市川紗椰、人生2周目の犬・シーズーと暮らして30年の画像はこちら >>

一緒に暮らしているスクービーさん。下出っ歯、長いまつげ、そして泥棒フェース

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。

人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「シーズー族」について語る。

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私は30年間、ずっとシーズー犬と生活してます。というより、「シーズーさまと一緒に生活させていただいています」が正しい。7歳の頃に初代の「ちゃー」さんがわが家にいらして以来、ずっとシーズー教?の信者です。

今一緒に暮らしてくれてるのは、3代目の「スクービー」さん。貴族の風格と仙人の落ち着き、適度のおっさん味を併せ持つ、不思議なぬいぐるみのような生き物、シーズー族。たぶん彼らは毎日、人間を見上げながら思っています。「まだそっち、忙しいの?」

シーズー族の生態。まずは顔。丸い。徹底的に丸い。

角という概念が設計段階で却下されたような造形で、鼻は前に出ることをやめ、目は「全部知ってるけど言わない」という位置にある。あの表情、横目は犬のそれではない。

終電を逃した経験も、通販で失敗した経験も、だいたい体験済みの先輩の顔だ。口元は、いつもにっこり未満。笑っているわけでも怒っているわけでもなく、「まあ、いいか」と世界と和解している。

歯はまるで米粒。冗談みたいに小さい。イウォーク族やグレムリンとの決定的な違いはそこ(と、二足歩行)。ちなみにスクービーさんは、油断すると下の歯が出てしまいます。本人は気にしてません。

そして毛。とにかく毛。

気づくと目が隠れる。気づくと口に入っている。気づくと床に落ちてる。耳の毛は顔の横に高級カーテンのように垂れ下がっており、風になびくと、なぜかこちらが姿勢を正したくなります。

ずんぐりと足が短めのフォルムは、犬というより上質なおにぎり。握りやすそうなのに、触れるとシルクのような毛が指を擦り抜けます。すぐに目にかかりますが、それでも気にしないのもいい。世界が多少ぼやけていても問題ない、という哲学をすでに身につけている。

歩き方も独特。お尻を左右に振るモンローウオーク。散歩というより、自分の存在を街にお披露目する感じですかね。急に立ち止まり、「ここ、座る場所でしょ?」という顔で座り込むことも珍しくない。

交差点だろうが関係ありません。理由は不明。たぶん、風を感じてる。

やっぱり性格が絶妙ですね。シーズー族はとにかくフレンドリー。初対面でも、おそらく泥棒でも愛想を振りまくります。ただ、名前を呼んでも近づいてきません。聞こえてるのに来ません。目は合うのに来ません。完全に理解した上で、シーズー族は「行かない」という選択をします。これを「賢い」というのか、「頑固」というのかで、人間側の器が測れます。

シーズー族は基本的には構ってほしいはずですが、構われすぎると「今はそういう気分じゃない」と少し距離を取ります。

このさじ加減は、完全に人生2周目の振る舞い。あおむけで白目をガッツリ出し、口を半開きにして眠る姿は、この世に対する完全な信頼の証しだ。人類が目指すべき安心の最終形を示してます。

日本には白×茶のシーズーが多いですが、実際はさまざまな毛色、柄が存在します。ちゃーさんは黒、2代目のドゥーさんはグレー単色、スクービーさんはゴールドで口の周りが黒。色のバリエーションでも楽しませてくれるシーズーさま、さすがです。

●市川紗椰
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。シーズーと散歩してると、近所のおばあちゃんと仲良くなれるのも利点。

公式Instagram【@its.sayaichikawa】

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