土壇場でFC大阪が追いつき、1-1のドロー。27日にロートフィールド奈良で行われた明治安田J3リーグ第29節。
リーグで6度目の“生駒山ダービー”は、J2昇格争い生き残りを懸けた意地のぶつかり合いとなった。

 後半のアディショナルタイムの目安とされる11分は過ぎていた。1点を追いかけるFC大阪は右サイドの深い位置に途中出場のMF佐藤諒が侵入してクロスボールを上げる。ゴール前へと頭から飛び込み、90+12分に劇的な同点ゴールを生み出したのは、エースFWの島田拓海だった。

「(選手の中で)一番気持ちが入っていた」と藪田光教監督。島田は「自分は本当に負けず嫌いなので……。最後に得点を挙げられて良かった」と胸を張った。

 2023年にそろってJリーグ参戦を果たしたライバル同士の一戦。立ち上がりから攻勢をかけたのはFC大阪だった。7分、9分と得点機を作ったが、いずれも奈良クラブの守護神、岡田慎司が立ちはだかって得点を許さない。すると、ホームの奈良は44分、左サイドでボールを受けたMF岡田優希がペナルティーエリア外から右足を一閃して先制点を奪った。

 その後は両チームともゴールを奪えないまま時間が過ぎる。
脳振盪による交代もあって、後半のアディショナルタイムは11分と表示された。ダービー独特の緊迫感が続く中、最後の最後に劇的なドラマが生まれた。

 藪田監督は「最後に追いつくことができ、チームの成長が見えた。ただ、勝点1に満足せず、次の試合につなげていきたい」と強調。殊勲の島田も「全然、満足していない。これから勝ち続ければ、J2自動昇格圏に戻れると思うし、それだけの力があるチーム」と力を込めた。

 一方、奈良の小田切道治監督は「終わらせ方はうまくできなかったが、前節にできていなかったことはできた」と前を向いた。

 両クラブの本拠地を隔てるのは、標高642メートルの生駒山。紀元前663年、この地で東征途上の神武天皇と長髄彦が激戦を繰り広げたとされる。ある意味、日本で最も由緒があると言えるかもしれないダービーはこれで、FC大阪の2勝3分1敗となったが、すべて引き分けか1-0で決着がついている。これからも、互いにとって負けられない試合となるのは間違いない。

取材・文=北川信行
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