広島は試合の立ち上がりから主導権を握って攻め続けると、19分に左CKでMF東俊希のクロスをDF荒木隼人が頭で合わせて先制に成功した。
87分に途中出場したMFトルガイ・アルスランは、「これだけ多くのチャンスを作っておきながら1点っていうのは寂しいし、やっぱり勝たなきゃいけなかった試合だと思います」と振り返りつつ、「ただ、試合内容を見ても分かる通り、我々はどんな相手でもやっていける、この大会でいい結果が得られるという自信にもなったゲームだと思います」と前を向いた。
アルスランがホームのピッチに帰ってきた。35歳のドイツ人MFは、3月2日にホームで行われた明治安田J1リーグ第4節の横浜FC戦で右ひざを負傷。4日後の3月6日には治療のためドイツへ一時帰国し、約5カ月のリハビリを経て8月8日にチームに合流していた。
9月16日には敵地で行われたACLEリーグステージ第1節の古巣メルボルン・シティ戦に83分から途中出場して戦線復帰を果たし、同27日のJ1第32節・アビスパ福岡戦でも78分から途中出場していた。
復帰後初のホーム戦となった上海海港戦では、同点に追いつかれた直後に途中出場。すると、さっそくゴールへと迫った。89分、左サイドで味方とリズムよくパスをつなぎ、最後はペナルティエリア中央に切り込んでシュートを打ったが、相手GKに防がれた。さらに、後半アディショナルタイムには右CKでフリーになりヘディングシュート。
それでも、アディショナルタイムを含めた約10分間のプレーでクオリティを垣間見せ、「コンディション的には問題なくできているし、かなりいい状態になってきている。残念ながらゴールこそ取れなかったけど、いつか近いうちにゴールが取れるという自信にもなりました」と完全復活への手応えを得た。
ホームでの試合は約7カ月ぶり。長期離脱を乗り越え、紫の歓声と拍手を受けながらピッチにピッチに立ったアルスランは、「大きなケガをして帰ってこれないんじゃないかと思っていた人たちが多い中で、自分はこうやって戻ってきたんだぞっていうメッセージにもなったと思いますし、本当に多くのことをしてくれているファン・サポーターのみなさんやクラブに対して、何か1つでも返していきたいです」と恩返しを誓う。4冠の可能性を残す広島に頼もしい選手が帰ってきた。
取材・文=湊昂大