今季は二刀流完全復活シーズンになる大谷。投打フル回転で前人未到の本塁打王&サイ・ヤング賞なるか
昨季、山本由伸の驚異的な活躍でワールドシリーズ連覇を達成したドジャース。
※成績は現地時間3月30日時点
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【長年の課題だった「左の強打外野手」と「絶対的守護神」】今年もドジャースと大谷翔平の挑戦が始まった。昨季は球団史上初&今世紀初の「ワールドシリーズ(WS)連覇」という偉業を達成。迎えた今季は、過去に2球団しか実現できていない「WS3連覇」を目指す戦いとなる。
「大谷の加入以降、球団は『勝てるチームづくり』を徹底的に実行しています。2024年は大谷と共に山本由伸とタイラー・グラスノーという先発の軸を獲得。翌年は佐々木朗希とサイ・ヤング賞左腕ブレイク・スネルを獲得し、さらに外野手のテオスカー・ヘルナンデスと再契約。
主力級も出ていかず、若手とベテランのバランスが取れた『層の厚さ』が維持できている。今季もその流れは変わらず、超一流選手の獲得に成功しました」
昨季WSで3勝を挙げるなど大車輪の活躍でシリーズMVPに輝いた山本。今季も2年連続で開幕戦白星を飾った
オープン戦の防御率15.58ながら開幕ローテ入りした佐々木。2年目の今季はシーズンを通してローテを守りたい
開幕から負傷者リスト入りしたスネル。昨季ポストシーズンではサイ・ヤング賞受賞投手らしい圧巻の投球を披露した
こう答えてくれたのは現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBに詳しい『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏だ。
「大谷の『後払い契約(※年俸総額約1000億円の97%を契約終了後の2034年以降に受け取る)』による贅沢税回避で、スター選手を獲得しつつ補強余力も温存。
また、フロントのアンドリュー・フリードマン編成本部長は、FA市場の動向を見極めつつ、チームの弱点を的確に補強。今季は長年の課題だった『左の強打外野手』と『絶対的守護神』のラストピースを手にしたことで、攻守に隙のない陣容が完成しました」
その「左の強打外野手」とは、カブスからFA加入のカイル・タッカー。2023年には打点王を獲得したクラッチヒッターだ。
開幕2戦目で決勝打を放ったタッカー。ディアス同様に移籍後すぐに結果を出し、チームに貢献した
「若手時代は『(MLB最後の4割打者)テッド・ウイリアムズの再来』とも称された選手で、天才肌。外野守備もうまく、ゴールドグラブ賞の受賞経験もあります。2番や4番、5番を任せられるだけでなく、守備に難のあるヘルナンデスをレフトに回せることで、守備全体が安定感を増します」
そして、「絶対的守護神」とは、メッツからFA加入のエドウィン・ディアス。最多セーブ投手の経験もあり、昨季まで通算253セーブの大投手だ。
開幕2戦目で移籍後初セーブを挙げたディアス。ドジャースの新守護神として早くも存在感を発揮している
「トランペットの登場曲は日本のファンにもおなじみ。今井達也(アストロズ)や良いときの佐々木に似た投げ方で、決め球にスラッターを駆使するクローザーです。
お股ニキ氏も指摘するとおり、抑えのディアス加入は「中継ぎ陣の充実」も生む。昨季は先発陣が好投しても中継ぎが不安定で星を落とすことも多かったドジャース。ポストシーズンでは佐々木やエメ・シーハン、クレイトン・カーショーら本来先発を務める投手も救援に回っていただけに、効果的な補強と言える。
開幕2戦目に先発したシーハン。黒星はつかなかったものの4回途中4失点で降板することになった
「スコットも本来は力のある投手なので、昨季より活躍するはず。ほかにもエバン・フィリップスがトミー・ジョン(TJ)手術から戻ってきますし、最速167キロ右腕のエドガルド・エンリケス、WS延長18回の死闘で4イニングを無失点に抑えて勝利投手になったウィル・クラインら確実にブルペンは充実しています。クラインは今季のブレイク候補と予想しています」
主力選手の流出はなかったものの、山本と相性の良かった捕手のベン・ロートベット、WSでも守備固めで活躍したジャスティン・ディーンら職人的選手が退団。さらに、昨季も11勝を挙げた球団レジェンドのカーショーが引退した。こうした変化によるチームへの影響はないのか?
「カーショーの引退は影響がないとは言えませんが、山本が名実共にエースとなり、カーショーの役割も担っていくはず。
一方、ロートベットやディーンのような存在はレギュラーシーズンではそれほど目立たないものの、短期決戦では必要になります。このあたりは勝利への執念を身につけたフロント陣が、夏のトレード期限に向けて同じような人材の確保に動くでしょう」
【日本人トリオの現在地】続いて、主力選手の今季の状況を確認しよう。先発陣はスネルが故障で出遅れているものの、山本、大谷、グラスノー、佐々木、シーハンら、昨季WSを経験した実力者が並ぶ。
「このメンバーにTJ手術から復活するリバー・ライアン、25歳の若手左腕ジャスティン・ロブレスキーらが加わり、7、8人でローテを回していくことになりそう。スネルだけでなく、シーハンも風邪による出遅れでまだ球速が出ていないなど心配な面もあり、今季も山本にかかる期待と責任は大きくなります」
その山本の状態はどうか?
「2年連続で開幕投手を任されたのは信頼の証し。大車輪の活躍だったポストシーズンの疲労で、球の強度や球威が落ちていないかが心配でしたが、キャンプやWBCでの投球を見る限り、むしろ球速は昨季以上。サイ・ヤング賞を狙うシーズンになります」
一方、開幕ローテ入りを果たした佐々木だが、オープン戦では3連続四球を2度記録するなど制球に苦しんだ。
「以前は大谷以上の球速で、制球力も魅力だったのですが......。昨季前半より状態はいいものの、本来の球速や球威には程遠い状態です。早く完全試合を達成した2022年のフォームを思い出してほしいです」
そして、「二刀流完全復活」を目指すシーズンとなる大谷は、どんな成績や活躍が期待できるのか?
「打棒は相変わらず『すさまじい』の一言。今季も打率.290以上、50本塁打は期待できます。むしろ、注目したいのは『投手・大谷』。昨季も投げていたボール自体はサイ・ヤング賞投手のタリク・スクーバル(タイガース)やポール・スキーンズ(パイレーツ)に匹敵するものがあり、今季もキャンプやオープン戦で見る限りは質の高いボールを投げています」
では、ファンの誰もが夢見てしまう「本塁打王とサイ・ヤング賞の同時受賞」という荒唐無稽なミラクルの実現はありえるのか?
「大谷の場合、サイ・ヤング賞への最大の課題は〝量〟。つまり登板数です。規定投球回(162イニング)をクリアするには、28登板、166イニング、15勝9敗、防御率2.33、219奪三振を記録するなど『投手・大谷』の完成形とも言える、エンゼルス時代の2022年シーズン並みの数字が最低限必要と言えます」
計算できる投手が少なかったエンゼルスではこの登板数を実現できても、常勝ドジャースでは難しいという。
「ポストシーズン進出のために、まずはレギュラーシーズンでコンスタントに投げることが求められたエンゼルス時代と違って、ドジャースではポストシーズンも見据えて、登板数も登板間隔も厳密に管理される状況です。
となると、年間20~22先発、120~130イニングが現実的な目標になります。それでも、常人の予想を超えるのが大谷。全盛期の今しか狙えない本塁打王&サイ・ヤング賞のW受賞をぜひとも狙ってほしいです」
打者としては、今季も「1番・DH」が定位置になりそうだ。チームとしてはどんなオーダーになるのか?
「1番・大谷に始まり、2番・右翼に新加入のタッカー、3番・遊撃ムーキー・ベッツ、4番・一塁フレディ・フリーマンのMVPコンビがそろい踏み。
5番にWBC米国代表でも活躍した正捕手のウィル・スミス。6番・三塁マックス・マンシー、7番・左翼ヘルナンデスと勝負強いふたりが並び、8番にWS制覇に好守で貢献した中堅アンディ・パヘス。
9番・二塁に内外野を守れるトミー・エドマンか、WS第7戦で劇的同点弾を放ったミゲル・ロハス。攻守共に隙のないラインナップです」
【勝ち続ける難しさ。連覇球団の共通項】投打共に充実のラインナップで目指す、WS3連覇。それがどれほど難しい大偉業なのかを知るため、3連覇の先人である「1998~2000年のヤンキース」についても確認しておきたい。
「チームの顔であるデレク・ジーター、先発のアンディ・ペティット、捕手のホルヘ・ポサダ、守護神マリアノ・リベラの生え抜き4人、後に全員の背番号が永久欠番となる通称『コア4』を軸に、ベテランやスター選手がうまく融合。
打線は9番打者でも3割、20本塁打近く打つなど穴がなく、スタメンで出れば20発が期待できる選手でも控えになるという超豪華布陣でした」
今のドジャースと似た側面もあるという。
「生え抜きではないものの、大谷、ベッツ、フリーマンのMVPトリオがチームの『コア』を形成し、2桁本塁打を放つ選手が何人もいる。ベテランのエドマンやロハスもしっかり仕事をする。
ヤンキースの監督になるまでなかなか勝てなかったジョー・トーリ監督も、ドジャース監督就任後しばらく勝てなかったデーブ・ロバーツ監督と通じるものがあります」
この最強ヤンキース以外に、日本でもV9時代の巨人や1980年代、90年代の黄金期西武、日本シリーズを何度も制した2010年代のソフトバンクなど、常勝軍団と呼ばれたチームはいくつかある。それらのチームに共通するものとは?
「黄金期をつくるようなチームは、何がいいというよりも全部がいい。誰がすごいではなく、全員がすごい。全方位で戦力が安定していなければ連覇はできません。その上で、異常な勝負強さ、選手の新陳代謝などもなければ、地区優勝はできても短期決戦のポストシーズンは戦い抜けない。当然ながら連覇も難しくなります」
その意味で気になるのは、野手の高齢化。昨季ドジャースの平均年齢30.7歳は、MLB全球団で最高齢だった。
「主軸のベッツが33歳、フリーマンが36歳。
ドジャースの戦力が盤石でも、勝負事は相手次第。ライバル球団はどこになるのか?
「パドレスが少し戦力を落としていることもあり、地区優勝の確率は高いでしょう。その先、ナ・リーグのポストシーズンを勝ち抜く上で気になる存在なのがパイレーツです。
サイ・ヤング賞のスキーンズに加え、160キロ超右腕のジャレッド・ジョーンズやバッバ・チャンドラーら若手投手が多く、台風の目になりそう。また、昨季地区シリーズで苦戦したフィリーズも嫌な相手です」
そして、WS第7戦まで互角の激闘を演じたブルージェイズはこのオフ、岡本和真をはじめ積極補強に努めた。
「負けた悔しさからか、総額500億円以上をかけて大補強を敢行しました。ただ、補強費用がそのまま強さに直結しない、費用対効果が読めないのもまたMLBらしさ。ヤンキースをはじめとしたア・リーグの他球団も黙って見てはいないでしょう」
振り返れば、ドジャースに入団する際、「10年間の契約期間中にWS10連覇を目指す」と発言していた大谷。これまで次々と無理難題を有言実行してきた男は、どこまでその野望を実現できるのか?
「戦力均衡化策が徹底された現在のMLBにおいて、10連覇は不可能に近い。それどころか、3連覇以上がそもそも難しいと言えます。だからこそ、今季のドジャースの挑戦は注視すべき価値がある。3連覇への挑戦に値するチームであることは間違いありません」
WBCで敗れた際、「優勝以外は失敗」という厳しい言葉で悔しさを表現した大谷。3連覇以外は頭にない、しびれるシーズンは始まったばかりだ。
文/オグマナオト 写真/時事通信社



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