春闘の「満額回答」は責めるべき! 経営と組合が演じる"壮大な...の画像はこちら >>

連合が3月23日に発表した第1回集計結果では、傘下企業の平均賃上げ率は5.26%。前年に続いて5%を上回っている

あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。
その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「春闘」について。

*  *  *

「バカかお前」。会社員だった20代のころ。ベアと一時金が労働組合の要求通りに着地した。

昼食時に先輩と話すと「組合は事前に経営側から許容可能な数字を聞いてるにきまってるだろ」「組合は出世コースなんだぞ。要求金額の定量的な根拠なんて聞いたことないだろ」と。

営業とか調達の仕事をしていれば、当初の見積書と決定金額がときに何十%も異なることがある。でも、春闘では組合の要求と妥結額がほとんど違わない。経済の先行きが真っ暗だった2020年でも、平均賃上げ要求率2.8%に対して平均賃上げ率が2.0%と、0.8ポイントしかズレなかった。

経営と組合は壮大な茶番を演じている。

私が会社員のとき有休を取れなかったので、組合専従者と立ち話をしたら「そこは上司とうまく相談してね」だって。1ミリも役に立たない存在だと理解した。

2026年の春闘は、まさに原稿執筆時点(3月下旬)が集中回答期間であり、前年から引き続き平均5%を超える賃上げだ。満額回答が連発している。

タイミング的に、イラン戦争は今回の労使交渉にさほど影響を及ぼさない。悪影響が出るのは来年度だろう。今回、満額回答が出ているなら、労働者は「もっと要求しとけよ」と組合を責めていい。

日本の労働組合は企業別組合であり、欧米の職業別組合とは趣を異にする。以前の勤務先で、組合の専従役員が退任後、経営側の労務担当幹部や取締役に就任するケースがあった。まともな若手は組合に期待していないだろう。せっかくだから春闘を機に組合改革案を述べたい。

提案①:各地域の事情を考慮した、従業員生活物価指数を設定し、毎年の上昇率を定量的に把握するべきだ。

そのぶんの賃金アップは生活保障相当にすぎない。それとは別にベアを交渉するべきだ。企業が内部留保をためて組合員の生活が苦しくなっていいはずがない。

提案②:組合費の完全公開をするべきだ。組合員は、安くはない月額の組合費が何に使われているのか、ざっくりとしか把握できない。政治団体への寄付、交際費、役員報酬、その他......詳細のレシートまで組合員に公開しよう。ガバナンスの時代だ。カネを出してくれている組合員に不透明にしていいはずがない。

提案③:交渉記録も公開。団体交渉や事前交渉の議事録ではなく、全対話録を組合員がいつでも閲覧できるようにしよう。公式、非公式を問わず経営側とさまざまな接触があるはずで、それらの公開が馴(な)れ合いの防止につながる。いまは音声対話の録音・文字起こしソフトもたくさんあるし、すぐに実行できるはず。

これらの提案を厳しいと感じるひとが多く、組合専任希望者が減るとすれば、それはおそらくいいことだろう。御用組合から脱皮できる。

以前、「組合の気持ちも、経営側の気持ちも理解することが経営幹部に必要な経験だ」といわれた。その慣例が賃金の伸びない日本企業を作ってんだから、すごい話でしょ。

以前、私は「御用組合は『労組』ではなく『老僧』。集会でありがたい話はするが、生活は救ってくれない」といって組合関係のひとから怒られた。

そうか、老僧じゃなくて「労装」か。労働者のような装いだが、中身は経営仕様。脱いだらすごいんです、と中から取締役が出てくる。

写真/時事通信社

編集部おすすめ