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『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』55巻をおぎぬまXがレビュー!!

いよいよ佳境に入りつつある「完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)編」。前巻では、自ら敗北を宣言したジャスティスマンへの怒りをぶつけるかのように、完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)のサイコマンが正義超人軍のブロッケンJr.を圧倒しました。

そのままトドメを刺そうとしたその時、天からシルバーマンが姿を現します...! 

本巻のカバーイラストにも堂々たるシルバーマンの姿が描かれており、この巻は「シルバーマンのための巻」と言っても過言ではないでしょう! 今回は、その辺りを中心に語っていきたいと思います。

 ●キン肉マン第55巻

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~

レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★ 星5つ中の5

【敵か味方か!?  シルバーマン、大地に立つ!】

リングに降り立ったシルバーマンの第一声は、「久しぶりだね、サイコマン」でした。この時点では、両陣営にとってシルバーマンが敵なのか味方なのか全くわからない状況です。その場にいるキン肉マンたちが戸惑いを隠せないように、我々読者もドキドキしながらシルバーマンの一挙一動を見守ることになります。 

サイコマンはこれまでの言動で、シルバーマンに強い憧れや敬意のような感情を抱いていたのが窺えます。そんな彼は数億年ぶりに再会した盟友を前に、まるで想い人に出会ったかのように話しかけますが、シルバーマンは淡々と返事をするばかり...。次第に両者の温度差が浮き彫りになり、なんだか不穏な空気が漂(ただよ)いはじめました。 

それからサイコマンに試合の裁定を任されたシルバーマンは、倒れ伏したブロッケンJr.に制裁を加えることもなく、彼を丁寧に抱きかかえて場外にいるキン肉マンのもとへと運びました。キン肉マンは、自身の祖先でもあるシルバーマンに感謝を述べつつ、前巻でサイコマンの口から語られた「シルバーマンは完璧超人のスパイ」という情報が事実かどうかを尋ねます。シルバーマンは優しい笑みを浮かべると、それは超人墓場を離れるための方便であると否定しました。そして、正義超人の祖であるシルバーマンの口から直接、"正義超人"という枠組みが生まれた真相が語られます。 

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~
たき火を前に語り合う兄弟...。やり方は違えど、目指す先は同じと気付いたシルバーマンは、兄に対抗して「正義超人」という枠組みを作ることとなった

たき火を前に語り合う兄弟...。やり方は違えど、目指す先は同じと気付いたシルバーマンは、兄に対抗して「正義超人」という枠組みを作ることとなった

シルバーマンが完璧超人側ではなく、正義超人側に立ってくれたのは、正直かなりほっとしましたね!というのも、まだ完璧超人陣営にはサイコマン、ネメシス、ストロング・ザ・武道(ブドー)と、ボス格の超人が残っていますし、そこに〝虐殺王〟の異名を持つシルバーマンまで加わったら、いよいよお手上げと言いますか、もはや絶望しかありませんよ...! ああ、本当に助かった! 

とはいえ、サイコマンからしたら裏切られたも同然です。

シルバーマンさえ戻ってくれば、壊滅寸前の完璧超人界も立て直せると思っていた矢先、あろうことか下等超人の肩を持つことを宣言したのですから。

しかし、サイコマンは諦めきれずにシルバーマンに懇願しました。「あなたの部屋もあの日のままです」「あなたの居場所はこんな地べたじゃない」「超人閻魔とあなたと私がいればやり直せる」などなど、必死の説得を試みます。まるで、かつての交際相手とヨリを戻そうとしている元カノのような...サイコマンがシルバーマンに抱く歪(いびつ)な感情が垣間見れるワンシーンです。

なのに、ですよ! せっかくサイコマンが両手を合わせてお願いしてるというのに、シルバーマンは終始カッチカチの無表情で冷めた面(ツラ)をしてやがるんですよ。その表情、口調からサイコマンを含めて、完璧超人始祖にまったく未練がないことが伝わります。なんか...田舎で長年一緒に過ごしてきた幼馴染みが、でっかい夢を抱いて東京に行ってから豹変してしまったような切なさがありますね。数億年ぶりの再会がこんな修羅場になるならば、シルバーマンのことは心の中で慕っているだけでよかったんじゃないでしょうか! 

す、すみません。なんだか熱くなってしまったのですが...これまで『キン肉マン』では、徹底してまっすぐな男の友情ばかりを描いてきましたが、サイコマンが読者に見せた感情は、ある意味ではイレギュラー。だからこそ新鮮であり、新シリーズの中で1、2を争う印象深いシーンに映りました。

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~
超人墓場で研鑽(けんさん)を重ねた

超人墓場で研鑽(けんさん)を重ねた

【かつて切磋琢磨した盟友同士のビッグマッチ!】

とはいえ...この漫画は『キン肉マン』です。完全に決裂したシルバーマンとサイコマンは、どちらの言い分が正しいのか試合で決着をつけることとなりました。

それと何気ないシーンなのですが、シルバーマンはリングに立つ前に、キン肉マンとネメシスに「試合をよく見ておくように」と告げます。シルバーマン、ネメシス、キン肉マン...始祖から現代に至るまで、3世代のキン肉族がそろい踏みとなった時空を超えたスリーショットには、なんだか感慨深いものがありますね。 

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~
幾億年の昔から現代に連なるキン肉族の系譜。ある意味『キン肉マン』とは、キン肉族の歴史を紡いだ壮大なサーガなのである!

幾億年の昔から現代に連なるキン肉族の系譜。ある意味『キン肉マン』とは、キン肉族の歴史を紡いだ壮大なサーガなのである!

運営を任されている宇宙超人委員会は、サイコマンにダメージの蓄積を懸念するのですが、「ノーダメージ」と一蹴。シルバーマンも闘いに同意したことで、完璧超人始祖同士の闘いという、とんでもないエクストラマッチが実現しました。"許されざる世界樹(アンフォーギヴン・ユグドラシル)"では、バッファローマンvsガンマンから始まり、ラーメンマン、テリーマン、ブロッケンJr.と、いずれもシリーズ屈指の好勝負が繰り広げられましたが...最後にこんな隠し玉まで用意してあったなんて!このシリーズを描き終えてしまったら、物理的にも精神的にも燃え尽きてしまうのではないかと、ゆでたまご先生の心身を心配してしまうほどの超展開です。 

ところで、シルバーマンは『少年ジャンプ』連載時から登場はしていたものの、超人レスラーとしての試合は描かれてことはありませんでした。一方のサイコマンも、WEB連載で始まった新シリーズから登場した完全新規の超人です。言ってしまえば、このエクストラマッチは前シリーズにはいなかった超人同士の闘いなのですが、それがここまで盛り上がるとは...!  このコラムで何度も口にした言葉ですが、新シリーズが「懐かしキャラたちの同窓会」といった感想で終わらず、「今が全盛期」という続編漫画の完璧なアンサーともいえる評価がされているのが頷(うなず)けます。 

さて、ついに決戦のゴングが鳴らされました! 注目したいのは、サイコマンの執着心が反映されたようなファイトスタイルです。序盤は〝巨握の掌〟を繰り出して、徹底的につかみかかります。シルバーマンは左腕の盾(シールド)で相手の猛攻を巧みにかわし、投げで反撃しますが...サイコマンはなんだか物足りない様子です。

シルバーマンは長い間、実体のない銀のマスクとして存在していました。今回の闘いのために特別に顕現しましたが、いわば数億年のブランクがある状態なのです。かつて何度スパーリングをしても五分五分の戦績だった超人とは思えぬ、無様なファイトにサイコマンは幻滅してしまいます。

「遅いーっ!」「拙(つたな)いーっ」と罵(ののし)りながら、打撃を繰り出すサイコマン。過去を美化し、囚われ続けている彼は、現在のシルバーマンに失望し、激しい怒りをぶつけます。

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~
シルバーマンの動きを見て、かつてのキレがないと告げるサイコマン。「そんな姿は見たくない」と、ダブルアームスープレックスで早期決着を狙う...!

シルバーマンの動きを見て、かつてのキレがないと告げるサイコマン。「そんな姿は見たくない」と、ダブルアームスープレックスで早期決着を狙う...!

しかし、シルバーマンは絶対防御の構え〝パーフェクト・ディフェンダー〟を軸に、サイコマンの猛攻をシャットアウト。「ようやく思い出してきたよ」と、闘いの勘を取りもどしてきたことを宣言しますが...それもサイコマンの思惑通りでした。防御に徹したシルバーマンに反撃を誘発し、〝巨握の掌〟でとうとう顔面をつかむことに成功! 

ここからの攻防が本当に壮絶で...〝巨握の掌〟から逃れようとするシルバーマンに、顔面や腹部を何度殴られ蹴られようと、サイコマンは決してその手を離しません。イリュージョニストと自称していた幻想的な姿はすでになく、スッポン亀のように頑なに相手の顔面をクローし続けます。シルバーマンに対する執着を体現するような、狂気的なファイトスタイルに、観戦中のキン肉マンも思わずゾッとしてしまいました。

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~
ここでなぜかオカマラスを思い出すキン肉マン。「怪獣退治編」をおぼえていてくれたのは嬉しいんですが、シリアスな死闘の最中なのになぜ...!?

ここでなぜかオカマラスを思い出すキン肉マン。
「怪獣退治編」をおぼえていてくれたのは嬉しいんですが、シリアスな死闘の最中なのになぜ...!?

さて、試合は中盤に入ります。「準備完了です」とサイコマンは告げると、シルバーマンの顔面からあっさり手を放し、マグネット・パワーを放出し始めました。なんと、ここまでの執拗なクロー攻撃は、磁力を帯びない銀に磁気を帯びさせて、マグネット・パワーで蹂躙するための事前工作だったわけです。 

全身に磁気を帯びたシルバーマンは、もはやサイコマンの指一つで動く操り人形も同然です。身体の自由を奪われ、サイコマンの攻撃を被弾し続けるシルバーマンでしたが、それでもマグネット・パワーを全否定します。そして、この禁断の秘術こそが両者に深い溝を作ったきっかけだったことも判明するのです。

かつて、サイコマンが地球のエネルギー...すなわちマグネット・パワーを発見し、超人プロレスに応用することを提案した際、シルバーマンをはじめとした他の完璧超人始祖は、口をそろえて猛反対しました。超人は皆、鍛え上げられた己の肉体から必殺技を繰り出すべきであり、地球のエネルギーを借りるのは主義に反するからです。 

結局、マグネット・パワーの有効活用に賛同する同志はおらず、サイコマンは落胆しますが、彼らの師であるザ・マンだけが理解を示しました。リスクはあるが、だからこそ我々が管理すべき力だと説き、シルバーマンが苦言を呈しても、「私たちは完璧なのだから」と黙らせます。完璧超人始祖たちがザ・マンの思想に疑問を抱き、のちにゴールドマン、シルバーマンが離反するきっかけとなったのは、この瞬間だったのかもしれません...。 

わずかな、ですがとても重要な回想が終了し、場面は試合に戻ります。

マグネット・パワーを駆使したサイコマンの猛攻に、なす術がないシルバーマン。仕上げとばかりにサイコマンは、会場に小さなアポロン・ウィンドウを発生させると、最大出力のマグネット・パワーとともに「完璧・拾式(パーフェクト・テンス)奥義 輪廻転生落とし(グリム・リーインカーネーション)」でフィニッシュを狙います...! 

ですが、シルバーマンは奥義を直撃したのにもかかわらず、K.Oには至りませんでした...! 「珍しく...ミスを犯したね」と、気になる言葉を言い残したところで次巻へと続きます! サイコマンが犯したミスとは? そして、勝負の結末は? まだまだ続く、シルバーマン対サイコマンのエクストラマッチ! 次巻のレビューをお楽しみに! 

おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~
サイコマンの必殺技・輪廻転生落とし。複雑怪奇な肉体のパズルに加え、輪廻転生をイメージするかのような見映えと、芸術点が非常に高い

サイコマンの必殺技・輪廻転生落とし。複雑怪奇な肉体のパズルに加え、輪廻転生をイメージするかのような見映えと、芸術点が非常に高い

●こんな見どころにも注目!

 
おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第55巻編】~永き因縁のエクストラマッチ、開幕!!~

完璧超人始祖との試合で何度か挿入される回想シーン。次第に始祖たちの性格や相性が分かってきて、なんだか微笑ましいですよね。今回も、サイコマンが皆にマグネット・パワーをプレゼンしてましたが、どこかほのぼのしているというか...大声で叫ぶガンマンを「はい そこうるさい」とサイコマンが一蹴する場面とか、仲良いなぁというか、もう学級会みたいじゃないですか。

ああ...! いつか、「今回、皆様に紹介したいのは...タピオカミルクティーです」みたいな感じで、サイコマンが完璧超人始祖に世の中のトレンドを紹介していくようなスピンオフ漫画を読んでみたいですね...!

●おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。原作者として参加している『笑うネメシス―貴方だけの復讐―』が『漫画アクション』(双葉社)にて連載中。

ミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』が好評発売中

構成/石綿 寛(樹想社) 撮影/中里 楓 ©ゆでたまご/集英社

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