トンレサップ川に映る夕景。上流のトンレサップ湖から流れ込むトンレサップ川は、プノンペンでメコン川と合流する。
連載【「新型コロナウイルス学者」の平凡な日常】第165話
これからの筆者の研究のモットーは「アジアの連帯」。バンコクとハノイに加えて、もうひとつサーベイランスの拠点、カンボジアのプノンペンで共同研究の道筋をつける。
* * *
【メコン川と新型コロナの「起源」】プノンペンは、メコン川とトンレサップ川が合流する場所にできた都市である。その夕暮れ、トンレサップ川に映る夕景を眺める。その後、多数のコウモリが生息するらしい「ワット・プノン」という寺院に足を運ぶも、この日は残念ながら、コウモリの集団を目にすることはできなかった。
ワット・プノン外観。「コウモリ寺」として有名らしく、Google Mapsにも「Flying Fox Sanctuary Tree」とラベルされている木があった。
さて、メコン川であるが、実は私のこれからの研究活動の中で、ひとつの重要なキーワードになると考えている。メコン川は、南シナ海に流れ込む、インドシナ半島を南北に流れる大河である。河口から上流に辿ると、メコン川は、ベトナム、カンボジア、タイ、ラオスへと続く。
この連載コラムの熱心な読者、あるいは、コロナウイルスの研究に精通した読者なら、もしかしたらこれらの国々の共通点にお気づきかもしれない。
――そう、これらはすべて、これまでに新型コロナウイルスによく似たウイルスが、「キクガシラコウモリ」という野生のコウモリから見つかった国々なのである。
そしてさらにメコン川を上流に遡ると、その源流は中国の雲南省に行き着く。中国の雲南省こそまさに、新型コロナウイルスだけではなく、その兄弟とも言えるSARSコロナウイルスの「震源地」と考えられていて、これらのウイルスの宿主であるキクガシラコウモリが生息する洞窟のある場所なのである。
すなわち、「メコン川流域の東南アジアの国々で、キクガシラコウモリを対象としたウイルスのサーベイランスを実施する」――これこそが私の、これからの研究の軸となる、と考えている。
これまでもこの連載で紹介してきたように、タイのバンコク(138話、163話)、そしてベトナムのハノイ(11話、136話)では、すでにそのための研究拠点の開拓が着々と進められている。そして158話で述べたように、これからの私の研究のモットーは「アジアの連帯」である。
連帯を深めていくのであれば、バンコクとハノイに加えて、もうひとつサーベイランスの拠点がほしい。その場所がカンボジアのプノンペンであり、今回の訪柬の目的である(カンボジアは漢字一文字で「柬」と書くらしいけど、これはなんと読むのだろう......)。
【カンボジアパスツール研究所】というわけで今回の目的地は、カンボジアパスツール研究所(Institut Pasteur du Cambodge:IPC)。カウンターパートは、IPCのウイルス部門長を務める、スウェーデン人のエリック・カールソン。
エリックとはこれが初対面だったが、出だしから妙にスムーズに話が進んだ。お互いにウマが合うところがあったのかもしれない。
私とエリック。
インフルエンザウイルスの研究を専門にするエリックは、さまざまな方法でこのウイルスのモニタリングをしているという。その場所はなんと、昨日私が潜入捜査できなかったオルセーマーケット。
同じようなことを考える人はいるもので、エリックはそこの空気中に漂うウイルスを調べているらしい。やはり"市場"は、ウイルスが充満し、人間に伝播する温床となりうるようである。
打ち合わせがひと段落したところで、エリックをはじめとしたIPCの面々と一緒にランチに出かけた。食べるのはもちろん、私がリクエストしたカンボジア料理。いろいろ食べたが、どれもおいしかった。辛くないタイ料理、レモングラスが効いたベトナム料理、という感じ。
ランチに食べたカンボジア料理。(左上)アモックという定番のカンボジア料理。
カンボジアのビール「アンコールビール」。薄く、氷を浮かべて飲む、東南アジアあるあるなスタイル。
食卓を囲んだのは、カンボジア人だけではなく、フィリピン人、スウェーデン人、オランダ人、デンマーク人とさまざまで、とても良い空気感を醸した食事となった。昼過ぎにも最後の打ち合わせをし、エリックと再会を期した握手を交わして、タクシーで空港へと向かった。
空港に到着すると、ポケットのアメリカドルをカバンに戻し、チェックインカウンターが開くのを待つ。心地よい適度な疲労感と、手のひらに残るたしかな質感。2025年は上々の滑り出しである。
文・写真/佐藤 佳
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