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受験戦争が熾烈化するなか、体内から学習環境を整えることの重要性が増している

3月、合格発表の掲示板を前に、日本中の親子が悲喜こもごもの春を迎える。過熱する受験戦争において、もはや戦っているのは子どもだけではない。
家庭内での学習環境の整備など、家族総出でサポートを続けているはずだ。それだけに、志望校に届かなかったときのショックは親にとっても計り知れない。もっと勉強させていれば......。そんな後悔に苛まれる親も少なくないだろう。

しかし、

「それ、本人の努力や環境のせいではなく、食事のせいかもしれません」

そう語るのは、栄養学と遺伝子検査を用いた診療を専門とする小倉行雄医師だ。もちろん、特定の食事を摂れば成績が上がるわけではない。しかし、良かれと思って用意した夜食のラーメンや勉強中の軽食が、実は子どもの集中力を削ぎ、じわじわと疲労を蓄積させていた可能性は、医学的に十分考えられるという。

「一番わかりやすいのは、血糖値の乱れです。コーラや菓子パンを食べると血糖値が急激に上がって、今度はそれを下げようと体がインスリンをたくさん出します。そうすると今度は血糖値が急に下がって、強烈な眠気が襲う。これは『血糖値のジェットコースター』と呼ばれる状態で、机には向かっているのに頭がまったく動かない。そういう経験、みなさんにもあるんじゃないでしょうか」(小倉医師)

ジュースやジャンクフードに含まれる糖質と化学調味料の組み合わせは、脳に強い快感を与え、依存状態を作り出す。

これを「シュガーハイ」といい、一時的に気分は上がるが、そのあとにどっと疲れが押し寄せてくるという。

【疲れを蓄積させる物質も】

また夜食の定番であるラーメンやパスタは、ご法度だ。

「糖質が多いのはもちろんですが、小麦に含まれるグルテンや乳製品のカゼインという物質が腸を荒らすことがあり、そうなると食べたものの栄養がうまく吸収されなくなります。頭がぼーっとしたり、疲れが取れない感じが続いたりするのはそのせいかもしれません。小麦と乳製品が両方入っているカルボナーラなんかは、受験生の大敵ですね。

グルテンフリー、カゼインフリーといって、これらを意識的に摂らない食事を試してみると、疲れが抜けて体が軽くなる感覚を得られることはよくあります。きっぱり断つなら数日、そこまで厳しくやらなくとも意識的に摂らないような食生活でも、2週間もすると変わってくることも。集中力が上がれば、勉強にもクリアに取り組めるでしょうね」(小倉医師)

眠気覚ましに頼りがちなコーヒーやエナジードリンクも、使い方を間違えると逆効果になる。

「体力に余裕があるときなら助けになりますが、すでにヘトヘトの状態で飲み続ければ睡眠の質を下げる原因になってしまいます。睡眠は勉強した内容を頭に定着させ、体を回復させるための大切な時間。カフェインの摂り方も要注意です」(小倉医師)

では、何を食べればいいのだろうか?

「まず大事にしてほしいのは、タンパク質です。集中力に関係するドーパミンやノルアドレナリン、気持ちを安定させるセロトニンといった脳の物質は、タンパク質に含まれるアミノ酸からできています。

おすすめは和食で、お肉や豆腐といったタンパク質豊富な食材を自然に食卓に並べるのがよいでしょう。勉強に根詰めすぎてカップ麺で済ませるなどは、避けたいところですね」(小倉医師)

脂質の選び方も大事だ。脳の神経細胞はオメガ3と呼ばれる脂肪酸を必要としていて、これが足りないと記憶の定着が悪くなったり、考えがまとまりにくくなったりと、受験生にとってダイレクトに悪影響が出る。青魚に多く含まれるが、選び方には注意がいる。

「マグロのような大きな魚は、小魚をたくさん食べるわけで、有害な物質を含んでいる傾向があります。例えば水銀ですね。水銀は脳や神経に悪影響を与えるので、イワシのような小さな魚のほうが安心。煮魚にすれば、カルシウムも一緒に摂れます」(小倉医師)

甘いお菓子や夜食のラーメンは子供の成績を下げる? 医師が教える「脳にいい食事、悪い食事」
脳の神経細胞が必要とするオメガ3を取るにはイワシが最適だ

脳の神経細胞が必要とするオメガ3を取るにはイワシが最適だ

【摂りすぎると逆効果のサプリ】

では、栄養を考えてサプリを飲めばいいのかというと、ここにも落とし穴がある。

「例えば、ビタミンってBとかCとかたくさんありますよね。受験生に限らずですが、『よくわからないからとりあえずマルチビタミンを飲んでおけば大丈夫』と考えている人は結構多い。でも、これって実は誤解なんです。

たとえばビタミンB6やB12は、足りなければ確かに困りますが、摂りすぎると眠れなくなったり、逆に興奮しすぎてしまったりすることがあります。

何が足りていて、何が多すぎるかを調べないまま飲み続けるのは、かえって危険です」(小倉医師)

その個人差の根底にあるのが遺伝子だ。集中力や気持ちの安定に関わる遺伝子のタイプは人によって違う。口腔内の粘膜をぬぐって手軽に調べられるSNP検査でそれを把握することで、本当に必要な栄養素と量が初めて見えてくると小倉氏は言う。

「重いアトピー性皮膚炎を抱えていた受験生の患者さんがいて、かゆみがひどくて勉強に集中できないと相談されました。アトピーは肌だけの問題ではなく体全体の炎症です。そこで、グルテンフリーの食事とカフェインを控える生活に加え、遺伝子検査の結果をもとにビタミンD、B12、B6、葉酸、フィッシュオイルを適切な量で補ってもらいました。すると半年ほどでかゆみがほぼ消え、集中力が見違えるように戻ってきた。最終的に医学部合格を果たしたそうです」(小倉医師)

もちろん、栄養を補給したから大学に受かったという話ではない。大切なのは、食事によって、まずは体内から学習環境を整えてあげることだ。

「栄養で体を整えるのは、薬を飲むのとは違います。すぐに結果が出るものではなくて、その子の体の仕組みを根本から整えていく作業です。まずは検査を受けて、お子さんの体のことをちゃんと知るところから始めてほしいんです」

やる気はあるのに続かない、頑張っているのに結果が出ない。

そんな状況にある子どもを前にして、親にできることはまだある。わが子の体の仕組みを知り、適切な食事を出すこと――。それが、来年の春の結果を変える最初の一歩になるかもしれない。

文/新田勝太郎 写真/ぱくたそ、ピクスタ

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