ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。
それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。
そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。
* * *
昨年末に発売された、漫画家のラズウェル細木先生、ライターのスズキナオさん、そして僕の3人の共著『そこそこでいいんだよ「酒のほそ道」の名言』の発売記念イベントが、京都、大阪、大阪と3日連続で開催された。そのため、数日前まで3泊4日で関西に滞在しており、朝から晩まで飲みまくって食べまくる、夢のように楽しい日々を過ごさせてもらった。
期間中滞在していたのは、大阪の京橋。駅の改札を出てすぐに見える、朝の8時営業開始の立ち飲み店「まつい」をはじめ、良い酒場が無数にある、大阪を代表する飲み屋街だ。
大阪・京橋
楽しいけれども調子にのって飲みすぎたダメージが少しずつ現れはじめる3日目の朝。主に行動をともにしていたナオさんと、朝食でも食べましょうということになり、とりあえず京橋の街へやってきた。仕事がら、旅に出ると僕はつい飲み屋にばかり足を運んでしまい、代表的なご当地グルメを食べないことは意外と多い。口癖は「それで1食使ってしまうくらいなら1杯でも多く飲みたい」。
が、この日はさすがに心身が穏やかな食事を求めているモードで、また、立ち食いそば/うどんが大好きな僕は、街にやたらと立ち食いうどん店があるのが気になりすぎていた。関西風の、だしが効いた優しいうどんで1日を始めたい。そこで、「京橋うどん」「松屋」「どん丼」と駅周辺だけを見ても良さそうなそれ系の店が複数あるなか、いかにも大衆的な「ゑびすうどん」という店に入ってみることにした。
「ゑびすうどん」
店は、道路に面してカウンターがあるオーソドックスな立ち食い店の作りになっているが、その上のひさしからビニールシートが地面まで降りていて半個室状態。この日は珍しく雪が降っていて寒かったものの、なかに入ってしまえばとても居心地がいい。立ち食いカウンターの他、昔ながらの町中華を思わせる小さなテーブル席があるのも嬉しい。
メニュー
メニューはさすが大阪な大衆価格で、最安の「かけうどん/そば」が税込290円。「ハイカラ」「きざみ」「こぶ」など関西風のバリエーションがあるのが余所者の僕には興味深く、ナオさんはそのなかから「スタミナうどん」(510円)を選んでいた。
スタミナうどんとは、関西の大衆店ではおなじみのメニューで、その多くは、天ぷら(かきあげ)、玉子、刻みねぎを具材としたもの。が、解釈はかなり自由で、煮た牛すじをたっぷりのせたスタイルの店などもあるらしく、要はスタミナがつきそうならば良いという、大変興味深い文化だ。
また、この店には各350円で、缶ビールやワンカップなどのアルコールメニューが数種あり、胃腸を癒しに入ったつもりが、思わず「チューハイ」を注文してしまう。サービスで出してもらったたくあん2切れが妙に合い、けっきょく朝から酒がすすんでしまう。
たくあんと缶チューハイがこんなに合うとは
東京にもできてくれないかな、支店
すぐに我々の注文した麺類も到着しだす。まずはナオさんのスタミナうどん。先ほど例に挙げたオーソドックススタイルで、少しだけ味見をさせてもらうと、しっかりとだしの効いたほの甘いつゆと、箸で持ち上げるのにもひと苦労するくらいやわやわの麺が、泣けるほどにうまい。
ゆるゆる天ぷらもいい
続いて僕の丼も到着。実はここまで触れていなかったが、僕が頼んでいたのは、まさかのラーメン!
しかも辛そうなやつ!
そもそも入店前から気になっていたんだけど、この店は外観に大きく「立ち食いうどん」と看板を出す一方、並列して「元祖極らうめん」なる文言も掲げていて、メニュー写真もそちらのほうが大きいくらいなのだ。詳細はわからないけれど「八兆の極らうめん」と名がついていて、醤油、塩、とんこつ、それから新メニューらしい「もつ辛とんこつ」などのバリエーションがある。
僕はそのなかの「辛極らうめん」がどうしても気になってしまった。値段もうどん類に比べると、1杯1,000円とかなり強気だからこそ、きっとなにかあるに違いない。というわけで、当初の目的はどこへやら、辛いラーメンをすすりつつ缶チューハイを飲むという、わりとハードな1日のスタートになってしまったというわけ。
しかしラーメンが届いた瞬間、その予感が間違っていなかったことを確信した。どんぶりを満たす真っ赤なスープの上に、麺が見えないほどの豚肉と野菜。美しい半熟玉子に海苔が1枚。そして頂点に、繊細に刻まれた生にんじん。美学しか感じない。
スープをひと口すする。うわ、ガツンとくるな。これはなにスープっていうんだろう? オーソドックスな鶏ガラ醤油スープに、炒めた豚肉と野菜の旨味が加わって、もはや煮詰まりを感じるくらいに濃厚になってしまったイメージ? 特徴的なのは豚肉がチャーシューでなくて薄切りなところと、野菜のメインがたっぷりの白菜なところで、あとから人に聞いたところによれば、「どうとんぼり神座」や奈良の「天理ラーメン」にも似た雰囲気らしい。まさに関西風ラーメンというわけだ。そこに僕の好きな、韓国の「辛ラーメン」的な旨辛さも加わってしまっていて、もう手がつけられない。寝ぼけていた頭と胃袋にカッと効く。
麺、いきます
たっぷりの具材の下に隠れていたのは、ぷりぷりつるつるのちぢれ麺。そのすすり心地が快感で、しかも中毒性抜群の旨旨辛辛スープをこれでもかと絡めとってくれる。食べれば食べるほどにうまい。もう、このあとの胃袋の余裕のことなんて考えていられない。あぁ、大阪最高......。
ところでこの「八兆らうめん」。
一方の僕は、こんなにも大好きになってしまったラーメンと出会えたことが嬉しく、今すぐにでも京橋に帰りたくてしかたがないのだった。
取材・文・撮影/パリッコ
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