認定第1号の東北大では各教員に膨大な数の論文作成が課され、「海外から論文を買うこと」も求められている
東北大に続き、東京科学大が「国際卓越研究大学」に認定された。京都大、東京大も後を追う。
一方、現場は膨大な数の論文作成と「稼げる研究」を課せられ、海外から「論文を買う」事態に。令和の大学大改革の実態は、政財界人の理念を体現する砂上の楼閣なのか――。
【東北大の論文買い取り、不在研究者の増員】「国際卓越研究大学(以下、卓越大)の制度は、教育と研究の本質をゆがめると懸念する声が高まっています。制度が公正に運用されているのかも疑問です。巨額の税金が無駄に使われるのではないかと危機感を抱いています」
東北大学の関係者はそう語る。同制度は、税金を主な原資として政府が創設した10兆円規模の大学ファンドの運用益を、認定した大学に最長25年にわたって毎年助成金として配分するものだ。
第1期では東京大学や京都大学など国内トップレベルの10大学が応募し、東北大だけが選ばれた。東北大は2024年12月に正式に認定され、25年度に154億円が配分されている。
25年には第2期の審査が行なわれ、同年12月に審査結果が出た。8大学が応募し、選ばれたのは東京科学大学(東京工業大学と東京医科歯科大学を統合し24年に設立)で、26年1月に正式に認定。26年度から助成が始まる。ほかにも、京都大が1年以内に計画を修正することを条件に候補に選ばれた。
認定された大学には、世界最高水準の研究大学になることや、年3%程度の支出成長率を維持できる「稼げる大学」になることなどが求められている。
確かに、毎年百数十億円が配分されることは大学にとって魅力だろう。しかし問題はその使い道を決める際に、学外者の意見が強く反映される仕組みになっていることだ。
東北大の関係者が「教育と研究の本質をゆがめる」と懸念する理由のひとつが、認定の条件である「体制強化計画」に、実現不可能と思われる目標が盛り込まれていることだ。
東北大の計画には25年間の目標と、重点KPI(重要業績評価指標)が記載されている。論文数は現状の6791本を、25年後に2万4000本に増やすことが掲げられた。
この数字は現在約3000人いる教員の1人当たり年間2本程度の発表論文数を、年間8本に増やすことを意味し、学内外から「荒唐無稽」との声が上がっている。
しかも、目標達成に向けて大学が教員に指示したのは、優秀な研究者を海外からも含め500人規模で集めること。「当初は1研究者当たり年俸2000万円から1億円と破格の高給を想定したものの、10人しか集まらなかった」(関係者)という。
そこで、他大学に在籍しながら論文は東北大所属として発表するクロスアポイントも認めた。つまり学校には事実上在籍しない「研究者ライター」を増やすのだ。
このためにファンドからの助成金が使われる一方、学生の教育に当たる教員は増やさない。
「東北大の助成金の使い道は金で論文を買うことです。これまでも論文を増やす取り組みを進めてきましたが、劇的に増やすのは難しい。だからといって税金で論文を買うなんて、研究教育機関として倫理的に許されるのでしょうか」
【認定制度に関わる政財界と甘利明氏】東北大は25項目の目標をはじめ、改革の理念が「組織に浸透している」などとして評価され、認定された。しかし、申請された目標などは、卓越大の候補に選ばれた時点ではほとんどの教員が知らなかったと前出の関係者が証言する。
「文部科学大臣が東北大を候補に選んだと発表した日の午後に、初めて申請した内容を見ました。目標について学内で合意をした事実もなく、改革の理念も浸透していません」
学内の教員が共有もしていないのに、「組織に浸透している」と評価したのは、研究者ではなく政財界の面々だ。
卓越大の制度を主導したのは内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)。議長は総理で、6人の閣僚と総理が指名した経済界などの有識者7人、それに日本学術会議会長で構成される。
通常、科学研究費助成事業などの審査は、専門の研究者によって行なわれる。これに対して卓越大の審査に関わるのは、CSTIの一部の議員を含む有識者会議「アドバイザリーボード」のメンバーで、企業や組織のトップが中心。議事録も非公開だ。
東北大の認定に影響力があったと考えられる人物のひとりが、元自民党幹事長で経済産業大臣などを歴任した甘利明氏。半導体政策や経済安全保障政策、それに大学ファンド創設にも関わった。東北大は半導体関連施設を拡大する計画を目標のひとつに掲げている。
アドバイザリーボードとの関係にも疑念が生じている。東北大は第1期の公募締め切り前の22年4月に、ITコンサルタント会社のフューチャーと包括連携協定を締結した。
フューチャーの代表取締役会長兼社長でグループCEOの金丸恭文氏は、「稼げる大学」を提唱し、アドバイザリーボードの座長代理を務める人物。審査の公平性は保たれているのだろうか。
協定締結について東北大とフューチャーにただしたところ、両者とも協定と卓越大の審査とは「一切関係ない」と主張。フューチャーは「利益相反はございません」と答えた。ただ、交わされている契約の内容や金額は明らかにしていない。
【新認定の東京科学大。膨大な目標論文数】一方、卓越大の第2号に認定された東京科学大も、東北大と同様に20項目にわたる目標とKPIを掲げた。
目標は実現可能だと考えているのか。東京科学大にただしたところ、次のような回答が返ってきた。
「非常に挑戦的な目標ではありますが、本学が目指す構造改革や人材戦略に基づいて実現可能性を考慮して設定したものです。特に、大学ファンドを活用した海外研究者の招聘、総研究者の増加などにより、研究力の強化を図ってまいります」
この回答からは、東京科学大も研究者の招聘にファンドの配分金を活用するつもりであることがわかる。
東京科学大も「非常に挑戦的な」数の論文作成を企図しているが......
【京都大が混乱するデパートメント制移行】
第2期で条件付きの候補に選ばれたものの、教員から疑問の声が噴出しているのが京都大。問題となっているのはデパートメント制への移行だ。
国内の大学で最多の10人のノーベル賞受賞者を輩出した京都大では、教授を頂点に少人数の階層構造を持つ「小講座」を研究教育の基本単位としていた。
もし組織体制が移行すれば、約1000ある小講座は解体され、約40のデパートメントに再編される。理系では実験スペースなどがなくなるのではとの不安の声が出ている。
また、執行部が注力したい分野に対して資金や人材を投入することも掲げられた。注力するのは「稼げる」研究分野だ。
京都大では卓越大認定に向けて「稼げる研究」の「選別」が行なわれようとしている
教員がデパートメント制への移行を知ったのは、やはり候補に選ばれた後だった。職員組合は今年1月30日に緊急学習会を開催し、各分野の教員が問題点を指摘した。同組合の副中央執行委員長で法学研究科教授の髙山佳奈子氏は、国に改革を押しつけられていると懸念する。
「他大学でも同様の組織変更をやらされているのに、京都大だけがデパートメント制への移行を条件に候補になったことに疑念を感じています」
【不祥事が相次ぐ東京大も「稼げる」体制を整備】ところで、世界最高水準を目指す大学に東京大が選ばれていないことに疑問を感じる人も多いだろう。東京大は第1期では落選。第2期では1年間の継続審査となった。問題視されているのは、不祥事が相次いでいることだ。
25年11月には医学部付属病院の准教授が、医療機器の選定などを巡る収賄容疑で逮捕され、その後起訴された。
さらに26年1月24日には、大学院医学系研究科の教授が、共同研究の便宜を図った見返りに接待を受けたとして、収賄容疑で逮捕され、その後起訴された。今後新たな不祥事が発覚した場合には審査を打ち切る条件で、継続審査となっている。
不祥事が頻発する東京大は審査で足踏みしているが、「稼げる大学」への改革は着々と進む
ただ、東京大は第1期の審査結果が出る前から、「稼げる」体制づくりを先行してきた。23年8月には最高財務責任者(CFO)職を新設し、外部から招聘したほか、独自資金の運用などを行なっている。
認定または候補になった大学の状況を見ると、既存の教員の研究や学生の教育は置き去りで、一部の人間が利益を得るための道具になる危険性をはらんでいることがわかる。国立大学を「稼げる大学」にする理由も理解できない。
巨額の税金を投入する卓越大の制度は本当に必要なのか。ここでいったん検証が必要ではないだろうか。
取材・文・撮影/田中圭太郎 写真/時事通信社
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