首位のアルテリーヴォ和歌山と2位のバサラがともに9勝2分2敗の勝点29で並んで最終節を迎えた今季のアストエンジ関西リーグ1部には、劇的な幕切れが待っていた。試合前の時点で、得失点差はアルテリーヴォの+24に対し、バサラは+21。逆転での初優勝に向け、大量得点がほしいバサラは序盤からAS.Laranja Kyoto(ラランジャ)ゴールに迫った。バサラは鋭い動きと個々のテクニックで相手を上回ると、FW松原大芽やMF大矢悠太郎らが次々と好機を演出。しかし「得点しなければいけないのは分かっていたが、ゴール前で丁寧にいきすぎた」(松原)と、なかなかゴールを決めることができず、前半を0-0で折り返した。
一方のアルテリーヴォは17分にFW北野純也が先制点を挙げ、バサラとの得失点差を4点差に広げる。万事休すと思われたバサラだが、土俵際から驚異的な反撃に転じた。後半の立ち上がり、46分、48分、49分と松原が立て続けに得点を奪ってハットトリックを達成。57分にラランジャに1点を返されたものの、62分に松原がこの日4点目のゴールを挙げると、65分にMF小延将大が決めて5-1。この時点でアルテリーヴォと得失点差+25で並び、総得点(アルテリーヴォ31、バサラ33)で上回って優勝の権利を手にした。その後はなかなか追加点を奪えないまま、刻々と試合終了の時間が近づく。事態が再び動いたのはアディショナルタイムに入ってからだった。
92分にラランジャに一瞬の隙を突かれて2失点目を喫し、5-2。それでもあきらめず、バサラは94分に小延がこの日2点目を挙げて6-2としたが、アルテリーヴォも92分に2点目を挙げて2-0の勝利。バサラは得失点差で1点及ばず、初優勝を逃した。
9月2日付で解任された荒川友康前監督の後を受け、U15監督及びトップチームヘッドコーチから昇格した柏木佑介監督は「他会場の状況を見ながらの試合で難しい面もあった。結果は残念だが、ナイスゲームだった。選手も全員、ポジティブに捉えている」と強調。松原は「失点してはいけなかったし、もっと点が取れていればというのもある。切り替えて(出場権を確保している)全国社会人選手権から全国地域チャンピオンズリーグ(地域CL)に勝ち上がりたい」と意気込みを語った。
試合後、集まったサーポーターを前にGK清水圭介は宣言した。「地域CLで勝って、来年はもう一つ上のステージ(JFL)に行きたいと思います」。
バサラは岡崎理事譲りの「あきらめない姿勢」で、高みを目指し続ける。
取材・文=北川信行