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ワンルームマンション投資からの撤退組は、ブツ上げ屋の主要ターゲットのひとつ

高騰するマンション価格はとどまることを知らず、不動産投資市場も活況を呈している。

ニッセイ基礎研究所の調査によれば、日本における「収益不動産」の資産規模は352.1兆円。

昨年と比べ37兆円増と大幅な伸びを記録した。だがその一方で、無知な個人投資家を狙った詐欺的なスキームで物件を売りつける、あるいは買い叩く悪徳業者の存在も浮き彫りになっている。

「数年前にワンルームマンション投資を勧められ、長時間自宅に居座られた挙句、無理やり買わされてしまったんです。価格は3500万円ほど。『でも入居者からもらう家賃でローンが返せて、物件は自分のものになるなんて良い投資だ』と自分に言い聞かせはしたのですが......。現実はそうはなりませんでした。毎年70万円近い赤字になっており、にっちもさっちもいかなくなっていた」 

そう語るのは、ある大手ゼネコンに勤務する橋本剛士さん(仮名)。だが、真の地獄はここからだった。

【社用携帯に突然の電話】

ある日、橋本さんの社用携帯に不動産会社から買い取り希望の連絡が入った。発信元は都内城南地区にオフィスを置くL社だ。「今思えば、どこで携帯の番号を知ったのか尋ねるべきでした」と、橋本さんは悔いを残す。

「私が持っている物件をいい値段で買いたいと、そんな話でした。

相手は専務を名乗っており、『私どもなら橋本様にベストなお値段をご提示できます』と自信満々に言い切る。僕からすれば、赤字を解消したい一心だったので、売却したい希望はもちろんありました。多少損してでもいいから、負けは負けで確定させたいと。そこに付け込まれたのだと思います」(橋本さん)

この電話で気を許した橋本さんは、以下数回に渡って通話や面談を重ね、L社に信頼を寄せていった。

「具体的に提示された金額は2500万円ちょっと。買値より1000万円も下です。根拠としてL社の専務は『レインズを見たら、直近の実績では2000万円ほどですね』と言って、実際に物件が成約した紙を2,3枚見せてきて......。

レインズというのは不動産売買のデータベースですね。そんなものを見せられて相場価格を信じてしまった。『1000万円安く売るのは嫌だが、相場より500万円も高く買い取ってもらえるならやむをえない』という気持ちになってしまったんです。売却を決意すると、今度は金策を一緒に考えることになりました」(橋本さん)

社名偽装に見積偽装、借金申し込み代行まで...。独身リーマンを食い物にする「ブツ上げ屋」の卑劣な手口
あの手この手でハンコを付かせるブツ上げ屋から資産を守るには、常に冷静沈着でいることが大切だ

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ここでいう金策とは、橋本さんが現在借り入れている金融機関の残債を返済することである。残債に2500万円をぶつけたとて、その穴は埋まらない。
自己資金と消費者金融からの借り入れで穴を埋めることになったのだが、L社の対応は手慣れたものだった。

「手元に現金が500万円ほどあったのですが、どうしても残り300万ほど足りなかった。その差額は消費者金融から借りて埋めてでも今売ってしまおう、という話になったのですが、消費者金融への申し込みも代行してくれるんです。そして、買主が決まってもないのに『必要だから』と契約書にハンコを押すことも求められました。

あまりに手厚いサービスが気になり、これは何かおかしいのかもと思って友人に相談したところ、典型的な〝ブツ上げ屋〟の手法だと気づいたんです」(橋本さん)

ブツ上げとは、不動産をあの手この手で安く買い叩き、多額の転売益を目論む行為を指す。結論から言えば、橋本さんに近寄ってきたL社は物上げの悪徳業者だったのだ。

【親身なふりした詐欺師】

では、L社の営業活動で、どこが悪質といえるのか。長年、不動産投資の営業マンに従事していた経験者は次のように指摘する。

「この業者は大手企業や金融機関を名乗る方法で不正に連絡先を入手し、勤務先に電話を入れて社用携帯の番号を入手したのでしょう。というのも、大手建設会社の現場監督クラスや自動車メーカーの中堅社員は転勤が多かったり、忙しくてお金を使う暇がないためワンルームマンションに投資する人が多く、実は〝カモ〟が多い属性。収入が安定したり、大手に勤務しているからといって投資リテラシーが高いわけではないんです。むしろ無頓着な情報弱者であるパターンがかなりある。

『2000万円の実績』といってレインズの資料を見せられたというのは、おそらく偽造でしょう。買取側のL社が〝相場〟を安く見せるために用意したもので、よくやる手口です。レインズの資料を見せるだけで、実際には本人には渡さなかったはず。本当に相場がその値段かどうか、同じ物件の謄本を見て調べたりすれば適正価格はわかりますよ」(不動産投資の元営業マン)
    
この元営業マンの助言に従い、橋本さんが所有する物件の市場価格を調べてみたところ、「3400万~3500万円」という売買実績があったとの結果が出た。つまり、L社の話は端から嘘だったのだ。橋本さんが憤って言う。

「ブツ上げ業者は親身になるフリをして、1000万円も下の価格で買い取ろうとしていた。金策も早く売らせるために手伝っていたわけで、僕に10%もの利息がついた数百万円もの借金を背負わせようとしていたと思うと怒りが止まりません。これでは詐欺じゃないですか。

すでに売却の意思がないことはL社に伝えてありますが、ハンコをついたまま持っていかれた書類が気がかりで仕方ありません。L社の登記簿謄本を確認したら岩手県から本店移転がなされており、ペーパーカンパニーではないかとも勘ぐっています。本件は弁護士にも相談しようと思います」(橋本さん)

【マルチ出身の営業マンが牽引】

虚偽の相場説明に消費者金融への申請代理、用途を偽った個人情報の取得に片判契約――。

法律に照らすまでもなく、L社が行っている行為は一線を超えたものだ。

一連の事実関係について、大森にあるL社に取材を申し込んだが、期限までに回答を得ることはできなかった。代わりに、L社に近い関係者から話を聞くことができた。

「マルチ商法で名を馳せた営業マンが実質トップの会社で、大学生の頃から為替の自動売買ツールを売っていたようなマインドのままブツ上げをやっています。遵法精神はかけらもないでしょうね、物上げ業界の中でも手段を選ばない連中なので、いずれ事件化すると思います」(関係者)

高値で掴んでしまった不動産を処分するのにも、新たな悪徳業者に狙われる現実。これこそが今、不動産投資界隈の片隅で起こっている不都合な真実の一片なのだ。

文/吉井透 写真/Pixta.jp、photo-ac.com

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