スズキ初の量産EVを公道テスト! eビターラは"国民的EV"...の画像はこちら >>

ホテルニューオータニ幕張(千葉県千葉市)の駐車場を起点に開催されたeビターラの報道陣向け公道試乗会を取材

販売絶好調のスズキが、ついに"初の量産EV"をニッポンに投入した。その名はeビターラ。

軽と小型車で庶民の暮らしを支えてきた自動車メーカーは、販売が停滞するニッポンEV市場に風穴をあけられるのか? その実力と勝算を確かめるべく、ガチ試乗&開発陣直撃で真価に迫る!!

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【スズキが放った、"本気のEV"】

2025年のスズキの世界新車販売台数は329万5013台。5年連続で前年実績を更新し、インドとアフリカでは過去最高を記録した。経営不振が続く日産を抜き、国内メーカーの世界販売でトヨタ、ホンダに次ぐ3位に浮上。かつて〝地味な軽メーカー〟と呼ばれた姿は、もはやどこにもない。

その進撃を象徴する一台が、同社初の量産EV・eビターラである。インド生産の世界戦略車で、BYD製のLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを搭載したコンパクトSUV。耐久性と安全性に定評のある電池を採用し、高級車並みのインフィニティ製オーディオを標準装備するなど、随所に本気度がにじむ。

バッテリーは2種類。満充電時の航続距離はWLTCモードで433kmと520km(四駆は472km)。価格は399万3000~492万8000円だが、国のEV補助金(127万円)を適用すれば、最上級グレードでも実質360万円台に収まる。さらに自治体の補助金が加わると、日本で購入できるEVの中でも屈指の〝現実的な選択肢〟になりうる。

というわけで、週プレ自動車班は千葉県でスズキが開催した報道陣向け試乗会に突撃。

ちなみにeビターラのニッポン正式発売は1月16日だが、実は昨年9月の発表と同時に予約受注が始まっている。では、販売状況はどうか。スズキ関係者はこう語る。

「社内目標は毎月クリアしています。ただ、日本はご存じのとおりEV市場がまだまだ小さい。その中で〝好調〟という位置づけです」

要は、同社のドル箱である軽スーパーハイトワゴン・スペーシアとでは市場の規模感が異なる。それでも初の量産EVとしては、上々の滑り出しという話である。

一方、自動車専門誌の編集者からはこんな疑問の声も。

「脱炭素といっても、巨大バッテリーを積んだEVが本当にエコなのかは議論があります。何しろスズキのアルトは150万円台で燃費28.2km/リットル(WLTC)を誇る」

スズキは「小・少・軽・短・美」を合言葉に、エネルギーの極省化を徹底してきたメーカー。そんな同社が全方位戦略の一環として送り出すのがeビターラである。

スズキ初の量産EVを公道テスト! eビターラは"国民的EV"になれるのか!?
スズキ eビターラ 価格:399万3000~492万8000円 取り回しも安心! ボディサイズは全長4275mm×全幅1800mm×全高1640mmで、最小回転半径は5.2m

スズキ eビターラ 価格:399万3000~492万8000円 取り回しも安心! ボディサイズは全長4275mm×全幅1800mm×全高1640mmで、最小回転半径は5.2m

スズキ初の量産EVを公道テスト! eビターラは"国民的EV"になれるのか!?
後席空間は好みに合わせてアレンジ可能。スズキ車らしく、収納スペースなど使い勝手にもこだわっている

後席空間は好みに合わせてアレンジ可能。
スズキ車らしく、収納スペースなど使い勝手にもこだわっている

今回試乗したのは、前後独立eアクスル(電動駆動ユニット)を備える最上位グレードの電動四輪駆動車。車重1890kgという、スズキ車としては異例の〝超重量級のダイナマイトボディ〟。

ドアを開けてコックピットに滑り込む。開閉音は重厚。八角形ステアリングに大型一体型ディスプレイ、ファブリックと合成皮革を組み合わせた上質なシート。従来のスズキ車のイメージを鮮やかに塗り替える空間が広がっていた。

走り出しは滑らかで静粛性も高い。EV特有の〝首が持っていかれる加速〟ではない。それでいて追い越し加速には十分な鋭さがある。ノーマル、エコ、スポーツの3モードも性格が明確で、扱いやすさが際立っていた。

スズキ初の量産EVを公道テスト! eビターラは"国民的EV"になれるのか!?
室内で目を引くのは、メーター、オーディオ、ナビをひとつにまとめたインテグレーテッドディスプレイ

室内で目を引くのは、メーター、オーディオ、ナビをひとつにまとめたインテグレーテッドディスプレイ

スズキ初の量産EVを公道テスト! eビターラは"国民的EV"になれるのか!?
シートヒーター、ハンドルヒーター、ヒーテッドドアミラーに加え、運転席にはパワーシートを装備

シートヒーター、ハンドルヒーター、ヒーテッドドアミラーに加え、運転席にはパワーシートを装備

最小回転半径は5.2m。コンパクトなボディと高いアイポイントも相まって、SUVでありながら街中では驚くほどリラックスして走れる。

軽やコンパクトで培ったスズキの知見が、ここでもしっかり息づいている。

そして最大の注目点が、新開発のEV専用の車体骨格。バッテリー保護と高電圧システムの収まりを最優先し、フロア下の構造を徹底的に強化した結果、車体剛性そのものが大幅に向上。つまり、重くなりがちなEVでも滑らかに曲がり、直進ではビシッと安定するよう、基礎から設計し直されている。

スズキ初の量産EVを公道テスト! eビターラは"国民的EV"になれるのか!?
ボンネットを開ければ、EVパワートレインがどっしりと鎮座。もちろん、音はほとんどゼロ

ボンネットを開ければ、EVパワートレインがどっしりと鎮座。もちろん、音はほとんどゼロ

走りの完成度も高い。電動四駆は前後モーターを独立制御し、しっとりした乗り心地と鋭い回頭性を両立。ちなみに二輪駆動モデルは約100kg軽く、より軽快な走りを見せる。共通しているのは、〝癖のなさ〟が徹底されている点。

開発を率いた大前陽平チーフエンジニアは胸を張る。

スズキ初の量産EVを公道テスト! eビターラは"国民的EV"になれるのか!?
eビターラのチーフエンジニア・大前陽平氏は、EV普及が遅れる日本市場での好スタートの背景を解説してくれた

eビターラのチーフエンジニア・大前陽平氏は、EV普及が遅れる日本市場での好スタートの背景を解説してくれた

「eビターラは100以上の国と地域に展開される世界戦略車です。発売を開始している欧州では〝スズキの四駆〟と〝スズキのSUV〟への信頼が厚く、そこに初のEVが加わったことで、確かな手応えを感じています」

狙ったのは〝誰でも扱いやすいEV〟だという。

「ガソリン車から乗り換えても違和感のない操作感を重視しています。具体的には滑らかな加減速、静粛性、視認性の高いディスプレイ表示などを突き詰めました。多くの人が安心して乗れるクルマに仕上がっています」

世界販売絶好調のスズキが放つ初の量産EV・eビターラ。EV普及が進まない日本市場だが、〝常識〟を揺さぶる材料はすでにそろっていた。とはいえ、リアルワールドでは充電インフラが万全とは言い難い。果たしてeビターラはEV時代の〝シン国民車〟になれるか、注目したい。

取材・文/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾

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