「辞典」といえば、『広辞苑』や『岩波国語辞典』などを出版している岩波書店がまず思い浮かぶのではないだろうか。“信頼の岩波ブランド”とも言うべき、内容の正確さと、文字の大きさやレイアウトの工夫で読み手を意識した辞典づくりは老若男女から支持されている。
そして、岩波書店から全く新しい「辞典」が11月25日に出版された。
その名も『日本語 語感の辞典』(中村明/著)だ。
この辞典の大きな特徴は、タイトル通り「日本語の語感」を強く意識しているところにある。では、語感とは何か?
例えば、全力を尽くしていることを意味する「必死」という言葉があるが、この辞書によれば「必死」は以下のような説明がなされる。
ひっし【必死】
・・・現代では一般に、「死に物狂い」や「命懸け」より幅広くよく使われ、現実に生命の危険が及ぶ例がほとんどない点、それだけ軽い感じがする。(p882)
なるほど、では「死に物狂い」や「命懸け」の語感はどう説明されているのか。
しにものぐるい【死に物狂い】
・・・幅広く使われる「必死」はもちろん、「命懸け」よりもさらに追い詰められた状況で使う傾向があり、取り乱した感じが最も強い。(p451)
いのちがけ【命懸け】
・・・そのぐらいの覚悟をもってといった主観的な評価でもしばしば使われるが、「死に物狂い」や「必死」と違って、実際に生命の危険が及ぶ用例もある。(p72)
「死」というものを連想させる3つの言葉だが、確かに生命に危険が及ぶときに使うのは圧倒的に「命懸け」だ。一方、「必死」は広く浅く使われ、その誇張表現として「死に物狂い」があるといったところか。
同じような意味でも、それぞれ使う人や状況によって別のことばを使うことがある。これが「語感」の正体である。
著者である中村明氏が約30年の月日をかけて集められた膨大な語感を収めた本書は、正しく日本語を使う上では必携の辞典となるのではないか。
岩波書店辞典編集部は「読んでいて楽しい辞典を目指しました。気になることばから調べても、ランダムにページをめくっても、著者の蘊蓄(うんちく)に出会えるはずです」と語る。“ニュアンス”という日本語の難しい部分を、文豪たちの様々な文例(特に夏目漱石は毎ページのように出てくる)や、中村氏のユーモア溢れる文章で理解させてくれる。
書店員からの評判も上々とのこと。
パラパラめくるだけで意外な雑学を知ることができる辞典なので、是非書店などで手にとって見てみて欲しい。
(新刊JP編集部/金井元貴)
【関連記事】 元記事はこちら
・岩波国語辞典が10年ぶりに改訂 辞書編集の裏側を探る
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その名も『日本語 語感の辞典』(中村明/著)だ。
この辞典の大きな特徴は、タイトル通り「日本語の語感」を強く意識しているところにある。では、語感とは何か?
例えば、全力を尽くしていることを意味する「必死」という言葉があるが、この辞書によれば「必死」は以下のような説明がなされる。
ひっし【必死】
・・・現代では一般に、「死に物狂い」や「命懸け」より幅広くよく使われ、現実に生命の危険が及ぶ例がほとんどない点、それだけ軽い感じがする。(p882)
なるほど、では「死に物狂い」や「命懸け」の語感はどう説明されているのか。
しにものぐるい【死に物狂い】
・・・幅広く使われる「必死」はもちろん、「命懸け」よりもさらに追い詰められた状況で使う傾向があり、取り乱した感じが最も強い。(p451)
いのちがけ【命懸け】
・・・そのぐらいの覚悟をもってといった主観的な評価でもしばしば使われるが、「死に物狂い」や「必死」と違って、実際に生命の危険が及ぶ用例もある。(p72)
「死」というものを連想させる3つの言葉だが、確かに生命に危険が及ぶときに使うのは圧倒的に「命懸け」だ。一方、「必死」は広く浅く使われ、その誇張表現として「死に物狂い」があるといったところか。
同じような意味でも、それぞれ使う人や状況によって別のことばを使うことがある。これが「語感」の正体である。
著者である中村明氏が約30年の月日をかけて集められた膨大な語感を収めた本書は、正しく日本語を使う上では必携の辞典となるのではないか。
岩波書店辞典編集部は「読んでいて楽しい辞典を目指しました。気になることばから調べても、ランダムにページをめくっても、著者の蘊蓄(うんちく)に出会えるはずです」と語る。“ニュアンス”という日本語の難しい部分を、文豪たちの様々な文例(特に夏目漱石は毎ページのように出てくる)や、中村氏のユーモア溢れる文章で理解させてくれる。
書店員からの評判も上々とのこと。
パラパラめくるだけで意外な雑学を知ることができる辞典なので、是非書店などで手にとって見てみて欲しい。
(新刊JP編集部/金井元貴)
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