる各種事案に関する説明)の要請も多いです。

そんな総理の姿勢に共感して『働いて働いて』を実践する官邸幹部も増えています。上流ががむしゃらに仕事をすれば、選択の余地なく下流の業務も増えます」

高市早苗首相は昨年10月21日、上野賢一郎厚生労働相に「心身の健康維持と従業員の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討」を指示した。

高市印の〝働きたい改革〟の始まりだ。指示は、自民党の中小企業・小規模事業者政策調査会の提言を受けたもの。労働政策・人事ジャーナリストの溝上憲文(みぞうえ・のりふみ)氏は語る。

「提言は中小企業の人手不足解消、所得向上の観点から『働くべきときに働かない働き手が増えることは国の競争力の観点から問題』としていました」

中小企業の人手不足は深刻だが、高齢者を含め国民の多くはすでに懸命に働いている。国土交通省幹部は嘆息する。

「国は高齢労働者の動員を進めてきましたが、現政権で加速しそうな印象です。官庁街も公用車の運転手や各設備の維持など、多くのインフラが高齢労働者に支えられています。給与水準も月収20万円ほどが相場で、若者が来るはずがないですから」

1月末の総務省労働力調査によると、労働力人口は7004万人(25年平均)で過去最多となった。

高齢者と女性が増えたためで、65歳以上の人口に占める労働力人口の割合は26.5%(前年比0.4ポイント増)、就業率は26%と、65歳以上の4人に1人が働いているという結果に。溝上氏は高齢労働者を動員することの負の側面を指摘する。

「2024年の労働災害による死傷者数(休業4日以上)約13万6000人のうち、30%が60歳以上でした。転倒や墜落など高齢者ならではの事故が目立ちます。4月からは法改正で高齢労働者に対する事業者の安全衛生対策が強化されます」

公用車事故の運転手は69歳だった。高齢労働者が人手不足の解決策になるのか、懸念は尽きない。そこで浮上するのが現状の労働基準法の長時間労働規制の緩和だという。

「日本の長時間労働は先進国の中でも際立っています。実は厚生労働省の審議会では、労働基準法の長時間労働の規制強化をいっそう進める議論が進んでいました。

しかし、高市首相の規制緩和指示で審議会は空中分解状態に。働きたい改革は成長戦略会議で議論され、トップダウンで決まる可能性もあります」(溝上氏)

成長戦略会議はAIや半導体など17の戦略分野に官民投資を促進するため、昨年11月に発足。人材育成など「投資の制約となっている基盤整備」も並行して進める。

公用車事故で負傷した2人の官邸幹部は、この会議を取り仕切っていた。

写真/時事通信社

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