だが、その後は浮き沈みの激しい戦いが長く続いている。5~6月には中位まで上がったこともあったが、ここ最近は何とか一桁順位をキープしている印象だった。こうした中、迎えた9月23日のアウェイ鹿島アントラーズ戦。ご存じの通り、鹿島は20日の浦和レッズ戦を1−0でモノにし、首位に返り咲いたばかりだ。その難敵に対し、指揮官は前節・柏レイソル戦から11人全員を入れ替えるという大胆采配を見せた。
「クラブのことを考えた時、今後どう優勝争いをしていくか。シーズン終盤でもありますし、選手がどこまでできるのか、しっかりと試さないといけなかった」とパパス監督は説明。ここまで活躍しきれなかった面々に奮起を求めたのだ。
その一人が本間至恩だ。ご存じの通り、アルビレックス新潟アカデミー育ちの25歳のMFは、10代の頃からテクニカルなドリブラーとして名を馳せていた。新潟時代の2020~2022年はJ2ながら目覚ましい働きを披露。強烈なインパクトを残していた。
その本間が再起をかけ、2024年7月に赴いたのが浦和だった。当時はペア・マティアス・ヘグモ監督体制で、攻撃に特徴のある本間を戦力にしようとしていたが、その矢先に監督が交代。守備強度を重視するマチェイ・スコルジャ監督が再就任すると出番が遠のき、そのまま1年近くが経過してしまった。
苦しむ本間に白羽の矢を立てたのが、セレッソだった。今年3月末にレンタル移籍が決定。4月は限定的な起用となっていたが、6月以降は徐々に出場時間を増やし、現在に至っている。「(後半21分から出た)前節(柏戦)は悔しい思いをしたんで、結果で取り返すところを意識しました」と本人は今季3度目の先発チャンスを最大限生かそうとした。
序盤からアグレッシブな姿勢を見せた背番号19は実際に見せ場を作った。それは前半26分のPKを奪ったシーンだ。本間は喜田陽とともに柴崎岳に激しくプレスに行き、ボールを奪取。
ここまではいい流れだったが、3分後にアッサリと知念に同点弾を浴びたのが痛かった。1−1で迎えた後半も鹿島が鈴木優磨らを投入し、ギアを上げてくる中、セレッソは飲み込まれる形になった。レオ・セアラ、松村優太にゴールを浴び、終わってみれば、1−3の完敗。順位も10位に後退してしまった。本間自身は後半も左サイドでシーズン途中加入の大畑歩夢と絡んで何度かチャンスを作り出してはいたが、決定的な仕事ができないまま。不完全燃焼感が強かった。
「優勝争いをしているチームとは試合の運び方だったり、失点後のメンタリティが違った。前半45分間はセレッソの方が圧倒していましたけど、サッカーは90分のゲーム。最後勝たなきゃいけないので、そこへの運び方が足りなかかった。
新潟、浦和、セレッソと立ち位置やクラブ規模の異なる3クラブを渡り歩いて、本間自身は「勝利への重圧」の違いを微妙に感じている様子だ。「新潟も浦和もセレッソも勝ちたい気持ちはみんな一緒だと思います。ただ、セレッソのサポーターは優しい言葉もかけてくれるし『次、切り替えてやって』と言ってくれる。ただ、時には厳しい言葉も必要かもしれない。僕自身も結果で見せなければいけないと思っています」。
こう語気を強めた本間。確かにキャリアを通じてJ1無得点というのは納得できない結果だ。ドリブル突破やチャンスメークに関しては一級品だと誰しもが認めるところだが、フィニッシュで貢献できなければ、アタッカーとしては怖くない。得点力を極めていくことが、飛躍の重要ポイントと言っていい。
「もう一段階上がるには、結果を残すしかない。
取材・文=元川悦子
【ハイライト動画】浦和vs鹿島