業界3位のコーナン商事とアレンザHDが資本提携を結べば、約6500億円の売り上げとなり、現在の業界首位カインズの座を脅かす
業界3位のコーナン商事がアレンザHDとの提携を電撃発表し、王者・カインズを射程にとらえた。都市近郊型プロ向け戦略と積極的M&A戦略を武器にコーナンが大暴れ!? カインズ、DCMHD、コーナン、コメリの4強が生存をかけて激突する、ホームセンター大戦の最前線を追う!!
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【王者カインズを射程に! コーナンが放った奇策】2月上旬、ホームセンター業界に激震が走った。
アレンザの筆頭株主は株式の過半数(50.55%)を握る、食品スーパー大手のバローHD。今回のTOBにおいて、コーナン商事はバローの〝保有分以外〟をすべて取得する方針だという。
約218億円規模のTOBながら、成立後もコーナンの出資比率は49.45%にとどまる。つまり、コーナンはアレンザの経営権を握るわけではない。
このディールの意図について、流通アナリストの中井彰人氏は次のように推測する。
「表面上はコーナンが仕掛けたTOBですが、バロー側のしたたかさも垣間見えます。コーナンは関西に大型店を多く抱えていますが、今後は集客にテコ入れが必要です。そこに集客力のあるバローの食品スーパーを出店させる。これがコーナンにとっての魅力です。
一方、東海エリアが地盤のバローには関西の優良立地確保と全国展開の足がかりができる。
しかも、アレンザの売上高は約1500億円。これをコーナン商事が持ち分法適用会社として取り込むことで、これまでカインズとDCMHDが繰り広げてきた首位争いに割って入ることになったのだ。
【先鋭化する各社の生存戦略】このように、近年のホームセンター業界は競争激化の一途をたどっている。というのも、コロナ禍におけるDIY特需で一時的に潤ったものの、ブームが沈静化した現在、国内市場は約4兆円規模で成長が止まり、完全に頭打ちとなったからだ。中井氏が言う。
「人口減少によって全体のパイが縮小していく中、既存店の客数は軒並み減少傾向にある。それでも店舗数は増え続けたため、業界は淘汰と再編の時代に突入しています」
ホームセンター界のユニクロ!?〈カインズ〉 都市型小型店やイトーヨーカドー内への出店を加速させるカインズ。圧倒的な開発力と粗利率を誇るPB商品は他社の追随を許さない競争力の源泉だ
この過酷な生存競争において絶対王者として君臨しているのが、業界首位のカインズだ。その強みは、ホームセンターの枠組みを超えたビジネスモデルにあるという。
「カインズが目指しているのは、良品計画やニトリHDに続くSPA(製造小売業)です。主力は自社で企画・製造したPB(プライベートブランド)の数々。
最近は『イトーヨーカドー』など都市圏の総合スーパーに自社製品を供給するなど、都市生活者の生活雑貨シェアを奪う戦略を推し進めており、さらなる成長が見込まれています」
ザ・地元のホムセン〈DCMHD〉 ホーマック、カーマ、ダイキなどが結集したDCM。地方勢力の連合体として規模を確保し、カインズやコーナンに対抗する
一方、業界2位のDCMは、カインズとは異なる戦略を取っている。2006年にホーマック、カーマ、ダイキの経営統合により発足して以来、全国各地のホームセンターを次々とM&Aでのみ込み成長してきた。
「私はこの戦略を漫画『キングダム』の〝合従軍〟にたとえています。単独では誰も王者の秦(カインズ)に勝てない。だから地方企業が連合軍=合従軍(DCM)をつくり、収益性の高いPB商品を展開できる最低限の規模とブランド力を確保して王者に対抗する。
地味ながら堅実な戦略であり、この時代に地方企業が生き残るための道を切り開いた成功例と言えます」
プロ市場を独占!!〈コーナン商事〉 リフォーム需要をいち早く察知しプロ店を展開したコーナン。アレンザを介したバローとの本格提携で、都市部でのさらなる収益を狙えるか
長らく両社が覇権を争う中、ここにきて猛烈な勢いで追い上げているのが、先述したコーナンだ。
「コーナンの躍進は、独特の立地戦略と新市場の開拓が背景にあります。多くのホームセンターは地方の広い土地で発展しましたが、コーナンは大阪の都市部郊外がルーツ。当初から〝都市生活者のための店〟という側面が強かった。
この立地特性を生かし、東京や神奈川など首都圏のホームセンターが少なかった郊外にいち早く進出して、ドミナント(集中出店)を成し遂げたことが急成長の要因です」
そしてコーナンの業績を牽引しているのが、職人などのプロ向け商材に特化した「コーナンPRO」の成功だ。
「かつての新築全盛期、資材は現場への直送が主流で、ホームセンターに職人が買いに来ることはまれでした。
しかし近年、住宅着工が減り小口のリフォーム工事が激増すると、資材の現地調達ニーズが急浮上。これに真っ先に気づいたのが、まさにリフォーム適齢期の住宅がひしめく大都市圏を地盤にしていたコーナンです。他社がこの業態に懐疑的だった時期に出店を加速させ、今や敵なしの状態です」
さらに、19年にはプロ向けチェーンを展開する建デポを買収したことも成長を決定づけた。
「このM&Aにより、他社の追随を許さない圧倒的な規模を確保しました。現在、コーナンのプロ向け事業は、後走する他社を寄せつけない独走状態にあります」
農家のコンビニ〈コメリ〉 農業資材から害虫駆除相談まで農家のコンビニとして機能するコメリ。独自のブルーオーシャン開拓を目指す
これら都市圏の争いとは別の次元で、独自の進化を遂げているホームセンターもある。新潟県発祥のコメリだ。
「コメリは基本的に農家向けのホームセンターで、『コメリハード&グリーン』という小型店が主力。大型店は少ない代わりに〝農家のコンビニ〟として全国各地に1200店舗以上を展開し、業界4位の座にあります。同社が目指すのは、赤字に苦しむ各地のJA(農協)の物販機能の代替です。
徐々にJAとの提携も進み、競合他社とは異なるブルーオーシャンを開拓している特異な存在と言えるでしょう」
一方、業界の「台風の目」と目されながら苦戦を強いられているのが、20年にニトリの軍門に下った島忠だ。当初、ニトリの圧倒的な商品開発力が島忠の店舗網と融合すれば脅威になるとみられていたが、期待された相乗効果はいまだ見えてこない。
「両社の企業文化の不一致が大きかったのだと思います。ニトリは用途ごとに商品を絞り込み、売れ筋の品質を極限まで上げていくSPAの企業です。しかし、ホームセンターは『こんなマニアックなものもあるのか』という多様性と非効率を許容する価値観で成り立っている。
これは水と油の文化であり、ニトリの合理的な管理手法をホームセンターの現場に持ち込んでも、なかなかうまくいかなかったのでしょう。
実際、効率を優先して売れ筋のニトリ製PBに棚を割いた結果、島忠の強みだった専門性が薄れ、古くからの顧客が離れるという皮肉な事態も起きています」
【加速する椅子取りゲーム】同業他社との統合や異業種による買収が、必ずしも成功するとは限らないが、独自のスタイルを守り続ける厳しさも浮き彫りになっている。九州が地盤の老舗チェーン、ナフコを例に中井氏が指摘する。
「ナフコはもともと北九州市の家具店。ホームセンターで集客し、利益率の高い家具を買ってもらう鮮やかなビジネスモデルで九州を制しました。
しかし、近年は苦戦を強いられています。DCMという合従軍に地方のシェアを削られた上、ニトリの全国制覇で、収益の柱である家具の売り上げも奪われてしまった。
ホームセンター業界は再編や統合が進んだ結果、大手同士の競争という消耗戦に突入しています。かつての成功パターンが通用する時代ではなくなったのです」
カオスな大人のテーマパーク〈ハンズマン〉 吹き抜けの空間に並ぶ多様な植物とオブジェ。ハンズマンは、まさに個性派ホームセンターの究極進化形だ
効率と規模を追う大手同士の陣取り合戦が進む中、それとは真逆の「非効率の極み」で熱狂的支持を集めるのが、宮崎県発祥のハンズマンだ。
「ここはまさに〝大人のテーマパーク〟。規模は十数店でも、中身は『ドン・キホーテ』顔負けのカオス空間です。巨大な噴水からバラ売りのネジ一本まで、客の要望にはなんでも応える。DIY好きの男性客からガーデニングを楽しむ女性客まで一日中滞在しても飽きさせない。
ひとたびハンズマンが出店すれば、周辺の競合店が客を奪われるほどの圧倒的な集客力。効率化に突き進む大手への強烈なアンチテーゼとなっています」
大手による陣取りか、個性派による独自の生存戦略か。今後の見通しについて、中井氏はこう結ぶ。
「地方の人口減少が進む中、市場のパイが縮むのは確実です。生き残るには、『統合を繰り返して収益性の高いPBを展開できる規模を維持する』か、あるいはコーナンやコメリのように『独自市場を深掘りする』かの2択。
今後は中堅以下の企業がどの合従軍に吸収されるのか。業界再編は最終局面、合従連衡の『椅子取りゲーム』がさらに加速していくでしょう」
取材・文/小山田裕哉 写真提供/PIXTA
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