トランプ大統領が"戦艦トランプ"の建造を発表! これは史上最...の画像はこちら >>

トランプ大統領が大々的に発表した戦艦トランプ!!

トランプ米大統領は昨年の12月22日、米海軍に全長256m、排水量3~4万トンの新たな「トランプ級」戦艦を建造すると発表した。

第二次世界大戦では、海軍の戦艦は主力だった。

しかし、大日本帝国海軍が空母艦隊で真珠湾奇襲し、米海軍太平洋艦隊の停泊中の戦艦を航空戦力で撃沈。続くマレー沖海戦では、帝国海軍陸攻機の航空戦力で英海軍戦艦と巡洋艦を撃沈した。これをきっかけに戦艦は主力から引きずり降ろされ、空母が主力となったのだ。

しかし近年、米空母は、中国の地対艦ミサイルの進歩でその存在意義が危ぶまれている。そんな最中、米海軍が戦艦を再登場させるという。それはいかなる艦艇なのか、軍事のプロたちに分析していただいた。

*  *  *

海上自衛隊潜水艦「はやしお」艦長、第二潜水隊司令を歴任した元海将で、現在は金沢工業大学虎ノ門大学院教授の伊藤俊幸氏はこう言う。

「戦艦と他の艦艇の一番の違いは、艦が打撃力を持つこと。そして、それ以上に他の艦と桁違いに装甲が重厚であることです。敵砲弾が当たっても沈まない"不沈艦"のイメージですね。

しかし、現代戦ではそれらはどうでもいい存在です。2026年現在、"戦艦"いうカテゴリーの海上戦闘艦はありません。

その存在しない世界に突然現れたのが戦艦トランプです」(伊藤元海将)

トランプ大統領が"戦艦トランプ"の建造を発表! これは史上最大&最強戦艦? それとも超大型の「標的艦」となる?
本物の米海軍戦艦アイオワ全長270m、4万5000t、40cm主砲9門の全斉射。写真は戦艦の打撃力を物語る一枚

本物の米海軍戦艦アイオワ全長270m、4万5000t、40cm主砲9門の全斉射。写真は戦艦の打撃力を物語る一枚

米海軍空母に100回以上乗艦取材した経験のあるフォトジャーナリストの柿谷哲也氏はこう語る。

「トランプと命名される艦名ならば、フォード級空母にそう名付けられるはずです。しかし『ジェラルド・フォード級空母7番艦ドナルド・トランプ』という名称になるのが気に食わなかったんでしょうね。

フォード大統領は同じ共和党なのに微塵もリスペクトがありません。そして、艦級は自分の名前にするのに、慣例に逆らって1番艦の艦名を『デファイアント』にするのは、沈められても自分の名前には傷をつけないというアイデアでしょう」(柿谷氏)

しかし、その「戦艦トランプ」の武装はただモノではない。現存する最高水準の砲とミサイル、そして未来兵器ともいえる極超音速兵器や電磁砲「レールガン」、巡航ミサイル、世界で最も高度なレーザー兵器を搭載し、史上最大最強の戦艦となるらしい。

さらに切り札は核弾頭搭載海洋発射巡航ミサイルだ。米海軍首脳は、「これで新たな核兵器の柱ができた」と自慢する。

米国の核ミサイルは、地上発射、爆撃機からの空中発射、そして原潜からの海中発射の3パターンだが、そこに海上発射が加わるのだ。その昔、米空母には核兵器が搭載され、艦載機から発射していたが、それを彷彿とさせる。

そして、この「戦艦トランプ」は一隻だけではない。

黄金艦隊として、最終的には20~25隻となるらしい。米海軍系シンクタンクで戦略アドバイザーを務めるミサイル戦略の専門家、北村淳氏がこう話す。

「戦艦トランプを完成させるのに、最も確実なのは中国に発注することです。これはもちろん例え話ですが、フリゲートも造れない米国が戦艦を建造するには、韓国や日本の支援が必要です。

米海軍、米国軍艦建造メーカーは、沿海域戦闘艦、ズムウォルト級駆逐艦の建造に失敗しました。そして、イタリアのフリゲートを改造して短期間で建造する計画も10年かかって一番艦が就役する見込みでした。

ところが、トランプがはや2隻目で打ち切りの決定を下しました。だから、米国にはフリゲートの数倍にもなる戦艦の設計・建造能力はなく、新鋭戦艦を生み出すことは全く不可能です。

私案ですが、日韓が米に協力して戦艦を開発建造するためには、まず米韓日の三ヵ国で多国籍造船会社を設立。ハワイの真珠湾に造船所を建築し、日韓が米造船業をリードする形ならば可能かと思います」(北村氏)

トランプは記者からの「この戦艦は対中国用の装備なのか?」との質問に対して、「全ての国に対してだ。中国だけではない。私は習近平国家主席と素晴らしい関係を築いている」と語った。

しかし、それは対全ての国ではなく、相手は中国だけだと疑える異見がある。

【発表された「戦艦トランプ」想像図を解析する】

今回発表された「戦艦トランプ」の分析を柿谷氏に依頼した。

トランプ大統領が"戦艦トランプ"の建造を発表! これは史上最大&最強戦艦? それとも超大型の「標的艦」となる?
トランプ大統領が"戦艦トランプ"の建造を発表! これは史上最大&最強戦艦? それとも超大型の「標的艦」となる?
柿谷氏製作の「戦艦トランプ」搭載武器と海戦して撃沈した敵艦推定

柿谷氏製作の「戦艦トランプ」搭載武器と海戦して撃沈した敵艦推定

「戦艦トランプ」の絵には、戦闘中の場面が描かれている。

その一枚目には、「戦艦トランプ」の奥に海上でミサイルが着弾し、炎上して燃える艦が見える。これは、日本国南側に来襲した空母「遼寧(りょうねい)」に随伴していた、レンハイ級中華イージス巡洋艦と推測される。「戦艦トランプ」の各種対艦ミサイルは、いとも簡単にその中華イージス巡洋艦を炎上させているようだ。

そして、二枚目で「戦艦トランプ」の攻撃を受けて沈没しているのは、中華イージス駆逐艦蘭州型052C型と推測される。

つまり、戦艦トランプは、中国空母艦隊に突撃し、最初に極超音速滑空体で撃沈。さらに艦隊に肉薄、残りの中華イージスを32MJ級レールガンで砲撃して、即撃沈。おそらく、そんな掃討戦の一コマを描いているのだろう。

また、戦艦トランプの上空に飛んでいるのは、Su27系列戦闘機。これは中国空母艦載戦闘機J15だ。

そのJ15が中国空母に戻ろうとしたところ、戦艦から放たれるSM6、SM2艦対空ミサイルで撃墜されている。

海戦のプロ、特に海中からの攻撃の専門家、潜水艦乗りからこの絵はどう見えるのか。 伊藤元海将はこう言う。

「最初の絵では、遼寧と戦艦トランプが近距離にいますが、現代の海戦においてこの距離での戦闘はあり得ません。

敵艦にこの距離で接近するというのは、『バトルダメージアセスメント(戦闘被害評価)』、つまり『こちらの攻撃の結果、敵艦がどうなったか確認しに行く』というときなのです。つまりこれは『まだ沈んではいない。とどめを刺せ』と言っている場面ですね」(伊藤元海将)

つまり戦闘後の後始末のシーンなのだ。

「それから、上空に中国空母艦載戦闘機が飛来して撃墜、もしくは新たな中国軍戦闘機が飛来するような光景にはなりません。ベネズエラで、統合作戦を完璧に遂行できるアメリカのレベルは違いますからね。

だから、戦艦トランプが戦った際の、全部撃墜される中国軍の姿を見せたかったんだと思いますよ。『搭載兵器を全て同時に発射し、こんなことができる戦艦ですよ』と紹介するための一枚絵なんでしょう」(伊藤元海将)

仮に、多国間軍事演習リムパックで、伊藤元海将が艦長を務める海自潜水艦、そして「戦艦トランプ」とイージス艦との艦隊が演習対決したらどうなるのだろうか?

「僕ら潜水艦乗りが海中から戦艦トランプを見ると『使い物にならないんじゃないか』と思いますね。

つまり、ターゲットとして恰好の餌食ですから。

3~4万トンの巨艦で遠くからはっきり見えるし、『ごっつあんです!!』といった感じでしょう。戦艦トランプが気づかぬ間に魚雷4本が接近し、はい終わりと。絵を見ると、対潜哨戒ヘリを搭載してないから、潜水艦に一発でやられます」(伊藤元海将)

となると、「戦艦トランプ」は核弾頭搭載巡航ミサイルを搭載していることからも、米国本土海岸近くで航行する"沿岸戦艦"となるのか?

「戦艦トランプはステルス艦ではありません。あれだけの大きさなのでレーダーによく映るし、中露の偵察衛星でも宇宙からすぐ見えますからね。一体、米国は何に使うのでしょうか? もし核搭載艦になるなら、中国に最初に沈められるのが戦艦トランプだと思います」(伊藤元海将)

まさしく、最初に撃たれる標的艦が「戦艦トランプ」なのだ

【対中、決戦海戦はどうなる?】

しかし、これでは対中国海軍との決戦海戦で、「戦艦トランプ」は何の役にも立たない。そこで、北村氏が現実的な対策を打ち出す。

「イラストのような中国相手の海戦が発生することは想定できません。戦艦トランプが活躍する海戦は、例えばベネズエラ海軍のような弱小海軍との戦いに限られます。戦艦トランプは、作戦の構想なしに開発中の兵器をむやみに搭載させた、軍事的意味不明の軍艦です」(北村氏)

対中国海軍の作戦構想は、果たして米海軍にあるのだろうか?

「中国海軍との戦闘を想定した場合の米海軍の基本戦略は、『分散ネットワーク艦隊戦略』です。対艦ミサイルを可能な限り多数装備した高速ミサイルコルベットと、新型フリゲートを可能な限り分散させ、個々の艦が撃沈されても損害を最小に抑え込む方針です。

しかし現在、米国は高速ミサイルコルベットを持っていません。新型フリゲートも開発に失敗し、再開発が必要です。

そのため、この分散ネットワーク艦隊を構築するべく、主力艦の高速ミサイルコルベットを韓国、日本、米国の三ヵ国で共同開発、建造する案が浮上しています。

海軍環境は、戦艦が主役の対艦巨砲時代から大型空母群を経て、現在はミサイル+ネットワーク時代です。敵の艦・航空機、敵地をどれだけ攻撃できるのか? 敵の対艦ミサイル、対艦極超音速滑空帯からどの程度生存できるのか? 敵による情報通信システム錯乱をどの程度、排除できるのか? そうした総合力を揃えなければ"最強"かどうかは判断できません。

分散ネットワーク艦隊となる海上自衛隊、韓国海軍、フィリピン海軍、米海軍の多数の高速ミサイルコルベットとミサイルフリゲートで形成され、第一列島線付近に分散展開する艦隊によって、中国海軍と対抗するのです」(北村氏)

これでなんとか、西太平洋最強の中国海軍に勝てるのだろうか......。その前になぜ米海軍はトランプの指示をなんでも聞くのだろうか......。

「米海軍が戦艦トランプのアイディアを拒絶すると、せっかくトランプが米海軍と米国内造船に巨額の予算を計上しようとしている流れそのものが頓挫してしまう。そのために戦艦トランプという夢物語を適当に持ち上げて、海軍予算や造船業への投資を確保しようとしているのです」(北村氏)

最強なのは「戦艦トランプ」ではなく、やはり結局、トランプ米大統領......。アメリカは大丈夫なのだろうか。

取材・文/小峯隆生

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