日本代表は1日からアメリカで入念な調整を行っており万全の体制で大一番に挑むことになるが、ご存じの通りDFやボランチにケガ人が続出している。
そこで気になるのがボランチの人選だ。大黒柱の遠藤航は健在だが、アジア最終予選で主軸を担った守田英正、田中碧の2人が不在。鎌田大地もシャドーが主戦場になると見られるため、6月シリーズでチャンスをもらった佐野海舟と藤田譲瑠チマのどちらかがキャプテン遠藤とコンビを組むことになりそうだ。巧みなパス回しと高度な技術を併せ持つメキシコとのかみ合わせを考えると、球際の強さやボール奪取力に秀でた佐野の起用が濃厚だろう。ともにドイツで名を馳せた“新旧デュエルマスターコンビ”で中南米の雄とどう渡り合っていくのか。彼らのパフォーマンスは非常に興味深い。
遠藤と佐野が同時先発するとなれば、6月のインドネシア代表戦以来。この試合は格下相手ということもあり、遠藤がしっかりと中央で構えながら、佐野が縦横無尽に動き回ることができていた。遠藤は「海舟は機動力を持って前に関われるタイミングがあれば、どんどん出ていくというのを自分でも意識していたと思う。自分はそれをしっかり生かしてあげられるようなポジショニング、関係性を意識した」と前向きな感触を得た様子だった。しかし、佐野は「前線に絡むのが自分の良さでもあり課題でもあるので。
ホロ苦さも覚えた一戦からカ月が経過した今回、対峙するメキシコはインドネシアとは比較にならないほどハイレベルなチームだ。W杯では決勝トーナメントの常連国で、指揮を執るのは日本を熟知するハビエル・アギーレ監督。ボール支配率でも日本を上回ってくるだろう。ただ、佐野の本来の武器である球際や寄せの部分、ボールを奪う仕事に注力できるかがポイントとなる。「メキシコのような相手が好物? それはあまり感じないですけど、自分の良さを出せると思うし、自分の奪い方もより効果的になるチームかなと感じます」と本人も少なからず自信をのぞかせた。
「(遠藤選手との)バランスも大事だと思いますけど、個の部分で相手より強度で上回ったりとか、そういうところでリズムを作れればいいですね。自分が上がるべきなのか、後ろで構えた方がいいのかを見極めながらやらないといけないと思います」とも発言。相棒・遠藤と密に意思疎通を図りながら、強敵を凌駕していくべきだろう。
佐野がいい形ボールを奪って攻撃の起点になれば、シャドーに入るであろう鎌田大地や久保建英、最前線の上田綺世の決定機が増えるのは間違いない。「守から攻」の迅速な切り替えと推進力を出しながら、確固たる成長を見る者に感じさせてくれれば、まさに理想的である。
実際、佐野にしてみれば、この9月シリーズで爪痕を残さない限り、W杯への道は開けてこない。森保ジャパンのボランチは遠藤、守田、田中に加え、2列目兼務の鎌田という陣容がカタールW杯前から続いてきた“堅牢な牙城”。そこに割って入るのは容易なことではない。主力の2人が欠けている今こそ、穴のないパフォーマンスを示して「守田と田中碧がいなくても十分、世界と戦える」という確信を指揮官に持たせることが重要命題だ。それが成功して初めてコアメンバー定着が叶い、序列を変えるチャレンジに挑めるのだ。
「自分はアピールしないと置いていかれる立場なので、どれだけ自分を良さを出せるかが大事。もちろん得点もアピールになると思いますし、そこは自分自身課題にしているところなので、どんどん狙っていきたい」と本人はゴールという結果でもインパクトを残していく構えだ。
2023年11月の2次予選・ミャンマー代表戦で初キャップを飾った頃に比べると、報道陣の質問をしっかりと受け止め、物怖じすることなく堂々と回答できるようになった。紆余曲折を経て、先月には結婚も発表。人間的にも成長したことで、代表定着に大きな一歩を踏み出せるのではないか。25歳で迎える1年後のW杯を絶対に射止めなければいけない。メキシコ戦で力強い布石を打つことができれば、常連組も強い危機感を覚えるはず。
取材・文=元川悦子