2002年、日韓共催で行われたサッカー・ワールドカップ。数ある国際大会の中でも最高峰の盛り上がりを見せたこの大会の裏には、あるイタリアの小さな会社の姿があった。


 北イタリアの湖に浮かぶ小さな島にあるラ・レーテ社は、「ネット(網)」の生産を行っている社員数わずか20名の小さな会社だ。ラ・レーテ社のネットは業界内において高いシェアを誇り、ワールドカップ時のゴールネットも、このラ・レーテ社によるものだった。

 小さな会社が世界を舞台に活躍する―ラ・レーテ社が特別な事例のように見えるが、そうではない。各業界を深く見てみると、小さいながらも信頼を得て、高いシェアを獲得している会社が多いのだ。

 本書はそういった小さな会社が活躍するためのブランド戦略を解説する一冊だ。

 本書はまず会社には「内向きの矢印」と「外向きの矢印」、2つの矢印があると説明する。そして、このうち「内向きの矢印」を持つ会社がブランドのある会社だという。

 それはつまり、しっかりとした会社のビジョンを持つこということであり、そのビジョンが「内向きの矢印」を作り、小さな会社が世界でも活躍できるための源となる。

 共著者の1人である浜口隆則氏は、ロングセラーとなっている『戦わない経営』(かんき出版)の著者として知られるが、本書はその実践編とも言える。また、もう1人の共著者である村尾隆介氏は食品輸入販売ビジネスを起業し、小さな会社のブランド戦略を手掛けるコンサルタントとして活躍している。

 本書の特徴は初見ビジネス書とは思えない柔らかいエッセイのような文体と可愛らしい挿絵だ。また、ラ・レーテ社をはじめとして温泉旅館や珈琲(コーヒー)工房など、事例も豊富で、奥深いテーマを分かりやすく解説してくれている。


 起業家を目指す若者からビジネス書を読みたいけど実は少し難しくて苦手という人まで、多くのビジネスパーソンに読んで欲しい一冊だ。
(新刊JPニュース編集部)

『だれかに話したくなる小さな会社』
著者:浜口隆則、村尾隆介
出版社:かんき出版
価格:1470円
発売中
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