日産 リーフ 価格:438万9000~599万9400円 日産本社発着で行なわれた報道陣向け公道試乗会。モーター音も風切り音も気にならない静粛性には驚かされた。
経営再建という逆風の中、日産が今年1月に投入した切り札が3代目リーフである。EVのパイオニアは、この一台でどこへたどり着いたのか。自動車研究家の山本シンヤ氏が公道試乗でその完成度を徹底検証した!!
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【初代は震えながらヒーターを切って走った】――今回試乗したのは、EVのパイオニアである日産が送り出した3代目リーフです。
山本 結論から言えば、3代目リーフは日産の新スタンダード。〝現代版サニー〟のような存在です。もちろん、いい意味で。
――どういうこと!?
山本 日産は2010年、EV普及を掲げ、世界に先駆けてリーフを投入しました。ただ当時は、ある意味〝際物〟扱いでもあった。そこから15年、愚直に〝普通〟を追求してきたわけです。
――普通とは?
山本 多くの人が抱くEVへの不安に、徹底的に向き合ってきたということです。象徴的なのが航続距離でしょう。僕が初めてリーフに乗ったのは2010年。
当時、自動車誌の編集部(東京都中央区)から自宅(静岡県東部)へ帰るには、東名高速の海老名SAで充電し、足柄SAでもう1回、さらに翌日に備えて自宅近くのディーラーでもう1回。計3回の充電が必要でした。
初期モデルのバッテリーは24kWh級と小さく、急速充電を繰り返すと、熱の影響で充電効率も落ちる。真冬は電費に響くヒーターを切るしかなく、震えながら走った記憶があります。
新型リーフのボディサイズは全長4360mm×全幅1810mm×全高1550mm。従来型より全長を120mm短縮した
――3代目はどうなった?
山本 何も気にせず、東京と自宅を2往復以上できる。充電性能も大きく進化し、短時間でしっかり充電できます。
――進化の背景には何が?
山本 初代は鳴り物入りで登場しましたが、価格を抑えるため、ガソリン車の車体を流用せざるをえなかった。バッテリー性能も制御も、試行錯誤の連続でした。それでも日産は〝量産EV世界初〟の責任を背負い、2代目で着実に改良を積み重ねたのです。
――今回はどう進化したの?
山本 日産は経営が厳しい状況にありますが、初代が「起」、2代目が「承」なら、3代目は「転」。攻めの世代です。
フラッグシップのアリアがあってこそ実現した構成ですが、モーター、バッテリー、インバーターといった中核にも最新スペックが投入されています。
――乗った印象は?
山本 まず、走る・曲がる・止まるといった基本が、とにかく自然で普通。EV特有のクセや過剰な演出がなく、日産が15年かけて最適解を見つけた証しだと思います。
ボンネット内では、駆動用モーターなどの電動ユニットが効率良く配置。航続距離も着実に伸びた
――走らせた印象は?
山本 パワートレインは力強く、加速もいい。ただしG(加減速時に体にかかる力)の変動は穏やかです。コーナリングは軽快さと、どっしりした安定感を両立し、ブレーキは誰でもプロドライバーのように扱えるコントロール性がありました。
――ズバリ、評価は高い?
山本 乗り心地を重視した日本仕様のサスペンションは、やや芯のなさも感じます。ただ、今後登場が想定されるNISMO版との差異化と考えれば、許容範囲でしょう。
水平基調のダッシュボードとドアまで続くファブリック素材が、クリーンで居心地のいい室内を演出する
――開発陣の狙いは?
山本 開発陣に聞くと、「EVとしてではなく、まずクルマとして良いものを目指した」「新たな日産のスタンダード」という言葉が印象的でした。世界中の誰が乗っても違和感がない方向性です。
――注目点は?
山本 大容量バッテリーに頼らず、空力、駆動効率、タイヤの転がり抵抗、回生、ボディ剛性といった総合力で航続距離を伸ばしている点です。一部輸入EVのような〝バッテリーの物量戦〟とは、明確にアプローチが異なります。
――なるほど。
山本 もうひとつのリーフの魅力は、〝燃えないEV〟であること。初代発売以来、走行用バッテリー起因の火災は、ほぼゼロ。徹底した安全性へのこだわりの成果です。
実際、EV火災に対応する消火ブランケットのデモで初代リーフを使って検証したところ、「むしろ燃やすほうが難しい」と言われたほど。もし初期モデルに火災が多発していれば、今よりずっと遠い存在になっていたはずです。
――ほかに強みは?
山本 リーフ単体というより日産の強みですが、クルマだけでなくインフラも整えたことです。全国のディーラーに充電器を設置し、営業時間外でも使える。実は他社EVの試乗会でも、充電網が不足し、日産ディーラーに頼る場面が少なくありません。それだけ信頼されているということ。
――世界EV販売でトップのBYDやテスラと比べると?
山本 彼らが脅威であるのは確かですが、3世代にわたって進化してきたEVは、世界的にもリーフだけ。15年の経験値とノウハウ、安全性への信頼、専用プラットフォームによる自然な走り、効率と航続距離のバランス、そして誰が乗っても違和感のない普通の設計。その積み重ねが凝縮されています。でも、〝普通〟をここまで突き詰めるのは一番難しい。
――3代目リーフの最大航続距離は702kmですが、発表直後にトヨタのEV、bZ4Ⅹが最大746kmとなりました。
山本 bZ4Ⅹは本来、もっと早く発表される予定でしたが、認証問題でスケジュールがズレた影響と聞きました。
――ちなみに昨年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、3代目リーフは4位です。
山本 強敵が多かったのもありますが、僕も選考委員を務めるWCA(ワールド・カー・アワード)では、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」と「ワールド・エレクトリックカー・オブ・ザ・イヤー」の最終候補に残っています。
結果は4月1日に開幕するニューヨーク・オートショーで発表されます。僕はすでに投票を済ませていますが、世界中のモータージャーナリストがどう評価するか。とても気になるところです。
撮影/山本佳吾
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