『俺達の誇りは揺るがない 己を信じて突き進め』――。水戸の選手たちがウォーミングアップに登場すると、敵地に集結した水戸ホーリーホックのファン・サポーターは手書きの横断幕を掲げ、イレブンを鼓舞した。


 今季の明治安田J2リーグで首位を快走する水戸。中断期間明けの前節はロアッソ熊本に逆転負けを喫し、実に16試合ぶりの黒星となった。このままズルズルと行ってしまうのか、それともここからもう一段階ギアを上げることができるのか……。J2第25節モンテディオ山形とのアウェイゲームは、今後の水戸を占う“試金石”となった。

「自分たちの狙い通りに得点を取って帰ってきたことが素晴らしかった」と森直樹監督が語った通り、水戸はキックオフから攻守でアグレッシブなプレーを続け、開始5分に渡邉新太のゴールで先制する。20分には大崎航詩が左足で目の覚めるようなミドルシュートを突き刺し追加点。「後半は押し込まれる時間が長く続いたんですけど、守備でシステム変更した中で選手たちがしっかりと対応して、もう一回盛り返してくれた。それが今日の試合のポイントとして大きかった(森監督)」と山形の反撃を1点に食い止め、2試合ぶりの白星で勝ち点を「51」に伸ばした。

 今季加入の“エース”渡邉はキャリアハイのリーグ戦11得点目を記録し、勝利の立役者に。「上に行くチームというのは絶対に連敗をしない。今日勝つためだけにやっていたので、連敗せずしっかりと勝てたのは良かったです」と試合を振り返りつつ「とりあえず(自己新記録)超えることができてホッとしていますし、なかなか流れの中から得点が取れていなかったので良かった」と胸を撫で下ろした。

 強烈な一発を突き刺した大崎の決勝点のシーンについて、渡邉は「大崎はアップの時からいいシュートを決めていたので、アップの通りだった」と話す。
大崎自身も「今日はアップの時からボールが足に乗っていたので、何の迷いもなく打てました」と振り返った。大崎は今季主戦場の左サイドバックからボランチにコンバートされ、ピッチ中央でプレーするようになったからこそ生まれた得点だ。「開幕からずっとモリショウ(大森渚生)が試合に出ていて、その中でも『試合に使いたい』と思ってくれたことが嬉しいですし、自分をコンバートして試合に出そうとしてくれた監督の期待に応えたかった。『あとは得点が欲しいね』と森さんにも西村さん(西村卓朗GM)にも言われていて、自分もずっと意識していたので、全員が『大事』と言っていた試合で結果を出せたことは、自分にとって大きな自信になりました」と手応えを語った。

 連敗せず再び白星を手にできた一方、後半アディショナルタイムに喫した1失点を監督・選手は重く受け止めている。「水戸の歴史の中で2019年は得失点差が『1』が足りず、プレーオフに行けなかった。1点の重みがあるので、そこはもう一回チームとして見つめ直して、次のジュビロ磐田戦に向かって行きたい」と森監督。大崎も「最後のこぼれ球の反応で、自分が遅れてしまった」と悔やみつつ「最後まで隙を見せないのが強いチーム。“1”で泣いた経験があるチームなので、自分たちが向き合っていかないといけない」と気を引き締め直した。

取材・文=三島大輔(サッカーキング編集部)


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