銭形平次や半七など、時代劇でお馴染みの目明しや岡っ引きは、悪人を捕える正義の味方、というイメージが強いですが、その実態はイメージとは大きく異なるようです。

 目明しや岡っ引きとは与力や同心(共に江戸市中で警察の役割を果たした役人)の手下として犯罪捜査にあたっていましたが、彼ら自身も犯罪者であることが多く、共犯者を密訴したことで罪を逃れ、役人の手下に取りたてられるパターンが一般的でした。


 なぜ、犯罪者を捜査に用いたのかというと、当時の町奉行所等の警察部門があまりにも貧弱だったので、幕府としてもやむを得ない措置だったのです。
 これを問題視した六代将軍徳川家宣が1711年に目明しの使用を禁止する町触れを出したのを初めとして、以降も何度か目明し禁止令が出され、1789年には岡っ引きの雇用も禁止されるのですが、そうなると別の前科者である「手先」が雇用されるようになってしまいます。つまり、岡っ引きや目明しの雇用は必要悪だったわけです。

 しかし、彼らはやはり無法者。
 多くの目明し、岡っ引きはそれぞれ数人の部下を抱えており、彼らの生活の面倒も見なければなりませんし、犯罪者の検挙率が悪い者は獄中に戻されてしまうこともあって、彼らは無罪のものを犯罪者にでっちあげたり、些細なことで庶民をしょっ引いて、恐喝して金を巻き上げるなど、かなり悪どいこともやっていたようです。

 日本テレビ『世界一受けたい授業』にも出演している歴史作家・河合敦さんの著書『江戸のお裁き―驚きの法律と裁判』(角川書店)には、この他にも江戸時代の法律・裁判に関する知られざる実態が紹介されています。教科書には載っていない歴史の裏側を知ることができ、歴史ファンでなくても楽しめる一冊です。
(新刊JP編集部/山田洋介)

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