培養魚肉の研究に取り組んでいるというマルハニチロ
培養液の中で細胞を増やして作る「培養魚肉」。遠い未来の技術に思えるが、実は商品化の一歩手前まで開発が進んでいるという! 培養魚肉で食卓はどう変わる?
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【養殖を簡単に増やせないワケ】
水産大手のマルハニチロ(3月1日に社名をUmiosに変更)が培養魚肉の研究に取り組んでいるという。
同社事業企画部課長役の御手洗 誠さんによると、マルハニチロが培養魚肉などの新しい技術に取り組んでいる背景には、水産資源を巡る外国との競争があるという。
「ヨーロッパやアメリカ、中国で、健康意識の高まりによって魚の需要が増しています。その結果、今までは日本が買っていた魚を、外国にもっと高い値段で買われてしまう『買い負け』が起こっているんです」
御手洗さんによると、世界の天然水産資源の漁獲量は厳しく管理されているため、ここ数十年、減りもせず増えてもいない。ずっと横這いなのだ。だが、各国の需要が一方的に増しているため、昔から魚を食べてきた日本にとっては厳しい状況だ。
「世界的には養殖される魚の量は増えているのですが、伸びている魚種の大半がコイなどの淡水魚で、日本人が好んで食べるものではありません。ですので、日本の食卓はピンチなのです」
山形県遊佐町にある、マルハニチロの陸上養殖研究施設
2022年には三菱商事と合弁で、富山県入善町にアトランティックサーモンの陸上養殖事業を行なうアトランドを設立
魚が足りないなら、どんどん養殖すればよいのでは?
「日本の海は漁業権の管理が複雑で、新規の養殖場を造るのはほぼ不可能なんです。海で新しく養殖を始めたいなら、既存の養殖場を確保するしかありません。
ですから弊社は、海ではなく陸地で魚を養殖する『陸上養殖』の技術にも力を入れているのですが、それだけで今後の日本の魚の需要を賄(まかな)えるかというと心もとないのが現状です」
冷凍食品や加工食品、缶詰などのイメージが強いマルハニチロだが、漁業や養殖、物流などの事業も行なっている
そこでマルハニチロが目をつけたのが、牛肉や鶏肉で先行していた培養肉の技術だった。
「人工的に魚肉を作り出す技術としては、大豆やこんにゃくなど植物性の素材を使った代替魚肉がありますが、魚特有の風味の再現は難しいんです。一方、培養魚肉はより本物の風味に近い味わいを再現できます。
牛肉や鶏肉は実用化が進んでおり、すでに培養肉が売られている国もあるが、魚肉は現状、アメリカの1例に限られる。
「商品化が進んでいる培養肉ですが、コストの高さや消費者の安心感が課題です。そこで私たちは、食品・生体由来の成分のみを使用して培養する技術を持っているスタートアップのインテグリカルチャーと技術提携し、安心して食べられる培養魚肉の開発を目指しています」
また、培養肉の技術で先行する海外企業との取り組みもある。
「インテグリカルチャーとの提携とは別に、シンガポールで培養魚肉の生産・開発を手がけるUMAMI Bioworksとも手を結び、われわれが提供した細胞を基に、クロマグロの培養魚肉の開発に取り組んでいます。
シンガポールは世界で初めて培養鶏肉の販売許可を出した国ですから、こういった技術には積極的で、支援も充実しているんです。
また、マルハニチロはこれまで、天然の稚魚を漁獲する必要のない完全養殖の技術を培ってきました。その技術を活用することで、細胞を採取するために自然界のクロマグロを捕獲する必要がなく、天然水産資源への負荷も軽減できます」
クロマグロといえば、1本当たり数千万円の価格がつくこともある高級魚。近年の和食ブームに伴って、海外市場での人気も高まっている。培養技術が実用化した際には、手軽に食べられる未来もある......?
【天然ものを代替するのは難しい】「いえ、夢がないようですが、それは難しそうです」と御手洗さんは言う。
「まず、魚肉を培養したからといって、魚肉そのものや刺し身がポンと出てくるわけではないんです。すでにUMAMI Bioworksではほかの魚種で3Dプリンターを使い、切り身のような培養魚肉を作って試食する段階まで進んでいますが、本物の味に近づけるために、さらなる技術開発をまだまだ重ねています。
それと、現段階では生で食べることは難しく、最初は加熱して提供する形になりそうです。
植物性タンパク質で食感を調整したり、赤身と脂肪など、さまざまな細胞を組み合わせて培養することも考えているというが、価格面でも課題があるという。
「天然のクロマグロを下回る価格でご提供するのはまだ難しそうですね。しかし、環境が急変してクロマグロが取れなくなってしまった場合の選択肢のひとつとして、持続可能な食の未来に貢献できる取り組みだと考えています」
シンガポールのUMAMI Bioworksは培養魚肉開発のパイオニア。写真は同社による、培養魚肉のハタのソテー
培養中の完全養殖クロマグロの細胞(写真提供/UMAMI Bioworks)
培養魚肉の商品化に向けては、もっと大きなハードルがある。消費者の意識だ。
「肌感覚として、培養魚肉のような新しいテクノロジーを食品に導入することに対する、日本の消費者の抵抗は強く感じます。海外と比べてもハードルは高いでしょう。
ただ、かつては養殖魚自体にも強い抵抗感がありましたが、今はそうではないですよね。同じように、培養魚肉などのテクノロジーも、長期的には受け入れてもらえると考えています。われわれとしても、新しい技術を応用した食品の価値づけは重要な課題だと感じています」
とはいえ、将来的に培養魚肉が受け入れられたとしても、日本の水産資源がピンチである事実は変わらない。今後も魚介類をこれまでと変わらず、おいしく食べ続けるために、ほかに手段はないのだろうか?
取材・文/佐藤 喬
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