そんなミクロな生き物たちの美しく、恐ろしいグラビアを拝むことができる写真集が『夢に出そうなミクロ生物』(ミクロ生物選定委員会/編、扶桑社/刊)です。見出しに「閲覧注意」とつけたように、苦手な人にとっては「ウッ」となってしまうような、とっても可愛らしく、それでいて怖いミクロな生き物(もしくは体の一部)を見ることができます。
○生物学者たちも興味津々 最強のミクロ生物
まず表紙の生き物である「クマムシ」。大きさ0.05ミリから1ミリ程度の無脊椎動物で、英名は「Water Bear」、すなわち“水のクマ”です。頭と思しき部位には、ちょこんと口のようなものが開いています。その周りには微妙に模様のようなものがついていて、ホースの先端のようにも見えますね。
ずんぐりむっくりな体型はまるでクマ。「キモカワ系」を地で行くようなイメージを受けますが、実はこのクマムシ、知る人ぞ知る最強生物です。ほとんどの環境下で生きていけるのが特徴で、体が干乾びると「乾眠状態」となり、100度近い高温、絶対零度(マイナス273度)にも耐えられます。真空状態もなんのその、高線量の放射線を浴びても死にません。
そんな特徴に学者たちも興味を持ち、大衆の人気もうなぎ昇り。
○マンガ的表現をそのまま再現する深海生物
深海2500から3000メートル付近にあるブラックスモーカー(熱水が噴き出る噴出口)には、さまざまなミクロ生物がいます。
ゴカイ類、シンカイウロコムシの一種は体長6ミリでありながら、口におそろしい歯のような形状のものがあり、「エイリアン」といっても過言ではない風貌。もしこれが人間サイズの大きさであれば…と考えるとゾッとします。また、同じくゴカイの一種は本来、眼がおさまるはずの場所から謎の突起物がぽよよーんと出てきています。まさに、マンガで目が飛び出るようなあの感じ。じっくり見れば見るほど目に見えてしまいます。
ミクロな生き物たちの、珍妙で、グロテスクで、そして愛嬌のある姿を見ていると、小さいからこそ成り立つ世界があり、各々がその環境に最も適した形で生きていることが分かります。頭部が口で覆われている寄生虫や、人を喰ったような顔をしている殺人アメーバなどは神秘ささえ覚えるはず。ミクロな生き物たちが並ぶことによってできる生命そのものの芸術は、一度見たら忘れられないものです。
この写真集は「美」よりも「驚」や「恐」に主眼を置き、その対象を選んだといいます。どんな小さな生き物でも、そのフォルムで生きている。
(新刊JP編集部)