中国民間漁船2000隻が海峡封鎖! 台湾有事で実行される"津...の画像はこちら >>

まるで"海の壁"をつくるかのように、2000隻もの中国民間漁船が東シナ海に現れた。年末年始に2度も起きたこの事態を、「週刊プレイボーイ」本誌では台湾有事を想定した運用実験ではないかと分析した。

そして今、アメリカは全戦力の半分をペルシャ湾に投入し、イラン攻撃を開始した。
中国がこのタイミングをチャンスとみて、今日にでも台湾侵攻を開始するかもしれない。すでに、中国民間漁船2000隻による海の壁の演習は済ましている。

台湾海峡の幅長は最狭部で約130㎞、平均で約180㎞となるが、今回確認された布陣では南北約470km規模で配置されている。前回の記事では、台湾が侵攻する際に中国海軍を守る"海上の盾"として使うのではないかと考えたが、さらなる別の使い方も想定されている。この封鎖された海峡で何が起こるのか? 軍事のプロたちが考えた。

中国民間漁船2000隻が海峡封鎖! 台湾有事で実行される"津波作戦"の狙いとは?

*  *  *

「2000隻の漁船の任務は壁になることだけではありません」。そう話すのは元米陸軍情報将校の飯柴智亮氏だ。

「中国軍は民間のカーフェリーや貨物船を総動員して、津波のように人海戦術で一気に上陸を図るはずです」(飯柴氏)

民間漁船を使った封鎖海域で、軍民を混在した上陸作戦をやろうとしているのだという。この"津波作戦"は津波のように押し寄せるまで"ベタ凪"の海面と化しているのが怖い。

「この作戦で使われる船は全て民間船。発動前までは民間船ですから、軍隊はいかなる攻撃もできません」(飯柴氏)

この津波作戦、具体的にはどう動くのだろうか?

「中国軍が侵攻を開始する時には、台湾海峡の南北両岸に2000隻の漁船が壁を作り、前に示した図の中にある三本の矢印のある方向に第三の壁が機動的に動いて、接近する米海軍艦隊が台湾東岸から接近を試みても点線のように布陣し、邪魔をします」(飯柴氏)

その中国民間船の壁に対して米海軍が手こずっているうちに、中国民間船は全速力で移動する。

目指すのはレッドビーチと呼ばれる台湾軍が要警戒海浜地区にしている場所、または、それまで揚陸不可能と言われた台湾西岸だ。そこに殺到し、奇襲をかける。

「誤って民間船を撃沈させた場合、米国は非難の嵐にあうでしょう」(飯柴氏)

【作戦発動!】

台湾上陸を目指す第一波では、民間船にデッキがつけられた貨物船が直接ビーチに向かう。その船は全長90m。この浅い喫水線とオープンデッキ設計の民間貨物船で海浜に乗り上げ、ハッチを開くことで車両の揚陸が可能だ。

また、民間船のうち何隻かは、無事ビーチに辿り着く。揚陸艦と化した民間貨物船からは、船首ランプの扉を開き、中から装甲車両が次々と飛び出し上陸。重機関銃、迫撃砲による攻撃を開始する。トラックの荷台からは次々と陸上ドローンが排出。犬型ドローンは走り、キャタピラ型無人戦闘車が内陸に入り込み、拠点を広げる。

さらに、沖合に航行している民間コンテナ船の上部からは、無数の自爆ドローンが射出。海浜の奥に潜む台湾軍陣地の兵員に対して自爆攻撃を仕掛ける。

もし、上空に台湾空軍戦闘機が接近すれば、同コンテナ船に搭載されたS400対空ミサイルシステムが稼働し、撃墜する。

アフガニスタンでの実戦経験もある飯柴智亮氏は、この作戦案の武器使用にダメ出しをする。

「対空ミサイルのような軍隊にしか提供されてない兵器を使った時点で、国際法では民間人の扱いではなく軍隊となります。すると、米軍に介入する口実を与える事になるわけです。

なので、上陸する民兵は民間人ですから、棍棒、バット、青龍刀、投擲用の石などを使用します。それにより米軍が介入するタイミングを遅らせます。足りない火力は文字通り、人海戦術の数で押し切ります」(飯柴氏)

現に中国はインドとの国境紛争において棍棒と石を使って戦っている。そしてさらに、その非武装人海戦術に続き、中国軍には切り札がある。

中国民間漁船2000隻が海峡封鎖! 台湾有事で実行される"津波作戦"の狙いとは?

ある衛星写真には、海浜に桟橋のような物体が写っていたが、よく見ると船が橋で連なっている。そう、中国の切り札とは、新型桟橋揚陸艦だ。

船底から四本の足が出て、海底に船を固定。三隻が合体して、どんな海浜でも瞬時に艀桟橋となり、最後は船首から100m超の橋がクレーンのように伸びて、海浜と船を繋ぐ。

こうして桟橋が完成すると、RORO船(自動車やトラックが自走して港から乗り降りが可能な船)や大型フェリーなどが次々と停泊。車を吐き出すと中国本土に戻り、次の車両と物資を積み込んで再び車両や物資を運び込むのだ。もちろん上空では、中国空海軍の戦闘機が全力で航空路を作り、敵を寄せ付けない。

中国民間漁船2000隻が海峡封鎖! 台湾有事で実行される"津波作戦"の狙いとは?
中国民間漁船2000隻が海峡封鎖! 台湾有事で実行される"津波作戦"の狙いとは?

中国軍がこの総力揚陸戦を展開すると、完全武装の兵士を第1波で2万人、10日以内に中国陸軍を合わせて30万人輸送可能と言われている。そしてこれらは「すべて可能な作戦」(飯柴氏)なのだ。

しかし、台湾と中国の現地取材をしたフォトジャーナリスト柿谷哲也氏は、桟橋揚陸艦の使い方に疑問を呈する。

「米陸軍もこの桟橋船と同様の目的の装備を持っていて横浜にも配備しています。過去に米軍がこの桟橋船を韓国に持って行き、上陸する訓練を取材しましたが、その時は上陸地点は味方によって安全を確保され、数日かけてゆっくり進めていました。

桟橋船は海象・気象の制限が多く、少ない量でも設置に半日以上の時間がかかり、上陸先で敵に遮断される可能性が高く、撤収にも時間がかかります。本来の使い方は安全確保をしたうえでの、敵の脅威がない場所での補給。前線投入することはないはずです」(柿谷氏)

すると、民間船総出の非武装人海作戦で海浜地区が完璧に中国の支配下に入り、安全が確保されれば可能か......。

「台湾空軍も台湾海軍艦艇も、桟橋船の領海侵入時点で攻撃可能です。

台湾陸軍は上陸地点で攻撃準備をします。多くの地域で活動し、それらを防ぐほど安全が保障されていれば可能でしょう。

ただ、中国の桟橋船は橋梁式なので気象・海象条件は米軍より有利で、設置完了から車両揚陸までの時間も艀式の米軍より短い。そして、その桟橋船そのものに車両を搭載できるなど、米陸軍よりはるかに先進的なことは確かです」(柿谷氏)

この津波作戦に米空軍海軍、海兵隊、陸軍は対応するのか?

「しないと思います。航空能力だけで津波作戦を叩くこともしないし、中国の港から出航する前に攻撃するような中国領土内の攻撃もしないと思います」(柿谷氏)

すると、米軍はどこで何をしているのだろう。飯柴氏が答える。

「米軍はマラッカ、ロンボク、スンダの三海峡を封鎖して、中国への補給を断ちます。

一方、包囲封鎖されている台湾に対しては、東側に通行可能な海路を確保し、空挺投下して補給します。両国とも有事前から備蓄していますが、人口の少ない台湾は中国より長く持ち堪えるでしょう。補給線が遮断されたら中国は浮き足立つ。米軍は中国のミスを待って、冷静に空と海からジワジワといやらしい攻め方を展開します」(飯柴氏)

公開されている台湾の石油備蓄量は146日分(ちなみに日本は200日分)。台湾を完璧に屈服させるには、中国軍兵力は100万人必要だとされている。

「津波作戦を粉砕するには、米台日で防衛態勢をシミレーションするべきです。そして、日本の自衛隊は米軍に聞いて役割分担してもらい、動けるようにしておかなければなりません」(飯柴氏)

「自衛隊は情報収集して、複数の状況を想定しつつ、邦人救出を優先するでしょうね」(柿谷氏)

津波作戦の全貌は判明した。が、この作戦案に対して、米海軍・海兵隊の専門家である米国防系シンクタンクの海軍戦略アドバイザー、北村淳博士は厳しいダメ出しをする。

「津波作戦が前提としている上陸侵攻作戦を中国が用いることはありません。

現代のミサイル・サイバー時代では中国軍侵攻部隊が発進する以前に、私たちが"短期激烈戦争"と名付けている先制攻撃作戦で幕開けします。

それは、各種ミサイルによる台湾の戦略要地・インフラへの大規模飽和連続攻撃と、情報インフラへのサイバー攻撃です。これによって、台湾軍と台湾政府の指揮命令系統がほぼ完全に麻痺し、台湾軍の継戦能力も壊滅に近い大打撃を受けます。

この段階で、中国軍は抵抗勢力排除と占領統治のための大部隊を送り込みます。上陸は無血に近い形で完遂されるのです。

そして、ここまで24時間もかからないでしょう。上陸作戦は攻撃開始後2日目から動き出します。その際に米軍、自衛隊、海保の艦艇船舶を寄せ付けないため、民間船の壁が大いに役立ちます」(北村氏)

米国に打つ手はないのか......。

「国際法は国内法と違い、戦争の勝者が勝手に都合よくねじ曲げることができます。まず考えられませんが、万が一アメリカが中国への核攻撃を決断した場合、民間船が何千隻存在しても、周辺海域に核をぶち込んでしまえば全滅させられます。

それでも、広島・長崎に比べれば殺戮人数は大幅に少ない。広島・長崎で20万人以上を殺戮しても、米国は平然としています。なので、民間船2000隻を核攻撃しても屁とも思わないでしょうね」(北村氏)

米軍、恐るべしだ......。

2月12日、台湾の頼清徳総統は、中国が台湾を併合した場合「次に日本が脅威にさらされる」と明言した。すると、米国が沖縄から完璧に撤退するケースも考えられる。

飯柴氏は「その時の米国大統領次第でしょう。トランプならば増強ですが、バイデンのような大統領なら撤退するでしょうね」と予測するが、北村氏は手厳しい現実を突きつける。

「台湾が陥落しても依然として日本政府が日米同盟を頼りにしているのならば、米軍は日本を防波堤・隔壁として使用するため、沖縄から撤退せずに日本側の危機感をさらに煽り立て、ミサイル防衛システムを日本に売り込みます。

沖縄の対空防備を最大限にして、いよいよの時はすぐに米軍が逃亡できる態勢を万全に固めることになります。ベトナム、アフガンでの米軍逃亡の事実が、日本の将来を物語っているのです」(北村氏)

まさに台湾有事は日本有事。他人事ではない。

取材・文/小峯隆生 写真/微博、MILITARNYI、衛星画像より

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