日本GPで自身2勝目を飾り、史上最年少でポイントリーダーに立ったアントネッリ。日本の法律では飲酒が認められないため、鈴鹿の表彰台はノンアルコールシャンパンでセレモニーを行った
連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE47
満開の桜が咲き誇る鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催された第3戦日本GPは3日間で合計31万5000人もの大観衆を集めた。
日本のファンの注目を集めたアストンマーティン・ホンダはフェルナンド・アロンソが苦しみながらも今季初完走し、18位でフィニッシュした。
F1は中東情勢の悪化で、4月に開催予定だった第4戦バーレーンGP(決勝4月12日)と第5戦のサウジアラビアGP(決勝4月19日)の中止が決定。マイアミGP(決勝5月3日)からシーズンが再開するが、果たして、日本GP後の5週間のインターバルは勢力図にどんな影響を与えるのだろうか。
* * *
【若い選手の活躍が目立った日本GP】第2戦の中国GPで自身初優勝を挙げた19歳のキミ・アントネッリ選手が日本GPも制し、史上最年少のポイントリーダーに立ちました。今シーズンはメルセデスが圧倒的に強く、F1キャリア8年目で成熟し、安定感のあるジョージ・ラッセル選手がチャンピオン争いを独走するのかなと思っていました。
そんな中で、アントネッリ選手の才能が開花したのは、F1界にとっていいニュースです。今年から新しいマシンレギュレーションが導入されましたが、メルセデスがルールのグレーゾーンを突いてパワーユニット(PU)の性能を向上させているという疑惑が出たり、ドライバーからは「電気エネルギーのマネージメントを過度に強いられ、思いきり攻められない」などと不満の声が出るなど、ゴタゴタしています。
アントネッリ選手の存在は「希望の光」だと思います。彼は速いだけでなく、若さもある。弱冠19歳のあどけなさが残る表情も話題ですし、華もあります。今年の日本GPは若い選手の活躍が目立ちましたね。
新しいF1マシンのドライビングはゲーム感覚に近いと言われますが、そこに若いドライバーが対応して、力を発揮しているように感じます。
鈴鹿の予選でも、レッドブルではデビュー2年目のイザック・ハジャ選手がマックス・フェルスタッペン選手を、アウディではやはりデビュー2年目のガブリエル・ボルトレート選手がベテランのニコ・ヒュルケンベルグ選手をそれぞれ上回るタイムを出し、トップ10入りを果たしました。
アントネッリ選手が新レギュレーションのマシンに適応してチャンピオン争いに名乗りを上げてきたのは、現代のF1を象徴しているように感じます。アントネッリ選手がこのまま自信つけて勢いに乗ると、手をつけられない存在になるかもしれません。
若き日のセバスチャン・ベッテル選手やフェルスタッペン選手もそうでした。ともに十代でデビューを果たし、勝利を挙げ、急成長していきました。
28歳のラッセル選手は「今年こそ俺がチャンピオンになる!」と思っているでしょうが、過去のF1を見ると、勢いある若手がベテランを上回る可能性も十分あります。メルセデスのチームメイト対決はすごく楽しみになってきました。
【ファンはどんどん意見を言うべき】日本GPの予選では、国際自動車連盟(FIA)が使用可能な電気エネルギーの上限を引き下げるという決定を下しました。一発の速さを競いあう予選でも電気エネルギーのマネージメントを強いられるという、ドライバーの声を受けてのものです。
おそらく、今シーズンはサーキットによって、日本GPのように規則が変わっていくと思います。調整を繰り返していくうちにいい形に収束して、そこにチームやドライバーが適応していって、面白いF1になると僕は思っています。
F1の75年以上の歴史を振り返ると、そういうことを何度も繰り返しているんですよね。だから今は、ファンもどんどん意見を言っていいと思います。きっと運営に携わる関係者たちは、F1をより素晴らしいものにするために、大局的な視点でいろんなこと考えているはずですから。
「F1をより素晴らしいものにするために、ファンはどんどん意見を言っていい」と語る光一
でも今年の日本GPは、多くのドライバーが「世界最高のサーキット」と称賛する鈴鹿の良さが消えていたように感じました。F1を代表する超高速コーナーの130Rは、ドライバーが全開で攻め、腕や度胸が試されるコーナーでした。
ところが新しいマシンでは130Rでスピードを落とし、電気エネルギーを充電するためのコーナーとして使われていました。それはすごく残念でした。
これからレギュレーションはどんどん調整されていくと先ほど話しましたが、今年のマシンはコーナーを攻めれば攻めるほどタイムが遅くなってしまうという現実があります。そこの矛盾をまずは早く取り払ってほしいと思います。
そうじゃないと、ベルギーのスパ・フランコルシャンやイタリアのモンツァなどの伝統的な高速サーキットを舞台にしたイベントは、鈴鹿と同様に良さが消えてしまう可能性があります。
もし仮にF1が現行のマシンで戦い続けるのであれば、新しいレギュレーションに合わせてサーキットを作り直す必要があるのではないでしょうか。
【衝撃的だったベアマンのクラッシュ】日本GPではオリバー・ベアマン選手が大クラッシュし、負傷する場面がありました。
前を走るマシンが電気切れを起こしたり、エネルギー回生を行ったりすると、後ろのマシンと大きな速度差が生まれ、大事故につながる可能性があると何人ものドライバーが開幕前から指摘していましたが、それが現実のものとなってしまいました。
幸いべアマン選手の負傷は膝の打撲で済みましたが、今回のアクシデントについてFIAは重く受け止めるべきだと思います。ただ、昔からドライバーの声はなかなか主催者側には届きにくいところがあります。1994年にアイルトン・セナ選手とローランド・ラッツェンバーガー選手が亡くなったときもそうでした。
あのシーズンはFIAが急にレギュレーション変更を決定し、アクティブサスペンションやトラクションコントロール、ABSなどの電子制御を全面的に禁止しました。その結果、マシンの挙動が不安定になり、危険すぎるとドライバーたちは訴えていました。
開幕前のテストでも大きな事故があったのですが、ドライバーの声は無視され、5月のサンマリノGPを迎えました。あのときの教訓を今回はしっかりと生かしてほしいと思います。
【アロンソの意気に応えてほしい】アストンマーティン・ホンダは、オフのテストからトラブルに悩まされて、完走さえままならないレースが続いていました。そんな中、開幕3戦目の日本GPでフェルナンド・アロンソ選手が18位でチェッカーを受け、今季初完走を果たしました。
周回を重ねてデータを収集できたのは良かったですが、手放しで喜べる状況ではありません。
そんな中でもアロンソ選手はチームに寄り添って、前向きなコメントをしています。そこが頼もしく感じる反面、ちょっと怖いところもあるんですよね。もう今年はあきらめてしまったのかな......という風にもとれてしまう。
開幕3戦目にして18位でフィニッシュし、今季初完走したアロンソ。「鈴鹿でレースを完走できたことは、チームにとって明らかな進歩」と前向きにコメントしている
確かにドライバーのせいで低迷しているわけではないですし、アロンソ選手がチームに不満を言ったところで、どうしようもない状況にあるのかもしれません。
現役最年長のアロンソ選手は44歳。いまだ衰えは一切感じられませんが、彼のF1ドライバー人生が残り少ないのは事実です。
ただアロンソ選手はマシンがダメだから引退するというのは嫌だと言っているんですよね。悪い形でF1を去りたくないと。この苦境をモチベーションに変えて頑張るとコメントしています。
2度の世界チャンピオンから出てくる言葉は素晴らしいと思いますが、同時に物悲しくもあります。
それでもアロンソ選手は日本の文化が大好きだと公言しています。だからこそ、ホンダとともに戦うアロンソ選手が輝ける日が早く来ることを願っています。
ホンダは苦戦していますが、今年の日本GPは前年から4万9000人もお客さんが増え、3日間で合計31万人5000人が鈴鹿サーキットに集まったそうです。これは毎年のように言っていますが、F1ファンの皆さんは普段どこに隠れているんですか(笑)。
これだけお客さんが増えたのはインバウンドに加え、昨年公開された映画『F1』の影響も大きかったと思いますね。主演を務めたブラッド・ピットからF1に興味を持った女性ファンが多かったようですが、ファンが増えてくれるのはうれしい限りです。これからもっともっと日本でF1が盛り上がってほしいです!
☆取材こぼれ話☆堂本光一主演のミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』が東京・日生劇場で4月29日まで上演しているが、それに先立ってオープニング公演が3月27日~31日に埼玉県のウェスタ川越大ホールで開催された。オープニング公演には自らハンドルを握り、都内の自宅からウェスタ川越に通ったという。
「自宅から川越までは結構距離がありますし、道路事情が日によって変わります。だから何種類ものナビやマップで渋滞情報を調べ、いろんなルートで通いました。
『SHOCK』シリーズはフィジカルがすごく大変でしたが、『チャーリーとチョコレート工場』で僕が演じるウィリー・ウォンカという役はすごく脳を使います。ウォンカは、セリフの3歩先を行っている人物です。だから脳を常にフル回転させておかないと、芝居が乗り遅れてしまうんです。しかもセリフ自体も多いので、脳がすごく疲れます。だから公演後に車を運転することで気分転換ができましたね」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア
構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄



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