アトレティコ・マドリードを率いるディエゴ・シメオネ監督が、リヴァプール戦に向けた前日会見に出席した。16日、スペイン紙『アス』が伝えている。


 少しだけ昔話をしよう。今から5年前の2020年3月11日、“要塞”として畏怖される『アンフィールド』を陥落させた一夜の話だ。チャンピオンズリーグのラウンド16に進出したアトレティコ・マドリードは、相見えたリヴァプールとの、本拠地での1stレグを1-0で制して、敵地に乗り込んできた。狙いは、持ち味である“堅守”と“速攻”でトドメを刺すこと。しかし、その目論みは外れ、前半のうちにアドバンテージを手放すことになると、防戦一方となった後半はなんとか凌ぎ切ったものの、延長前半についに2戦合計スコアをひっくり返されてしまったのだ。

 歓喜の坩堝と化した要塞に呑まれた…と誰もが思った。が、“チョリスモの体現者”たちは、反撃の機会を虎視眈々と窺っていた。それは、失点からわずか3分後。相手GKのキックミスから舞い込んできたチャンスだったが、これをMFマルコス・ジョレンテが仕留めると、ふたたびアドバンテージ(当時はアウェイゴールが適用)を得たことで形勢逆転。そして、延長前半アディショナルタイムに狙っていたカウンターから、M・ジョレンテが値千金のゴールを決める。さらに、延長後半にはM・ジョレンテのラストパスを受けた、FWアルバロ・モラタが決定的な追加点をゲット。2戦合計スコア4-2。
要塞が静まり返った。

 そんな『アンフィールド』で、2025-26シーズンのCL第1節を迎えるアトレティコ・マドリード。しかし、新エースとなるFWフリアン・アルバレスやMFジョニー・カルドーゾ、MFアレックス・バエナら主力5人が欠場となる緊急事態に。それでも、シメオネ監督は「(前日会見にともに出席した)パブロ(・バリオス)が言ったように、ポジティブに考えれば、出場機会を得られる選手が出てくるということ。素晴らしいスタジアム、熱狂的なファン、チャンピオンズリーグやプレミアリーグで最高のパフォーマンスを見せる、並外れた相手と対戦することは、常にポジティブなことだ。非常に手強い相手だけど、彼らを苦しめられるような場面を作っていくつもり」と意気込みを示した。

 また、リーグフェーズ全8試合を見据えた戦いよりも、“パルティード・ア・パルティード”を強調したシメオネ監督は、「たとえ負けたとしても、まだ7試合は残っている? そんな考えはない。ただただ、明日素晴らしい試合をし、週末(ビジャレアル戦)の流れを継続し、私が大好きな素晴らしい舞台で、さらに上を目指すという目標だけを見ている」と勝ち点の胸算用は必要ないと口にした。

 そして最後に、シメオネ監督は5年前の秘話を語る。前述したリヴァプール戦において、途中出場ながら2ゴール1アシストを記録した勝利の立役者については、「ジョレンテはどこに配置しても最大限の力を発揮してくれるだろう。あらゆるポジションでプレーできるポテンシャルを持っている。フォワード、サイド、ミッドフィルダー、センターバック…という具合にね」と信頼と期待を寄せつつ、「あの試合の逸話を紹介しよう。
私が、(ハーフタイムに)ジョレンテを投入するために交代させたジエゴ・コスタは、あのとき私に対して激怒していたんだ。そして試合後、私に掴みかかりながら、こう言ってきた。『お前は、運がいいな』と。確かにそうかもしれない、と返したよ」と昔話に思いを馳せた。

 悲願のビッグイヤー初戴冠を目指すアトレティコ・マドリード。そのために、まずは“5年前の再現”を成し遂げ、弾みをつけたいところだ。注目の一戦は、日本時間18日の午前4時にキックオフを迎える。
編集部おすすめ