わが家のマスコット、スクービーさんと
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。
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前回はミラノ・コルティナ冬季五輪とパラリンピックの公式マスコット「ティナ」と「ミロ」を入り口に、冬季五輪のキャラ変遷について考察しました。今回は夏季五輪編です。
まずは公式第1号。初めて五輪に公式マスコットが登場したのは、1972年ミュンヘン大会でした。戦後の西ドイツ(当時)にとっては、36年ベルリン大会の重い記憶を払拭し、「平和で開かれた国」を世界に示す大舞台。明るくて民主的なドイツを表現するために考えられたのが、マスコットの「バルディ」です。
ドイツ原種のダックスフントをやたらとカラフルにしただけのシンプルなデザインで、今見ると少し地味だけど、当時はかなり革新的。モダンでポップであると同時に、親しみやすいしドイツらしさもある。
ダックスフントは攻撃性ゼロだけど運動神経がいいから、アスリート像に重ねられるのも絶妙。しかし、「五輪はもっと厳粛なものだ。お祭り化しすぎ」的な批判の声もあったそう。
それでも、子供とメディアの受けは良く、グッズ展開も大成功。バルディの形をしたマラソンルートまで設計されました! 走ってる人も観戦してる人も、全体像が見えないけど......。おかげで五輪=キャラで覚える時代の扉が開かれました。
以後、「開催国らしさ+親しみやすさ」という公式マスコットの方程式が生まれました。76年モントリオール大会のビーバー「アミック」は、マスコットの着ぐるみ化が当たり前じゃない当時にしかありえないデザインだけど、そこも含めカナダらしくて好感が持てます。
しかし時代が進むと、親しみやすさだけでは足りなくなります。92年バルセロナ大会の「コビー」は、前衛的な犬?熊? やっぱり犬。「鼻の位置と口の位置、どうなってるの!?」と二度見するような、キュビズム展のミュージアムグッズ感漂う四角すぎる犬。でも、芸術都市のバルセロナらしいという点では満点で、結果的に大成功した〝理解に時間がかかる系〟だと思います。
そして96年アトランタ大会。ついにきました、「イジー」。元の名前の由来は「ホワット・イズ・イット?」。
90年代CGの勢いをそのまま具現化したような存在で、「説明不能」という一点で歴史に名を刻みました。レジェンド級のカオス。ツッコミどころが最大値を振り切れると、もはや伝説になることを教えてくれました。情報過多で結局、最後までなんの生き物かわからないから、私の中ではもはやマスコットというより90年代CGの概念生命体。でも今でもグッズは地味に人気です。
人気で言うと、84年ロサンゼルス大会の「イーグルサム」! 私の体感ですが、本国アメリカより日本のほうが覚えられている印象です。現に、日本の制作チームが日本向けに制作したオリジナルアニメが放送されており......。その日本人気の謎、そして五輪マスコット振り返り、次回に続きます。
●市川紗椰
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。
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