巻き返しを期すJ2後半戦の初戦は、ホームにモンテディオ山形を迎えての“奥羽本戦”となった。対する山形は18日に渡邉晋監督との契約解除を発表し、これが佐藤尽暫定監督の初戦。4月下旬から取り組んできた3バックではなく、慣れ親しんだ『4-2-3-1』布陣を採用した。秋田にとってはスカウティングの部分で難しさもあったと思われるが、「自分たちがどれだけ強気にプレーできるか。相手のシステム、メンバー構成ではなく、自分たちの強気をどれだけ出せるか。自分たちのプレー思考を変えずに、ブレずに貫いて相手を上回る(吉田監督)」と秋田の強みをキックオフから押し出していく。
「最初15分の得点は、最初からフルスロットルで気持ち、プレーを出し切る」という吉田監督の言葉通り、セットプレーの流れから小松蓮のクロスに佐藤大樹が頭で合わせ、開始5分で先制に成功する。吉田監督は「出し切る姿勢に味方が連鎖し、反応し、連なっていく。攻守一体、秋田一体が生んだゴール」と称えた。その直後に追いつかれ、後半に入りエース小松のゴールで勝ち越したが、終盤の2失点で惜しくも敗戦。吉田監督は「ダービーは街と街、人対人。
先制ゴールを決め、82分までプレーした佐藤は「チームとしてやるべきことはできたと思いますが、90分間を通して自分たちの隙の多さが原因でこういった展開になってしまった」と振り返る。自身は直近2試合で3得点と好調を維持しており、前節の大分トリニータ戦を彷彿とさせるような素早い動きでDFの前に入り込んでのヘディングゴールを決めた。「高さがあまりない分(※身長178cm)、相手の前で勝負するという感覚は持っています。前節の大分戦でああいった形で決めることができて自信になっていますし、ゴールを常に狙う意志は以前よりも強くあります」と自信を深めているようだ。
吉田監督が次節以降の勝利に向けて強調するのは「魂際(球際)の勝負」で勝つこと、そしてそのための「日常」だ。前節は佐藤の2得点で過去1勝と苦手としていた大分を下し、勝利後には吉田監督から「限界突破」という言葉も飛び出した。その言葉の真意について改めてこう語る。
「限界は自分の限られた世界。それを突破していくためには、自分を強く、強く、強く信じること。
その2得点の活躍で「限界突破」を引き出した佐藤は「大分戦の週に『限界突破』というワードが出てきました。チームのため、家族のため、いろいろな人のために取り組むと『限界突破』の領域に行けると伝えられたので。それで掴んだ勝利だったと思いますし、今後も継続してやっていきたいと思います」と話す。「魂際や切り替えや走力、これからは気温も暑くなりますし、もっともっとやっていかないと秋田の良さは出ないと思います。そこは謙さんが求めている以上のことをしないと、上には行けないということを痛感しているので、自分も含めてチーム全体でそこを再認識してやっていきたいです」と見据えた。
取材・文=三島大輔(サッカーキング編集部)