2010年に後藤氏が上梓した自叙伝「憚りながら」
「ひとつの時代が終わった」―。その人物の訃報に接した複数の関係者が異口同音に口にした言葉である。
亡くなったのは後藤忠政氏。五代目山口組の執行部で権勢をふるい、政界や財界、芸能界にも影響力を及ぼしたとされる。カンボジアに渡って国王から称号を受け取るなど、反社会勢力の東南アジア進出の先駆けになったことでも知られる。昭和、平成の「ヤクザ黄金期」を象徴する大物ヤクザの死は、日本経済の没落と歩みを共にした裏社会の斜陽をも映し出している。
【山口組の首都圏進出の先兵】「後藤さんが亡くなったらしい」。高市早苗首相率いる自民党が歴史的圧勝をおさめた衆院選の投開票が行われた2月8日。裏社会のネットワークは、別の急報への衝撃で包まれた。その2日後には、通夜・葬儀の日程が記された「訃報」が出回ると、時代の移り変わりを実感する声が上がった。
「後藤氏が率いていた後藤組は、五代目山口組の直参の中でも武力、財力ともに群を抜いていた。後藤組は、殺人事件にも発展した新宿駅南口近くの不動産取引を巡る『真珠宮ビル事件』や、映画監督の伊丹十三氏が襲撃された事件への関与も取り沙汰された。90年代から2000年代前半にかけて、世情を騒がせた暴力団絡みの事件の背後には、常に後藤氏の影がちらついており、経済ヤクザとしても武闘派ヤクザとしても存在感は際立っていた」(全国紙社会部記者)
本部のある神戸を中心に、西日本を勢力圏としていた山口組が、首都圏に進出する際の先兵として活動したとされる後藤氏。
「後藤氏が引退後の2010年に出版した自叙伝『憚(はばか)りながら』(宝島社)も波紋を呼んだ。ともに富士宮市を拠点としていた創価学会との関係を暴露したこの自叙伝はベストセラーとなり、地元・静岡で起きた袴田事件を取り上げたドキュメント映画に出資したことでも話題を集めた。米国当局の資産凍結の対象にもなったのは、ある意味で暴力性や資金力も含めた後藤さんの『ヤクザ』としての影響力の大きさを物語っている」(同)
巷間、後藤氏を語る際に『憚りながら』という著書のタイトルが符牒のように語られたのも、関与が取り沙汰された数々の抗争や事件を背景として、その存在が広く浸透していたことの証左とも言えよう。
後藤氏が、ヤクザの「生存域」がまだ広かった昭和、平成期に全盛期を過ごしたことが、悪名とも換言できる知名度を得る理由の一つになったということもあるだろう。
【暴排の流れのなか海外へ】後藤氏が現役を退いた直後の2011年には暴力団排除条例が全国で一斉に施行され、裏社会の勢力図は「ヤクザ一強」の時代から、「半グレ」「トクリュウ」などの台頭によって大きく様変わりした。
こうした時代の流れを察知していたのか、後藤氏は現役引退後にカンボジアに拠点を移し、現地の政府高官らと交流。カンボジア国籍を取得し、爵位の称号を得るまでに関係を深めた。
当時の状況を知る元暴力団幹部は、こう語る。
「暴排条例の施行をはじめとして反社会勢力排除の風潮が強まるにつれ、ヤクザや犯罪組織がフィリピンやタイ、カンボジアなどの東南アジア諸国に進出する波は加速した。後藤さんがその先鞭を付けたのは間違いない。実業家としての顔もあったが、現地の政府への食い込み方は半端ではなかった。
かつて後藤氏が拠点としたカンボジアの首都プノンペン。現在この国の裏社会では、中国系の犯罪組織が幅を利かせている
カンボジアといえば、2012年9月、東京・六本木のクラブで発生した襲撃事件の主犯格として指名手配されている半グレ集団「関東連合」の見立真一容疑者の逃亡先として名前が上がった国でもある。
最近では日本などを標的とした国際的な特殊詐欺の拠点が点在していることでも知られるようになっており、2月には南部シアヌークビルで、詐欺に関与したとして日本人ら800人を拘束したと地元当局が発表したばかりだ。
1970年代から90年代にかけて続いた内戦下で、ポル・ポト派による住民の虐殺、ベトナムの軍事介入など混乱が続いたカンボジア。いまだ政情が不安定な同国には、中国系や現地マフィアなど、多くの犯罪組織が流入し、勢力争いを繰り広げているのが実情だ。
【日本の半グレは中華系の傘下に】群雄割拠の相を呈する現地でも存在感を示していた後藤氏だったが、同地でヤクザマネーのロンダリングを支援している疑いにより、米財務省から米国内資産が凍結され、米国人や米国企業との金融取引が不可能に。翌2016年に日本に帰国してからは目立った動きをみせることはなかった。
「カンボジアやフィリピン、ベトナムなどのASEAN諸国には世界中の犯罪組織が集まっている。後藤さんがカンボジアにいた2011年から16年ごろまでは、日本のヤクザもまだ勢いがあった。山健組系組織に身を置いていた元ヤクザが立ち上げた『JPドラゴン』はフィリピンに勢力を張って、現地や華僑系のマフィアと渡り合っていた。でも、最近、勢いがあるのはもっぱら華僑系。かつては自分のシノギがあったヤクザが、いまでは華僑系のマフィアに使われているって話はよく聞くよ。
ニュースとして大々的に報じられたシアヌークビルでの特殊詐欺グループの捕り物のみならず、いま現地では日本を標的とした詐欺グループの摘発が相次いでいる。沖縄を起点に日本全国で蔓延の兆しを見せている合成麻薬「エトミデート」など違法薬物の取引の枢要な中継地ともなっているとの指摘もあるが、そうした裏社会の勢力図は、この10年で様変わりしたのだという。
「いまはシノギのほとんどを中国や台湾の『黒社会』、いわゆるチャイニーズマフィアが仕切っている。後藤さんが元気だった10年ぐらい前は、ヤクザにも資金力、影響力がそれなりにあったから対等の関係を築いていたけれど、いまは中華系に使われる立場だよね。あいつらは東南アジアだけじゃなくてアフリカにも網を張っているし、扱える金額もシノギの規模も桁違い。ヤクザの看板も昔と比べるとずいぶん劣化しちまったかもね」(同前)
国際通貨基金(IMF)の見通しでは、日本の名目GDP(国内総生産)は2026年にもインドに抜かれ、世界5位に後退する見込みだとされる。国際社会での地位下落は、裏社会での存在感低下をも招いているのか。裏社会の「レジェンド」の訃報は、そんな哀しい現実をも想起させた。
文/安藤海南男 写真/photo-ac.com 宝島社
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