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昨季は16試合登板、8勝、防御率2.09をマーク。今季は沢村賞を目指す(写真/時事通信社)

高卒4年目の昨季、「デビューからすべて先発登板で7連勝」というNPB新記録を達成するなど、8勝を挙げてブレイク。
沢村賞を公言する21歳右腕のピッチングの極意をお股ニキ氏(野球評論家/ピッチングデザイナー)が深掘りする。

*  *  *

【高卒4年目の昨季ブレイク!】

――お股ニキと申します。お会いできて光栄です。

 こちらこそ光栄です。自分、お股さんの本で育ちましたから。

――恐縮です。

 高校生の頃に『ピッチングデザイン』を読んで、調子を取り戻せたんです。MLBが好きだったので、「シェーン・ビーバーのナックルカーブの回転軸はこうなっているんだ!」などと驚きながら読ませていただきました。『セイバーメトリクスの落とし穴』も含めて、野球のデータを本格的に勉強するきっかけになりましたし、親にラプソード(弾道測定器)を買ってもらうきっかけにもなりました。

――熱心に読んでいただき、ありがとうございます。では早速、本題に入らせていただきます。達投手は194㎝、101㎏と大柄ですが、実は誕生日が3月27日で早生まれ。

4月生まれの同級生とほぼ1年違いますが、それでも小さい頃から大きかったですか?

 中3くらいでもう190㎝近くありました。小6でも178㎝くらいありましたね。

――やっぱり大きいですね。昨年からオフにアメリカでトレーニングをしていますが、アメリカには190㎝台の選手が多くいて、データや感覚が参考になるからですか?

 まさにその目的で行っていますね。「ドライブライン」では、身長と体重が自分と一緒くらいの選手とピンポイントで比較してもらっています。どうしても日本だと、身長の低い投手から高い投手まで平均化したデータで比較されるんですが、それだと身長の高い投手の特徴があまり生かせないような気がして。

――体格によって感覚はまったく違いますからね。

 アメリカはどちらかというと欠点をなくすのではなく、いいところをもっと良くしていこうという考え方なので、それが良かったと思います。

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――なるほど。アメリカでのトレーニングの成果もあり、昨季8勝を挙げるなど本格的にブレイク。高卒4年目での飛躍は計画どおりでしたか?

 まあ、1年遅かったですかね。3年目で100イニング以上投げる、という目標を立てていたので。

――でも、早生まれなので、実質3年目ということで(笑)。

 はい(笑)。

【今年のフォームはダルビッシュを意識!】

――持ち球の話もお聞きしたいです。昨季はスプリットがすごく良かったですが、昔からこんなに良かったですか?

 高校生の頃はフォークを投げる人があまりいなかったので、簡単に空振りを取れたんですけど、プロに入ったら、適当に投げたフォークでは全然空振りを取れなくて。2年くらいずっと模索して、3年目からようやく落とし方がわかってきて、そこからはずっといい感覚ですね。

――フォークはけっこう縦のワンシーム回転が肝になるんですが、そうなるように握りも意識していますか?

 最初は狙ってやっていたわけじゃないんですけど、投げていくうちにわかってきましたね。ハイスピードカメラで撮ると、いいボールのときはワンシームになっていて。

――人さし指と中指のどちらで切る感覚ですか?

 自分は中指ですね。

――ちなみに、このオフはフォーシームスライダーも練習されたそうですね?

 はい。

――手前味噌で恐縮ですが、それが私の提唱する「スラッター」なんですよね。フォーシーム回転でカットボールを斜めに落とすイメージです。

 まさにそのイメージです。

ダル、大谷に続く"北の超逸材"・達孝太「夢は日本人初のサイ・ヤング賞。背番号11は今すぐにでも着けたい」
最も自信のある球はフォーク。「前に飛ばされない、一番安全な球」(撮影/週プレ編集部)

最も自信のある球はフォーク。「前に飛ばされない、一番安全な球」(撮影/週プレ編集部)

――ジャスティン・バーランダー(タイガース)がよく投げていますが、オーバースロー投手の縦で切って斜めに落とすスライダーはやっぱりとても効果的だと思います。

 ありがとうございます。試合で投げるのが楽しみです。

――実はワンシーム、ツーシーム、フォーシームとシームを変えるだけで変化量がかなり変わるんですよ。右打者、左打者とか、ケースによって試してもらいたいです。達投手のスラッターももう少し改良できると思うので、後ほど話しましょう(笑)。

 ありがとうございます。あと、このオフはスイーパーも練習したんですけど、やっぱりオーバースローの投手には難しいなと正直思いました。

――今年のフォームは少しダルビッシュ有投手(パドレス)みたいな意識ですかね。

 そうですね。

――達投手はオーバースローですが、実は横の要素も少しあって、それがミックスされている印象です。

ダルビッシュ投手の意識も入ると、スイーパーの質もさらに上げていけると思いますよ。

 自分の場合、普通のスライダーがスラーブっぽく横に大きく曲がるんですよね。

――オーバースロー気味で横の変化量があると、バッターからしたらギャップがあって打ちにくいでしょうね。

 そうかもしれないですね。うまく使っていきたいです。

【ほぼ2球に1球!フォークへの自信】

――ブレイクを果たした昨季、8勝のうち7勝をリードしてくれた伏見寅威(とらい)捕手が今季から阪神へ移籍しました。フォークピッチャーをうまく生かす捕手ですよね。

 自分のピッチングスタイルを確立してくれたのは寅威さんです。1軍である程度通用する球をちゃんと選択してくれて。それがフォークとスライダーでした。去年は本当にその2球種だけで1年ほとんど投げていましたから。

――やっぱりフォークって本当に大事な球で。

決め球だけでなく、カウント球でも使えたり、ゴロを打たせたり、いろいろな用途がある使い勝手のいい球ですからね。

 そうですね。去年は投球割合でいうと46%ぐらい投げました(笑)。

――ほぼ2球に1球ですね。正直、フォークを決め球だと思っている人が多いですけど、個人的には「3割以上投げないと打者に意識されないから意味がない」とずっと言っていて。5割くらいまでいくと相当多いというか。

 そうですね。シチュエーション別に投げますし、自分にとってフォークは前に飛ばされない、一番安全な球なので。「それで打たれたらしょうがない」と自信を持って投げていますね。

ダル、大谷に続く"北の超逸材"・達孝太「夢は日本人初のサイ・ヤング賞。背番号11は今すぐにでも着けたい」
今季のデータ面での目標は「フォークの投球割合が40%以上」「K-BB%が最低20%」と宣言!

今季のデータ面での目標は「フォークの投球割合が40%以上」「K-BB%が最低20%」と宣言!

――フォークを主軸にはしながらも、もっとストレートが強く速くなれば、さらにピッチングが楽になりますよね。

 それを目指しています。フォークは真っすぐの平均球速と大いに関わってくるので。

真っすぐが速くなればなるほど、フォークの空振り率も上がるし、フォークの空振りが増えるほど、真っすぐの空振りも増えるものなので。

――相互作用ですよね。

 そうですね。今年は最低でもアベレージ150キロにはしたいです。あと、やっぱりフォークは投球割合の40%以上は投げたいですね。

――ほかにはどんな指標や数字を意識していますか?

 一番はK-BB%(奪三振割合から与四球割合を引いた数。1打席当たりで四球に比べて奪三振がどのくらい多いかを示す指標)ですね。

――いいですね。実力をしっかり反映する指標ですからね。

 もうそれを高めるために頑張っています。本当に自分は三振を獲(とる)ることが好きなので。この数字をどれだけ高くできるか。いつも試合が終わるとすぐにどのくらいだったかチェックしているんですよ。「上がってる、上がってる」とか言いながら(笑)。

――細かくデータを把握されていて素晴らしいですね。今季はK-BB%でリーグトップを目指してほしいです。

 トップまでいきたいですね。去年は確か18%くらいだったので。そこそこいい線まではきているんですけど。

――今の日本の野球だと20%を超えて、25%いったら相当すごいですね。

 はい。そのあたりを目指して。最低でも20%はいきたいです。

【夢は日本人初のサイ・ヤング賞!】

――達投手は沢村賞を目指すと公言していますが、先輩である伊藤大海投手が昨季初受賞しました。チームメイトから刺激を受けますか?

 去年までは沢村賞というものがぼんやりとしていたんですけど、大海さんが受賞したことによって、はっきりと実感として湧いてきて。自分も受賞したいなと思い始めました。物差しがはっきりしたイメージですね。

――今季は有原航平投手も移籍してきて、ファイターズ投手陣はとんでもない分厚さになっていますが、沢村賞を目指すとチームメイト同士での争いになってくると思います。

 そうですね。そこは負けないように頑張るだけですね。

――達投手はかねて将来的にサイ・ヤング賞を受賞したいとも公言していますよね。沢村賞とサイ・ヤング賞、両方受賞した投手はまだいません。

 サイ・ヤング賞はそもそも日本人投手がまだ受賞していないですからね。あんまり大きな声では言えないですけど、「日本人で誰か受賞するのかな?」とサイ・ヤング賞の発表はいつも気にしていて。自分が日本人初になりたいので。

――ダルビッシュ投手も2位が2回ですからね。そう考えると、本当にファイターズは偉大なOBがいる球団ですね。ダルビッシュ投手、大谷翔平投手(ドジャース)が着けた「背番号11」はかなり重い番号になっていますが、将来的に継承したいですか?

 もう今すぐにでも着けたいですよ。

――頼もしいですね。

 早く着けないと、今後誰も着けられなくなるので。今年は大海さんが着けると思っていたんですけど。「大海さんが着けなかったら、次、誰が着けんねん」って(笑)。でも、今は自分が着けたいと思っていますよ。

――今季沢村賞を受賞して、来季「背番号11」を継承する流れですね。

 はい。そうなるように頑張ります。

●達孝太 Kota TATSU 
2004年3月27日生まれ、大阪府堺市出身。2021年にドラフト1位で北海道日本ハムファイターズへ入団。高卒4年目の昨季は8勝を挙げるなど本格的にブレイク。オールスターにも初出場を果たし、「デビューからすべて先発登板で7連勝」というNPB新記録を達成した

取材/お股ニキ 撮影/照屋恵太

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