QuizKnockライター・志賀玲太に訊く「ゴスロリって男も...の画像はこちら >>

志賀玲太

クイズ王・伊沢拓司が立ち上げた知的エンタメ集団、QuizKnock。その中で独自の存在感を放っているのが、ライターであり、同YouTubeチャンネルのディレクターでもある志賀玲太さんだ。

QuizKnockの記事執筆や編集に加え、個人では詩歌やエッセイの創作にも取り組み、1月には自身初の書籍『撃ち抜くみたいに着飾って 志賀玲太フォトエッセイ』を刊行。ゴスロリ服に身を包んだ撮り下ろし写真とともに、自身の内面を率直に綴っている。

そこで今回はQuizKnockでの役割から、本書出版の背景、そして「今ぶん殴ってやりたいこと」まで、志賀さんの頭の中を少しだけ覗かせていただく。

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■志賀さん、クイズは好きですか、嫌いですか?

――志賀さんはいくつか肩書がおありだと思います。Xのプロフィールでは「文章を書く人。QuizKnockディレクターetc.」とあり、動画によっては進行役をされたり回答者として出演されたりすることもあります。また、詩歌も発表していたり、今回は初となるフォトエッセイを出版したりもしていますが、それでは「志賀玲太」を一言で表すと何者ですか?

志賀 実はこの質問、結構悩んだんですけど、一言で言うなら「ライター」かなとは思っていて。Xに「文章を書く人」って書いている通り、今いろいろと挙げていただいたことの根底には共通して、自分でものを書いたり作ったりみたいなところがあるので。

――QuizKnockとの最初の関わり方もライターとしてですよね(2017年6月18日に初記事を公開)。

志賀 はい。最初はライターとしてバイトで入って、基本的に何でも屋なのでそこから他の仕事もやりつつ、記事を書いたり、直接書かなくても記事の編集をしたり、動画の台本を書いたり、文章に関わる仕事はずっとやっていますね。

ただ、それ以外にも最近までずっとやっていたディレクターという仕事は大きい仕事です。

私がよく担当したのは、QuizKnockの動画の中でも他の企業と一緒に動く、いわゆる案件動画と呼ばれるものなんですけれど、企画を立てて、「こんな企業さんならこんな宣伝方法ができます」という提案をしたり、台本を作って撮影を指揮したり。これも最近の業務のメインではありました。

――ディレクターという業務においては、作問はされないんですか?

志賀 作問しないことはないんですけれど、QuizKnockにはクイズを作る専門のチームがあるので、そのチームと協力することがほとんどです。

――ディレクター業務は大変ですか? 楽しいですか?

志賀 ずっと楽しいですね。特に動画の企画を立てるのは本当に楽しくて、企業と連動した動画となると規模も大きくなって、「QuizKnockでこんな大きなことができるようになったんだ」っていうのを感じながら動画を作ってきました。

――その一方で、「朝それ(※)」などでは回答席に座ることもありますよね。
(※QuizKnockの人気企画シリーズ『朝からそれ正解!』)

志賀 そうですね。QuizKnockというとクイズプレイヤーがたくさん出るチャンネルみたいなイメージがあるかもしれないですけど、そもそもQuizKnockってWEBメディアとして始まって、須貝(駿貴)さんとかさん(2025年に動画出演は終了)とか、もともとクイズプレイヤーじゃないメンバーもたくさん動画に出演していて。あくまでその中のひとりとして借り出されることもあるという感じですね。

QuizKnockの中でも、クイズプレイヤーと非クイズプレイヤーみたいな境界はあんまり明確じゃなくて。みんな同じく学ぶことが好きだし、動画や面白いものを作ることは好きだし、プレイヤーかどうかというのは実はあんまり関係なく出てますね。

――企画してディレクションして、書いて進行して回答もして、これまでさまざまな側面からクイズを見てきたと思うんですが、では総合的に見てクイズは好きですか、嫌いですか? あるいは得意ですか、不得意ですか?

志賀 これもいい質問だな~と思って。

まずはっきり言ってしまうと、クイズは苦手なんですよ。実は自分ももともと大学のクイズサークルに入ってて、それがきっかけでこのQuizKnockに入ることになったんです。なので、元々クイズをやってた人間ではあるんですけど、ここに来るともう伊沢(拓司)さんとか山本(祥彰)さんとか、みんな死ぬほど練習してきた甲子園球児みたいなクイズプレイヤーたちに囲まれるわけですよ。

自分もある程度はクイズの勉強や練習をしてきたはずなんですけど、「これは敵わないな」、ひいては「もしかして自分がQuizKnockでできることって多くはないのかもしれないのかな」みたいに考えてしまう時もあって。だから、自信を持って得意とはとても言えないんです。

その一方で、好きか嫌いかって聞かれると、断然「好き」の方に入ります。「苦手だから嫌い」みたいなことはまったくなくて。もちろん、ボコボコに負けたらイヤですよ。でもクイズって、例えば7対1で負けたとしても、1問取れた嬉しさって絶対ある。それってクイズの面白いところだと思うし、出題する側になっても尚更そういうところはあるし。この仕事してると、それを毎日のように感じることができるので、苦手でもできることはたくさんあるし、やりたいこともあるし、全然離れる気はないぞっていうくらいの好きでいます。

QuizKnockライター・志賀玲太に訊く「ゴスロリって男も着てもいいんですか?」
志賀玲太

志賀玲太

■志賀さんにとって「服」って何ですか?

――今回出版された『撃ち抜くみたいに着飾って』のもとになった文章がnoteに掲載されていましたが、プライベートのことも赤裸々に書いてあったので驚きました。

そもそもなぜ、ああいった内容のnoteを執筆されていたんですか?

志賀 今言ったように、私がQuizKnockでライターやディレクターとして作りたいものはハッキリあるんです。ただそれとは別に、「自分の中には、それだけではない部分もあるな」と思っていて。もともと趣味や自分のバックグラウンドのことも形にしたかったんですけど、「それはQuizKnockの中でやることじゃないよな」というラインがあったので、「そういうことは個人でやろう」と思い切って開設したのがnoteでした。

――QuizKnockのみなさんはあまりプライベートなことを語らない印象があったので、意外に感じたんですが、反響は大きかったですよね。

志賀 そうですね。結構いろんな人に読んでもらったり、それこそ出版社の方にも読んでもらえたりして、だからこそ今でも続けられてる部分もありますね。

――そんなnoteの記事が、今回1冊の本にまとまって出版されるまでの経緯は?

志賀 短歌の同人誌を出したことがあって、その活動を出版社の方に見つけてもらえて。なので最初はエッセイではなくて、短歌の歌集を考えていたんです。でも一冊の本にするには分量も足りないし、なんて話をしているうちに、noteのほうが結構読まれるようになって、ちょうどゴスロリの話を書いた頃だったので、そこからは書籍化を見据えて、その方向でしばらくエッセイを書いてみるようになりましたね。

――この本のメインのテーマは「アラサー男性、ゴスロリを買う」ですが、服装や性別の話に限らず、「学び」についてや、音楽、食、サーカスやストリップなどの話題まで多岐に及びます。こういったテーマの取捨選択はどのように行ったのでしょう?

志賀 書籍の担当編集の方とよく話していたのは、服だけでなく、とにかくテーマを広く書いてみようっていうことだったんです。でも、書籍やエッセイの中では明記していないんですけど、「装う」というテーマを軸にすることで考えていました。

「装う」と言うともちろん第一に「服」のことが頭に浮かびますけど、それだけじゃないですよね。「学び」だって結局後から自分で選んで身につけなきゃいけないものだし、「カルチャー」も自分で知って身につけていく。そういうところで全部の項目の根底に「装う」というテーマが通じているのかなと思っています。

だからこそ、「服」だけにならないように気を付けました。最初は、服について書いたから次はピアスについて書いて、書き下ろしでは眼鏡について書いて......みたいに進めていったんですけど、途中から「回転寿司」も入れちゃおうか、みたいな(笑)。だって回転寿司も結局人前で見られながら何を食べるかという話ですし。逆に、みんな同じ内容ばかりになっちゃったかな?と思ってたので、テーマが多岐に及んでいると聞いて安心しました。

――その中でもやはり一番印象的なのが冒頭の「アラサー男性、ゴスロリを買う」という章です。普通だったら「ゴスロリを着る」ことがきっかけになりそうですが、まず「買う」ことが始まりなのが面白いと思って。

志賀 それは今言われて、確かに普通「着る」だよなって思いました。でも、よく考えてみると、自分にとってはゴスロリを「買う」ほうのハードルがめちゃくちゃ高かったんです。

ラフォーレ原宿の地下1.5階にステキなお店がいっぱい並んでるじゃないですか。

あそこをグルグル回って、「すごく素敵なお洋服だけど、自分が着るためのものじゃないのかな」とか「自分はお客さんじゃないのかな」っていう感覚がずっとあったんです。でもその日は、「もう見て満足するだけじゃない。今日は何かしら絶対買って帰るぞ」という気持ちで出かけたんです。それが事の発端だったので、自然と「買う」というところがスタートになったんだと思いますね。

――当たり前のことを聞きますが、ゴスロリというのは、女性も、男性も、それ以外の方も着ていい服なんですよね?

志賀 ええ、そうだと思います。もちろん文化的にロリィタファッションというのは、元々女性のために作られたカルチャーで、さまざまな世間の目や偏見を気にせず、それらを跳ね返すために自分の好きに着る服であるというのは前提にあります。その上で、年月が経って今はより広く、性別や年齢を超えて開かれたジャンルになってきたとは考えています。

――志賀さんにとって「服」とはどういうものですか?

志賀 この本にも少し書いたことで、普段着はまた違いますが、「装うための服」というのは自分にとっては「武器」みたいなものだと思っています。どうにか手に入れた1本のナイフ。持っているだけで、まるで大声で意見や主張を叫んでいる力を持つような、戦うための相棒みたいなものだと思っていて。

――志賀さんは、何と戦ってらっしゃるんですか。

志賀 そもそもやっぱり私が好んでいる服のジャンル自体が、あまり「普通」なものではないとはわかっています。

でもやっぱり私はそれが好きだし、それを発言したいし、「みんなが視線を気にしてる人たちって、別になんか大したことないぞ」みたいなことをどうしても伝えたいんです。

そういう主張をしたい時に、言葉だけだとどうしても足りない時もあるし、自分も表に出る仕事をやっているからこそ、実際に誰かの前に立って行動することの影響力を感じる時もあって。そういう時に、1本のナイフを持ってるだけで世界がちょっとでも変わるんじゃないかって思うんです。そういう見えない何かと戦ってるんだと思います。

でも、みんなが思っている「普通」の外側にも選択肢はいっぱい広がっていて、「普通」じゃない服を着ることでそういう選択肢も選べることに気付けたのは嬉しかったです。そういう選択肢があるのも服の魅力ですよね。

――原宿カルチャーに憧れたきっかけは、きゃりーぱみゅぱみゅさんだという話が本書にも登場しますが、ジャンルとしてのゴスロリに憧れるきっかけみたいなものはありましたか?

志賀 朝の情報番組で『ズムサタ』(ズームイン!!サタデー)ってあったじゃないですか。あの番組で年に2回ほど、定期的にロリィタファッション特集をやってたんです。調べたら2009年ぐらいからやってたみたいで、あれを観ていてめちゃくちゃ衝撃を受けて。

当時の自分の目からしたら、それこそ「普通」ではない格好に見えましたけど、全員楽しそうだし、「これは何系でこれは何系で」って知らない単語がどんどん出てくるのも楽しくて。かっこいいし、かわいいし、こんなに種類があるこんな文化があるんだって。

細かなジャンルもたくさんあって、軍服ロリィタとかゴシックパンク系に興味が向いたり、「今日は『甘ロリ』じゃないな」「今日は『クラロリ』かな」って迷ったり。具体的なブランドでいうと、PUTUMAYOさんとAtelier BOZさん。「こんなかっこよくてかわいい服って世の中にあるんだ」って衝撃を受けましたね。それに何より、みなさんが自分の好きなもので楽しんでることに一番大きく影響を受けました。

――志賀さんの「スカートを履くのに「資格」は必要なのか?」(QJWeb)という文章も拝読しました。今でも好きな服装を着るのに「資格」は必要だと思いますか?

志賀 本当に嫌な話なんですけど、この社会では何をするにも必然性を求められてしまうんですよね。一番分かりやすいことで言えば、性別。「この性別はこういう服を着るべき」っていう視線があると思うんですけど、そういった必然性には抗いたいなと思います。

その上で思うのは、「資格」ってそんな大それたものではなくて、「なんか好き」とか「この服を本当に着たい」っていう気持ちがあったら、その時点でもう資格はあると思っていて。それこそ邪(よこしま)な気持ちじゃなく、その服に対してリスペクトがあったり、好きなお洋服を自分も着てみたいっていう想いがあったりしたら、それだけで「免許証あげるぜ」みたいな気持ちです。

――僕は男性で、ウィメンズの服を着ることもあるんですが、そもそもメンズの服って種類が少ないですよね。

志賀 そうなんですよ、メンズ服の選択肢って少なすぎます。合わせられるアイテムも限られるし、面白くないなと感じる時もあります。「もうちょっと良い服を着た方がいいぞ」とか言われたとて、生地が少し良くなっただけで、形は今までと何も変わってないみたいなことも多いですよね。

そういう意味でもロリィタにはいいところがあって。ロリィタはすごく小物が多いんです。普段の生活で絶対使わないコルセットとか、レースグローブとか、ヘッドドレスにするかボンネットにするかで迷ったりとか、じゃあタイツの柄はどうするとか。メンズファッションからいきなり装備品スロットが倍になったみたいな感覚で、「これとこれの組み合わせもできるじゃん」って面白さがあって。

服なので当然、機能面や身体に合ったサイズも大事ですけど、じゃあなぜ女性の服にはヒラヒラが付いていて、男性の服にはヒラヒラがないのか、真っ当に説明できる人は少ないと思うんですよ。

そう考えたら、やっぱりそこで「普通」の選択肢が狭められてるのはおかしいし、「男性はこういう恰好が似合う」という価値観も誰かが勝手に作った価値観でしかないと思うんです。そういう境界線は取っ払っていきたいし、そういう境界線を行き来できるからこその面白さは絶対あると思っています。

――自分の性別に違和感がある人や、着たい服があるけど着られないような悩みを抱えている人に、ポンと背中を押す一声をかけるとしたら、どんな一声をかけますか。

志賀 まず言いたいのは、「あなたがあなたらしくいられる場所を見付けてほしい」っていうことですね。「自分らしくいちゃいけない」なんて言う人はいないと思うんですけど、たまにその「自分らしさ」を咎(とが)める人がいたり、悪く言う人がいたり、嫌なことが起こってしまったりすることもあります。でも、そういうことに対していきなり立ち向かおうとしなくていいから、とにかく自分が楽に、そのままでいられる場所をどうか見付けてほしいです。

もしそういう場所が近くになければ、今はネットもあるし、若い方だったら大人や信頼できる人に相談するとか。そうやって、自分が自分らしくいられる場所をまず見つけてほしいです。あなたがすぐに変わる必要なんてないと思います。

着たい服装について悩んでる方に対しては、「私は一歩先に行ったぞ」くらいの気持ちでいるんです。だから「一歩先へ行ってみたら本当に楽しいぞ」と伝えたいです。自分の中に閉じこもってて「あの時あの恰好できなかった」と後悔するより、先へ進んで楽しいほうがいい。もちろん「人からどう見られるか」とか「似合ってる服で褒められたい」とかも服の楽しさのひとつなので、そこは否定しないですけど、それよりもまずは自分のために選択肢を選んでほしいです。

QuizKnockライター・志賀玲太に訊く「ゴスロリって男も着てもいいんですか?」
志賀玲太

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■志賀さん、最後にこれだけは教えてください

――QuizKnockは誰しもが楽しく学べるコンテンツを作っていますが、本書の中には普段QuizKnockのコンテンツにはあまり登場しないような話題も出て来るかと思います。先ほどQuizKnockの活動と個人の活動のラインの話もありましたが、あえてそこに踏み込んだ理由をお聞かせください。

志賀 私自身、性別に悩んだり自分のアイデンティティに迷いがあったりしたので、もしかしたらQuizKnockを応援してくださってるファンの中にも似たような悩みを持ってる方がいるかもしれないと思ったんです。QuizKnockの規模が大きくなって、いろんな人に観てもらえるようになったからこそ、私と似たような悩みを抱える少数の人のことも置いていきたくない。だからこそ私は個人での活動にも責任を持って、少し踏み込んだことを書きました。

だってそういう悩みに触れないまま「学びだ」「勉強だ」って言っても響きにくいじゃないですか。すべての人が同じ悩みを抱えてるとは思わないけど、もし学びよりも先に解決すべきことがあって、それが過去の自分と似た悩みなのだとしたら、力になれるのかもしれない。だから「悩んでる人もちゃんと見捨てることはないぞ!」って思っています。その上で、安心してQuizKnockを観てほしいですね。

――QuizKnockで今後挑戦されたいことは何かありますか。

志賀 大型企画をやりたいとか、何百万回再生される企画を作りたいとか、そういう思いはあんまりなくて。さっき言ったように私はクイズが苦手だし、それはもうすごいクイズ好きのスタッフがたくさんいて、みんな頼りになる人ばっかりなので、そっちは任せたと思っていて。

その代わり、QuizKnockは若い視聴者も多いので、安心して学べたり、遊べたり、暮らせたりするようなコンテンツを作っていきたいです。それこそ学校とか家庭で悩んでる人でも安心して楽しめるようなものを作りたい。それが一番ですよね。

――志賀さんが企画監督をしている「名文推測バトル(※)」なんて、クイズじゃないし、正解でない人でも称号がもらえるのがいいと思います。強いクイズプレイヤーたちに「自由にお絵描きしてごらん」って言ってるような、実に志賀さんらしい企画だと思います。
(※「QuizKnockと学ぼう」チャンネルのシリーズ企画。小説などの一節を推測して答え、正解者ではなく良い回答をした人に「今日の文豪」の称号が贈られる。)

志賀 ありがたいですね。そうなんです、あれはクイズじゃないんです。やっぱりクイズをコンテンツにしていると、クイズにしにくいものがどんどん出てきて、抜け落ちていっちゃう。国語みたいな教科はなかなかクイズにしにくい面もあって、だから「この本の著者は誰?」という正解がある問題ではなく、「この時の気持ちをみんなで考えましょう」っていう正解のない問題を出してるんです。でも、「そういうところにこそ大事なものっていっぱいあるじゃん」って思っています。

――これからもQuizKnockの動画をみなさんに楽しく観ていただきたい一方で、本書で一番のパンチラインが、「美しさなんていうものは、基本的に暴力のことだ。(略)私にだって振るいたい暴力がある。この世界に気に入らない部分がたくさんあって、覚悟の上でそいつらをぶん殴ってやりたいのだ」という強めの一文でした。最後に志賀さんは今どんな「暴力」を振るいたいか、お聞かせください。

志賀 これも、すごく面白い質問だな~。もともと藝大の芸術学科という「美しさとは何か」みたいなことを学ぶ学科にいたんですけど、世の中の人が思う美しさって、たぶんチェック項目がいくつかあって、それを一定数クリアすると美しいって判断になると思うんです。

でも私は別にそうじゃないと思う。そもそもそのチェック項目とか定規みたいなもの自体が世の中には無数にあって、この世界ではチェック項目が埋まらないけど、別の世界に行ったら全部埋まるものとかも全然あるし。みんなにその計測自体を疑ってほしいという気持ちがずっとあるんです。「その枠の外にこそ美しさがあるよ」って、みんなに気付いてほしい。

それこそ街で一見変わった、「普通」ではないファッションをしてる方を見たら、誰でも一瞬「えっ!?」って思うじゃないですか。でもその瞬間に、一瞬だけちょっと頭を切り替えてみて、「こういう風に考えたらなんかめっちゃカッコよかったかも?」みたいに考えてみてほしいんです。「えっ!?」って思ったということは、そういう部分が絶対あると思うんですよ。...だし、きっとその人はその尺度で動いてるんですよ。「ぶん殴ってやりたい」というのは、そういうところに気付いてほしいっていうことなんです。

自分とは違う物差しで動いてる人に気付くと、美しさって本当にもう無数に見られるものになってくる。いくらでも発見できるものになる。そういう今までと違う物差しを1つでも多く見つけてほしいです。

男性が女性の服着るとか、女性が男性の服着るとかじゃなくてもいい。例えば「もう時代じゃない」と思っていた革ジャンを着てみるとか、「昔憧れたけど結局やらなかったな」というファッションに挑戦してみてもいいし。ファッション以外のことだっていい。年代・性別問わず、みんなにそういう尺度をバンバン踏み越えて行ってほしいです。

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■志賀玲太(Reita Shiga)
東京都出身、 東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業。クイズ王・ 伊沢拓司率いる知識集団 「QuizKnock」に2017年6月より加入し、現在は主に同YouTubeチャンネルのディレクターとして活動中。他、エッセイや短歌を中心とした文筆活動や、メディア出演など。素敵なものに身を任せることが好き。

QuizKnockライター・志賀玲太に訊く「ゴスロリって男も着てもいいんですか?」

■『撃ち抜くみたいに着飾って 志賀玲太フォトエッセイ』
定価:1,980円(税込) 発売中  
判型:四六判 
「アラサー男性、ゴスロリを買う」QuizKnockの志賀玲太が初めて明かす、憧れとコンプレックスの29年間。ずっと着たかった、大好きな服を纏うことができるまで。作曲家・Neruとの対談も収録。

取材・文/酒井優考 写真提供/志賀玲太

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