オンラインゲーム大手の株式会社ネクソン(NEXON)が韓国のソウル・ワールドカップスタジアムで、超豪華なレジェンドたちを集め、『2025 ICONS MATCH』を9月13日と14日の2日間にわたって開催。延べ10万人が2日間で集まった。


 このイベントは昨年に続いて2度目の開催。『NEXON』は『Electronic Arts』社からのライセンスを受け、『EA SPORTS FC ONLINE』『EA SPORTS FC MOBILE』という2つのサッカーゲームを韓国で展開しており、まさに「ゲームのようなコンセプト」で、20代を中心としたヨーロッパサッカー好きが詰めかけ、2日目はわずか20分で約6万5000席が完売したというのだから、その盛り上がりはすごい。

 NEXONのイ・ジョンホン代表取締役社長は、「当社のDNAに深く根付く哲学として、革新的で没入感のある方法でプレイヤーの方々とコミュニケーションをし、またリアルとデジタルエンタテインメントの壁をなくして、エンタテインメント体験のあり方を再定義したいと思っております。ICONS MATCHを開催する目標としては、『FC ONLINE』と『FC MOBILE』の情熱をリアルの世界に持ち込んで、ファンの方々にゲームとグローバルサッカー文化をつなぐといった独特なライブ体験をお届けし、NEXONの影響力をもともとのユーザーの方々を超えて幅広く拡大させることです」と、熱量を循環させていくことで、さらに大きなうねりや文化を醸成していきたいと話す。

 実際に満員となったスタジアムの周辺を歩いて回ると、20歳前後くらいの若者の姿がほとんど。友人グループで来る人もいれば、恋人と見に来ている人もかなりいた。その多くが思い思いのレジェンド選手の当時のユニフォームや、最新シーズンのユニフォーム姿だ。イベントに出場していた韓国のレジェンドであるパク・チソンがプロデビューを果たした京都サンガF.C.のユニフォームを身にまとった4人組にも遭遇した。グッズ販売には長蛇の列ができ、キックターゲットやスプリントなどの様々な体験型ブースも並び、それぞれ大いに賑わっていた。

 イ・ジョンホン社長にスタジアムに若者が多く集まっている理由を尋ねてみると、「昨年のICONS MATCHもそうでしたが、選手の皆さんの方が(熱量に)すごく驚いていると思います。実際、今回の招待選手の方々の中には年齢の高い選手もいますし、若いファンだとわからない選手もたくさんいたと思います。でも、実際来ている観客の方々は10代から20代が多い。
選手の方々も、実際にそれを見て、『ここまで若いファンがいるのか』と驚くほどでしたが、これが『FC ONLINE』や『FC MOBILE』といったゲームを楽しんでくれているユーザーもそうですけれども、サッカー好きのファンがもともと描いていた長い夢を叶えてくれる、そういう大会になったんだなと昨年も、今回も考えていました」と、サッカーゲームをプレイする際の“あるある”でもある、夢の組み合わせなどを実際に見られることに対して、サッカーファンが持っている熱量がうまく刺激されたのではないかと分析している。

 その熱量を持っている観客をさらに楽しませる仕掛けも多数ある。そもそもアーセン・ヴェンゲル、ラファエル・ベニテスが監督として登場し、ロナウジーニョ、ウェイン・ルーニー、カカ、イケル・カシージャス、スティーヴン・ジェラード、カルレス・プジョル、リオ・ファーディナンド、ディディエ・ドログバ、ギャレス・ベイル、エデン・アザールなどなど、超豪華面々が並ぶだけですごいが、ピッチ上でもゲーム的な要素を落とし込む。入場やゴール時の演出はさながらワールドカップ決勝のような楽団や花火、特効が満載。また、Day1ではレジェンドたちの1対1、2vs2、3vs3対決やシュートで壁を何枚破れるか、ドローンで落ちてきたボールをビタ止めトラップできるか、角度ない位置からゴールを直接決められるか、といったテレビゲームで登場するような趣向を凝らしたエキシビションイベントで盛り上げるといったエンタメ要素も忘れない。

 これには現地を訪れてイベントを観戦していた元日本代表の前園真聖さんも、「いろいろなシチュエーションを、アイデアを出してやっているのはめちゃめちゃ面白い。やっぱりエンタメですし、その要素がすごく詰まっているのが印象的で、選手入場シーンとかもゲームを再現したりして盛り上げていて。日本でもレジェンドマッチはいくつもやっていますけど、ここまで凝った演出や中身は見てきていない気がするので、すごく参考になると思いながら見ていました」と目を丸くする。観客の熱量についても、「正直、日本のレジェンドマッチを見ても、空席が目立つこともあって、残念だなと思う気持ちがあって。周りを見ると昔のユニフォームを着ていたりとか、世界のサッカーをよく見ているんだなというのがわかりますし、盛り上げ方もよくわかっているという印象」と続ける。エンタメ大国と言われる韓国における空気感やノウハウとサッカーがうまくマッチしているのかもしれない。

 これだけの豪華メンバーがそろったことについては「お金はそこまで多くは使っていないと思いますよ」とイ・ジョンホン社長は笑うが、あながち嘘でもないようで、「大事なのは、まずイベント開催へ支えてくれた『FC』のスタッフの方々の情熱、思い。
彼らが直接選手とコンタクトをした過程があったと思います。もう一つは韓国のファンの方の思いです。多くの韓国のファンが選手たちを待っているのか、期待しているのかをちゃんと届けてアピールしたことがあると思います」と、愚直な姿勢にあると話す。これだけだと開催側の美談的な形になるが、実際に「選手にも感動的に伝わったらしく、もっと積極的に参加したいと直接言ってくれる選手も」いるようで、具体例としてティエリ・アンリの名を挙げ、「去年、もともとはプレーしないことを前提とした契約をしていたんですが、実際この場に来て、すごく盛り上がっている姿を見て、自ら『やりたい、自分もプレーしたい』と話してくれて。情熱的にプレーし、すごく楽しんでいる姿を見ました」と、参加側の熱量に対する相乗効果も大きいようだ。

 NEXONは韓国で創業したが、現在は本社を日本に置いている。イ・ジョンホン社長は、「NEXONという会社にとって、ゲーム事業にとって日本は非常に大事な市場です。日本のユーザーの方々に愛されるように、長い時間、また戦略的に多額の投資をしながら日本市場を狙っていきたいと思っています」と言及。『ICONS MATCH』に日本のレジェンド選手を呼ぶことも熱望しているようで、「もし次回があるのであれば、コンタクトしたい」と話す。

 その先に見据えるのは日本での開催だ。「もし日本で開催する場合、韓国ではいろいろなサッカー団体の方々の協力があってできたので、そういった部分もそうですし、インフラ的にも開催できるよう、いろいろな協力が必要になるかと思います。現実的な問題がいろいろまだあるとは思います」としつつ、「NEXONの目標としては、手掛けているゲームが日本の方に幅広く愛されて、裾野を拡大し、現在韓国で開催しているようなイベントを日本でも開催できるよう、どんどん拡大していくビジョンを持っています。
今後も進めていきたいと思います」と続け、熱量を生み出しながら増幅させ、日本での開催も望んでいるとしている。

【『ICONS MATCH』出場選手】
■FC SPEAR(攻撃的選手中心)
監督:アーセン・ヴェンゲル
スタメン(4-4-2)
GK:ジャンルイジ・ブッフォン
DF:パク・チソン、スティーヴン・ジェラード、バスティアン・シュヴァインシュタイガー、ギャレス・ベイル
MF:カカ、ウェイン・ルーニー、クラレンス・セードルフ、ティエリ・アンリ
FW:ロナウジーニョ、ディディエ・ドログバ(C)
サブ:イ・ボムヨン、ロベール・ピレス、ソル・ギヒョン、エデン・アザール、ク・ジャチョル

■SHIELD UTD(守備的選手中心)
監督:ラファエル・ベニテス
スタメン(3-4-3)
GK:イケル・カシージャス
DF:アレッサンドロ・ネスタ、リオ・ファーディナンド(C)、ネマニャ・ヴィディッチ
MF:カルレス・プジョル、マイケル・キャリック、クロード・マケレレ、ヨン・アルネ・リーセ
FW:マイコン、クラウディオ・マルキージオ、アシュリー・コール
サブ:キム・ヨングァン、パク・チュホ、イ・ヨンピョ、ジウベルト・シウバ、ソル・キャンベル

■主審:ピエルルイジ・コッリーナ

取材=小松春生
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