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損壊罪の対象となる国旗をどう定義するか、協議はこれからだ

先の衆議院総選挙での歴史的大勝を経て、第2次高市政権が始動した。連立を組む維新と合わせ、衆院議席数の4分の3を占める大与党となる中、憲法改正や食料品の消費税減税、安全保障の強化など、さまざまな政策の前進を目指すとみられる。

そして「国旗損壊罪」の創設もその一つだ。

「国旗損壊罪(以下、損壊罪)の制定は、『国旗及び国歌に関する法律』が1999年に施行されるに至る議論の中でも主張されていました。しかし、表現の自由をめぐって野党から反対を受けたことで、共倒れとなる危機を回避するため、議論から切り離されることになりました。

その後も保守系議員を中心に断続的な検討が行われてきました。当時その輪の中にいたのが現首相の高市氏です。民主党政権下の2012年には、損壊罪の制定を盛り込んだ刑法改正案の提出者に、いち野党議員として名を連ねましたが、廃案となっています」(大手紙政治部記者)

そんな中、ある出来事をきっかけに、損壊罪制定への機運が一気に高まりを見せる。

「2019年のあいちトリエンナーレ『表現の不自由展』での展示内容に対して保守層からの批判が高まったことで、損壊罪の制定に関する議論が活発化しました。2021年には、刑法条文化案のたたき台が自民党の議連によって作成されています。

高市氏も首相就任当初から積極的な姿勢を示しており、2025年10月に自民と維新が締結した連立政権合意書の中でも、2026年通常国会での損壊罪制定を目指すことが盛り込まれました。さらに、参政党も損壊罪の新設を含む刑法改正案を提出するなど、実現に向けて党派を超えた協議が続いています」(同前)

【一枚岩ではない党内】

自ら提出に関わった刑法改正案が廃案となってから14年。宿願を果たすには絶好のチャンスを迎えているようにも見える高市氏。しかし、衆院選での歴史的大勝が逆効果となる可能性を示唆するのは、ある自民党参議院議員の政策秘書だ。

「自民党は衆院選で勝ち過ぎたことで、高市氏と距離を置く議員も大量に当選する結果となった。損壊罪の議論は、もともと党内でも保守派と穏健派で温度差が大きいテーマだっただけに、制定に対する党内の抵抗勢力が増えた、という見方もできる」(政策秘書)

高市首相宿願の「国旗損壊罪」制定、衆院選の大勝で逆境に!?
第221回国会で施政方針演説を行う高市内閣総理大臣

第221回国会で施政方針演説を行う高市内閣総理大臣

中道の候補に7000票差まで迫られながら当選を果たした元外相の岩屋毅氏も、党内の抵抗勢力の一人と目されている。岩屋氏は昨年11月、地元・大分放送のインタビューにおいて、

「日の丸が燃やされて大変なことになって、規制しなきゃいけないという事実がない」
「事実がないのに、そうした法律を作ることは、国民の精神をどこかで圧迫するおそれがある」

などと発言し、損壊罪制定の根拠となる立法事実の存在に懐疑的な見方を示している。

【議論を盛り上げたくない維新】

さらに、政策秘書によれば、連立パートナーである維新が損壊罪に消極的な姿勢を見せる可能性もあるという。

「連立政権合意文書に損壊罪の制定が盛り込まれたのは高市氏の意向で、維新にとってはそれまで関心の範囲外だった。一方、参政党は独自に刑法改正案を提出していることからも分かる通り、損壊罪については維新よりも政権との温度感が近い。維新にしてみれば、損壊罪の議論が盛り上がることで、高市政権と参政党の連携が世に印象付けられ、自らのプレゼンスが低下するのは面白くないはずだ」

一方で、前出の政治部記者は「仮に制定にこぎつけたとしても、損壊罪を支持する保守層にとっては拍子抜けとなる可能性もある」と指摘する。

「損壊罪の推進派は、『外国国章損壊罪は刑法に定められているのに、日本の国旗の損壊行為を取り締まる法律が存在しない現状の是正』を大義として掲げています。しかし、過去の判例では、外国国章損壊罪の対象となる国旗は、公的機関が公式に掲げたものに限られるという解釈が示されています。

損壊罪もこれに準じた運用になるとすれば、処罰対象となるのは、日本の政府機関が公式に掲揚している国旗への損壊行為に限られることになります。それでは、反日勢力が日本を侮辱する目的で自前で用意した日章旗を踏みつける行為などを罰することを期待している国民にとっては、期待外れでしょう」(政治部記者)

公的機関が掲揚したもの以外の日章旗も対象とされる可能性はある。しかし、その場合には新たな問題が生じる。

「民間で掲揚されたものや、損壊者が自前で用意した日章旗の損壊行為を罰則の対象とする場合、問題となってくるのが日章旗の定義です。国旗国歌法では、日章旗を『縦横比が2対3、白地に縦幅の5分の3を直径とする紅色の日章(日の丸)を中央に配置したもの』と定義しています。

市販されている日章旗風の旗の多くは、この定義に必ずしも合致していませんが、それらを損壊しても処罰されないのか。それとも『日章旗を想起させる物体』をすべて対象とするのか。協議は一筋縄ではいきません」(同前)

いずれにしても、表現の自由との関係も含め、十分な議論が尽くされることを願いたい。

文/吉井透 写真/首相官邸、photo-ac.com

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