「ピースウイングでゴールを取ると、コールアンドレスポンスで自分の名前を叫んでくれるので特別です」。今季初ゴールを決めたFW李誠雅がうれしそうに話した。
サンフレッチェ広島レジーナは27日、SOMPO WEリーグ第8節でセレッソ大阪ヤンマーレディースをホームに迎え、1-0で4試合ぶりの勝利を収めた。
スタメンのリストに背番号30。李が今季初先発のチャンスをつかんだ。開幕から試合のメンバーに入っても終盤での出番が多く、これまで出場した6試合での合計プレー時間は約65分のみ。今季初のスタメン入りに、「ワクワクしたし、プレッシャーよりも早く試合がしたいと思いました」と心躍らせていた。なぜなら、このチャンスのために取り組んできた自負があったからだ。
「シーズンを通しても、試合の90分間を通しても、状況は常に変わっていくものだし、いい準備をした選手にボールも転がってくると思うので、そこで一喜一憂せずに毎日ブレずにやることが大切だと感じていました。絶対に自分の出番がくると思っていたので、そこに向けていい準備ができていたと思います」
だだ、起用されたポジションは本職のフォワードではなく右サイドハーフ。赤井秀一監督は試合後の会見で、「なかなか出る機会が少なかった中で常に準備をしてくれていました。今日は相手のシステムが予想と違いましたが、背後を取る動きが非常に重要になってくると思っていたので、外から相手の背中を取りに行くのに長けていて、ゴールに向かえる選手の1人だったので起用しました」と説明した。
相手布陣はセンターバック(CB)3枚の5バックを予想していたが、実際は4バックだった。それでも、「焦ることなくやれた」という李は、「楽しさもあったし、癖でFWのような動きをする時もあったけど、監督からは裏をガンガン取っていけっていう指示でした。想定外のところもあったけど、自分の良さは出せたと思います」と話した。
自分なりに右サイドで奮闘していた中で、38分にセットプレーで点取り屋としての見せ場が訪れた。敵陣中央のFKでMF小川愛が鋭いクロスを入れると、ゴールに背を向けていた李が頭で後方に流してネットを揺らした。
「そこまで(後方を)はっきり見えていないけど、どういうそらし方だったら入るのか、その感覚は攻撃の選手だったら多分みんな持っていると思います」とストライカーの経験が光ったシュートだったが、「愛ちゃんがスピードのあるボールをくれたので、バックヘッドしやすかったので、それにつきると思います」とアシストを称えた。
今季初スタメンで初ゴール。周りからの期待に結果で応えた。持ち前の勝負強さを発揮した背番号30は、「ここで運が転がってくるか転がってこないか、という世界だと思いますし、それを呼び込めたのはいろんな人のサポートがあって踏ん張れたからなので、その方々のおかげだと思います」と感謝を口にした。
先制点を挙げた李は61分までプレーし、「課題だらけのサイドハーフデビュー戦でした」と振り返った。「サイドでボールを受けることが今まであまりなかったので、そこでロストしてしまったり、もったいないシーンがたくさんありました」と課題を見つめ、「他の選手と同じプレーというよりは、自分の長所を活かしたプレーを模索していきたいです」と右サイドでも自分らしさを追求していく。
赤井監督は李のパフォーマンスについて、「まず結果を出せたところは素晴らしかったと思いますし、守備の部分でもハードワークして頑張っていました」と称えつつ、「ただ、持ち味であるクロスに対して中に入っていく部分は、もっと要求していきたいと思います」と指摘した。
広島は追加点こそ決められなかったが、李の先制点を守って4試合ぶりの勝利。ホームでは8月17日の第2節INAC神戸レオネッサ戦以来の白星となった。この日、29歳となったFW上野真実の誕生日とともに、勝利の喜びをサポーターたちと分かち合った。
李は、「広島でプレーしていて、WEリーグの中でも1番のスタジアムで、1番のサポーターだと思うので、みなさんの前でゴールを決めることはとてもうれしいし、もっともっと量産したいと感じました」とさらなる活躍を誓った。
今季初スタメン初ゴールは最初の一歩に過ぎない。次のゴールに向けて、李はまたブレずに準備を続けていく。
取材・文=湊昂大