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絵文字で返信する機会が増えたテキストコミュニケーション

ビジネス上のテキストコミュニケーションの中で、「ハート」や「謝罪」、「グッド」といった絵文字で返信する機会が増えた。返信の文面を打つことなくリアクションできるのは便利だけど、先方にぶっきらぼうだと思われるリスクもありそう。

実際みんな、どう思ってるんだ!?

* * *

【なぜ同じ絵文字の印象が違うのか?】

昨今、多くの企業でチャットツールが導入されているが、上司世代からこんな声が。

「私のメッセージに対し、部下はリアクション機能(メッセージに対して絵文字で反応する機能)で絵文字をつけるだけ。そういう世代だから仕方ないかと思いつつ、『ひと言くらい添えればいいのに』と感じてしまいます」(制作会社・36歳)

Gメールやアウトルックでも同様の機能が実装されて久しいが、反応は芳しくない。

「返信の仕方だけで決めつけたくないけど、『雑なコなのかな』という印象にはなります」(編集者・51歳)

「自分にはいいけど、クライアントに同じことをしないか心配」(経営者・40歳)

部下からの返信が「グッド」だけだったらモヤる? SlackやTeamsに加えてメールにも機能が実装【令和8年、働く大人の新常識アンケート②】

では、部下側はどのような考えでリアクション機能を使っているのか。

「無駄なラリーが続くのはかえって迷惑かなと思うので、リアクション機能だけで終わらせています」(IT・24歳)

「返信するのを忘れていて、今から返すのもちょっと......というときに、押した時間がわからないリアクション機能でごまかすことがあります」(PR・29歳)

「バタついているときは、取りあえず確認済みであることを示すためにリアクション機能を使います。落ち着いたときに返すか、顔を合わせたときに直接話せばいいかなと」(ゼネコン・25歳) 

なぜ上司と部下の間にこうした擦れ違いが生じるのか。慶應義塾大学文学部教授で、言語学者の井上逸兵氏は次のように解説する。

「メッセージへの返信は、情報伝達と感情表明の2層構造になっています。リアクション機能は情報伝達の役割を担う一方で、上司への敬意や仕事に対する意欲などは見えづらいので、『失礼だ』『やる気がない』といったネガティブな印象を抱かれやすいのだと思います」

そこで20代~60代の男性250人に対し、リアクション機能に関してアンケートを実施。驚くのは、「気になる」「どちらかというと気になる」と答えたのは20代、30代が最多(共に68%)だったこと。気になる50代は42%にとどまり、意外にも若手のほうがリアクション機能に対して否定的であることが判明したのだ。

部下からの返信が「グッド」だけだったらモヤる? SlackやTeamsに加えてメールにも機能が実装【令和8年、働く大人の新常識アンケート②】
各世代50人ずつに質問。20代、30代が最も気になっており、50代があまり気にしていないという結果に!

各世代50人ずつに質問。
20代、30代が最も気になっており、50代があまり気にしていないという結果に!

「本質は〝丁寧さ〟に対する考え方の違いにあります。積極的にコミュニケーションを取って親密性を高めることと、会話を手短に終わらせて相手の時間を奪わないようにする2種類の配慮があり、そのどちらをより丁寧だと感じるかによって、リアクション機能に対する受け止め方が異なるのだと思います。そう考えると、実は年代差はあまり関係ないのでしょう」(井上氏)

さらに、リアクション機能使用時に選択する、絵文字の種類についてこんな意見が。

「後輩がグッドの絵文字を押してくると若干偉そうに感じるが、ハートや謝罪の絵文字なら気になりません」(人事・35歳)

部下のグッドに「モヤッ」とする理由について、前出の井上氏はこう解説する。

「サムズアップは評価的な意味合いを持つジェスチャーです。評価とは、基本的に上から下に行なわれるため、部下からグッドが送られてくると違和感を覚えるのでしょう。

顔文字・絵文字は、古くは英米のタイプライター文化から始まったものですが、ソーシャルメディアができて以降、日本で爆発的な広がりを見せました。言葉にしないコミュニケーションを重視する日本では、絵文字ひとつでも相手の印象を大きく左右するのかもしれません」

【LINEのスタンプが届くのはうれしい】

なお、意外にもLINEのスタンプに関しては「送られてくるとむしろうれしい」という上司世代も多かった。

「後輩からスタンプを送ってもらえると、距離が近いような気がしてうれしいです。自分が知らない芸人やアニメキャラのスタンプが来ると『最近はこんなのがはやっているのか』と勉強にもなります」(デベロッパー・50歳)

リアクション機能とは異なり、LINEのスタンプは上司からおおむね好意的に受け止められるのはなぜ?

「LINEスタンプは、リアクション機能に比べると圧倒的な多様性があります。なので〝自分が何者であるか〟のアピールにもなりうる。つまりただの情報伝達にはとどまらないのです。

上司からすると、若者が自己開示をしてくれたように感じてうれしいのでしょう」(井上氏)

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逆に、上司世代のチャットは若手にどう思われているのか。最も多かったのが「上司がチャットとメールを混同している」という不満だ。

「文章がメールのように形式的で長く、そのせいでレスが遅い高齢上司。チャットの意味ありますか?」(メーカー・30歳)

「チャットツールで、上司が毎朝どうでもいい長文挨拶をグループに送ってきます。みんなリアクション機能だけで返していたら『ちゃんと言葉で返信しろ』とご立腹。それ以来、『確認しました。本日もよろしくお願いいたします』と戻しています」(Web広告・29歳)

このような上司について、井上氏は次のように指摘する。

「先にも話したとおり、言葉を尽くしたほうが丁寧だという慣習が強い人は一定数います。上の世代はそのように教えられてきた人も多く、実際にそうやって仕事を回してきました。

新しいものを受け入れるのは認知的負荷が高い行為ではありますが、周囲の人がそれとなく『このメディアでは、より簡潔で効率的なほうが相手への配慮になるとされているのですよ』と伝えてあげるよりほかないと思います」

皆さんは絵文字返信問題、どう思います?

取材・文/渡辺ありさ イラスト/服部元信 アンケート協力/アイブリッジ

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