日本代表の森保一監督が10日、広島市内で開催されたイベント「エディオン『#今までもこれからもプロジェクト』第1弾イベント『ふれあいフェスタ』」に出席し、トークショーで参加者と笑顔でふれあいながら“今を生きる大切さ”を語った。

 被爆80年を迎えた今年、森保監督は8月6日に選手や監督として活躍した地の広島で、8月9日に出身地の長崎でそれぞれの平和記念式典に出席。
縁ある被爆地での日々を振り返り、平和への思いを語った。

「こうやってみなさんとお会いできるように、自分が自分で何をしたいかを決められる世の中であること、その中で生活ができていることは本当に幸せなことだと思います。これが80年前や、今も世界中のいろんなところで戦争、紛争が起こっている中で、自分の好きなことができる今この時間が当たり前じゃないことを改めて本当に考えさせられました。平和があるからこそ自分の好きなことができるということを改めて噛み締めて、今を一生懸命生きたいなと思っています。原爆でお亡くなりになった方々は、本当はもっといろんなことをやりたいという思いがあったと思いますが、生きたくても生きられなかった、命を奪われてしまった人がたくさんいるということを考えながら、自分たちが今を一生懸命生きていかないといけないということは式典に行って改めて感じました」

 8月6日にはエディオンスピースウイング広島(Eピース)で天皇杯4回戦のサンフレッチェ広島対清水エスパルスの試合が開催され、森保監督は式典参加後に同試合を視察した。広島での監督時代に建設に向けた署名活動に参加するなど思い入れのある新スタジアムについて、改めて「日本の中でも誇れるスタジアム」と話した。

「街中にサッカースタジアムができて、まずはピッチとサポーターの距離が近く、情熱をお互い感じながら試合を戦っていく空間ができればいいなと思っていた中で、エディオンピースウイングができて、本当に広島の宝にも、潤いにもなっている素晴らしいスタジアムができたと思っています。うれしいのは、街中で普通にユニフォームを着ていろんなところを練り歩いている姿を見ること。本当に幸せな気持ちでいつも広島に来させていただいています」

 昨年6月にはEピースで日本代表の試合も実現。日の丸を背負って古巣の新スタジアムで指揮をとった森保監督は、「私たちも去年、代表戦をやらせていただいて、サポーターのみなさんと気持ちを1つにしながら戦える空間で本当に幸せだなと思いながらサッカーをさせてもらいましたし、サンフレッチェの試合を見ていても選手たちの躍動はまさにサポーターのみなさんの声が近くなったからこその躍動だなといつも感じながら試合を見させていただいています」と振り返った。

 日本代表は7月に東アジアE-1サッカー選手権2025で大会連覇を達成。司会者が地元のサンフレッチェ広島から6選手が招集されたことを話題に挙げると、監督は「決して私がサンフレッチェ広島で選手や監督をやっていたから多くの選手を選んだわけではありません。
Jリーグをたくさん見てきた中で、日本を代表してプレーしてもらおうと思える選手がたくさんいて、サンフレッチェには1対1の局面で勝っていけるいい選手がたくさんいる証です」と笑顔でコメント。出場権を獲得した2026年のワールドカップに向けては、「最高の景色を目指して戦うという目標は持っていますが、これまで通り今できることの最善を尽くすことを日々、そして毎回の活動や1試合1試合で積み重ねながら前進していきたいと思っています」と意気込んだ。

 子どもからの質問タイムでは、真っ先に手を挙げた子から「試合中に書いているメモ帳にはどんなことを書いているんですか?」と聞かれると、まずは「最初に手を上げられるのは勇気があっていいね。これからも積極的になんでもチャレンジしてね」と積極性を称えつつ、「メモには試合が終わったら何食べようかなって書いています」と冗談で会場に笑いを起こした。そして、「例えば前半に右サイドの攻撃がうまくいっているとか、誰々がシュートを打ったとかを書いていて、それをハーフタイムにチェックして、右サイドの攻撃は良かったから後半も続けていこうとか、ロングボールでやられているからそこを気を付けていこうとか、そういった指示ができるようなことを書いています」と子供目線で説明した。

 さらに女の子から「サッカーを教えるのは楽しいですか?」という素朴な質問が寄せられると、「楽しいと思えることは、選手がうまくなりたい、強くなりたいと思って、ミスを恐れずにチャレンジしているところを見られるのがうれしいです。選手が一生懸命にやっている姿を見るのがすごく楽しいし、うれしいので、学校も遊びも自分の好きなことにチャレンジしてください。パパもママも喜ぶと思います」とアドバイスとともに返した。

 今回のイベントは、家電量販店を運営する株式会社エディオンが「企業が生まれ育ったふるさとに対して、より主体的かつ持続的に責任を果たしていく」ために掲げている「CFR=Corporate Furusato Responsibility(企業のふるさとへの責任)」の取り組みとして始動した地域貢献プロジェクト「#今までもこれからも」の一環で開催。広島駅の隣にあるエディオン蔦屋家電では、今回のイベントで募集したスポーツ写真や川柳などの作品が展示された。

 イベントの終盤には森保監督も川柳を披露。「今を大切に」というタイトルで、「未来へのバトンを渡すこれからも」と記し、その思いを語った。


「私が学校でも選手時代も指導者になってからも、自分が成長するためにいろんな方々がサポートをしてくれました。その人たちは、自分たちがやってきたことを伝えてくださって、いろんな働きかけやサポートのおかげで今の自分があります。なので、自分がしてもらっていることを若い世代に伝えて、また未来につなげていきたいと思います。未来にバトンタッチと言うと、人のことを大切にとか、思いやりを持ってとか、感謝を忘れずにって大人にいろんなところで言われると思いますが、それはもちろん大切なことだけど、相手のことより前に、自分のやりたいことや目の前でやることに全力を尽くしてチャレンジしてほしいなと思います。サッカーをやっていたら、今よりもうまくなりたい、強くなりたい、勝ちたい、成功したいという気持ちを持って、自分がやることに全力を尽くしてほしいです。人への敬意や尊重を忘れず、まずは自分のことを一生懸命にやってほしいなと思います。いろんなところで伝えるのは、『今を大切に』と『今のベストを尽くす』と『今を楽しむ』ということ。いろんな人に話していますが、今があるからまた未来にもつながっていくので、今を大切にしてほしいと思います」

取材・文=湊昂大


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