Jリーグは7日、裁定事案に関するメディアブリーフィングを実施。2025年7月5日(土)に行われた『明治安田J1リーグ』第23節の“横浜ダービー”と“大阪ダービー”におけるサポーターの違反行為に対するクラブへの対応とリーグの方針などを公表した。


 横浜FC横浜F・マリノスによる“横浜ダービー”において、一部の横浜FMサポーターによる試合運営管理規定の違反行為が三ツ沢公園内で確認された事案に対しては、調査結果を踏まえて「横浜FMを厳重注意とし、さらなるサポーター管理の厳格かつ慎重な体制構築と、違反行為者に対する法的手段による責任追及を強く求めるものとする」ことを決定。横浜FMは取りうるべき最大限の次善措置を講じており、事案発生の予見は困難で、被害者的な側面もありながら、違反行為の危険性や悪質性と、それが周囲に与えた影響に鑑みた裁定であることも付け加えられた。

 また、セレッソ大阪ガンバ大阪の“大阪ダービー”で発生した、G大阪サポーターによる試合運営管理規定の違反行為に関しては、調査結果を踏まえ、「G大阪を厳重注意とし、サポーターコミュニケーションの強化、運営体制の見直し、集団での移動の制限を強く求めるものとする」ことを決定。クラブの対応については、サポーター団体に対する一定の対応はとられていたとしつつも、関係性の形骸化や対応の不十分さなど複数の要因が重なり、今回の事案を未然に防げなったと指摘。ビジタークラブとして「サポーターに秩序ある適切な態度を保持させる義務」違反に該当するとの見解を示した。

 そして、横浜FMサポーターによる極めて悪質な危険行為に対して憾の意を示すと共に、クラブが最大限の対応を講じながらも、悪質性の高い行為によって運営上の重大な被害や不利益が生じるケースにおいて、Jリーグ規約の適用範囲のみでは安全な試合環境への秩序を維持することが困難と認められる場合、「危険行為を行なった個人や団体に対する法的措置も辞さない方針」を決めていることも強調。横浜FC、横浜FMと協議の上、両クラブが中心となって弁護士等と連携し、法的手段を視野に入れていること。その姿勢をリーグとしても支持し、とり得る最大の支援を講じていく方針を示した。

 今後の再発防止に向けては、今回の事案発生と対応方針の見直しを9月の実行委員会で全クラブに共有。近日開催の運営担当者を対象とした会議にて、セキュリティ対応マニュアルの見直しを行うべく取り扱う予定であることも報告されている。

■Jリーグにおける今後の対応方針
1.違反行為者へのクラブの法的手段による責任追及を、Jリーグとして支持する旨を表明する。
2.クラブが法的措置を検討するにあたり、Jリーグが行った調査結果を共有し、追加調査が必要な場合は本件調査に加わった外部弁護士等と連携する。

3.今後、重大なサポータートラブルが発生した場合に備え、クラブが実行者に対し法的措置を講じる場合にかかる経済面の支援制度や、来場者の生命や身体が脅かされるような事案が発生した場合の関連制度の在り方に関し検討を行う。

■横浜FMサポーターによる試合運営管理規定の違反行為に関する報告
▼ 調査に基づく主な認定事実
(1)サポーターの主な試合運営管理規程の違反行為
・試合前に場外において、横浜FMサポーターが行進隊列を組み、侵入が禁止されている規制線をめがけて行進した。隊列は規制線を超えたうえ、キッチンカーが並ぶ観戦者が多く存在するエリアに向かい、隊列内の中ほどから横浜FMサポーターが発煙筒とロケット花火を複数回発射または投げ入れた(以下、違反行為)。
・投げられた発煙筒のうち1本がキッチンカー付近の看板を直撃し、ロケット花火がスタッフの顔や肩に当たり衣服を損傷するなどした。
・違反行為はタオルマフラーや目出し帽により顔が隠れた状態で行われ、実行行為者の特定が困難であったため、スタジアム内に危険物が持ち込まれる可能性に鑑み、すべてのビジター側の来場者に対し緊急的に手荷物検査が実施された。
・事案発生後、来場者の安全確保のための状況確認や安全確認、警備体制の強化、緊急的かつ厳重な手荷物検査などの対応を講じたことから、開門時間が大幅に遅延し、ビジター側の来場者の入場がキックオフ後となった。
・違反行為は予め発煙筒やロケット花火を準備して行われた計画的なものであり、さらに事情を知らないサポーターを隊列に巻き込んで大きな集団を形成し、その中から自らの顔を隠すなどして巧妙に行為者の特定を防ぎながら敢行された。

(2)横浜MF(ビジタークラブ)の対応
・日頃より主要サポーター団体のリーダー各々との対話の機会がもたれ、当該試合前はチームとしての戦況が芳しくない状況下でダービーマッチを迎える実情をふまえた対話や確認が行われていた。
・試合当日、当該サポーター団体に帯同するスタッフを倍増して臨む。
・事案発生後、来場者の安全確保のための状況確認や安全確認、警備体制の強化、緊急的かつ厳重な手荷物検査などの対応、チケット払い戻し方針の協議を初め通常の試合運営に移行するために求められる対応にビジタークラブとして協力した。
・事案発生後、行進隊列に関わった4団体の活動禁止とサポーター73名の無期限入場禁止措置を講じた。
・緊急的な手荷物検査によってキックオフまでに入場が間に合わなかったビジター側の来場者に対し、チケット代金の返金を実施。
さらに再発防止策として、一定期間の横断幕、旗、応援グッズの使用を禁止し、現在は横断幕の事前申請制を採用している。

▼ リーグによるクラブへの対応
上記を含む調査結果をふまえ、横浜F・マリノスを厳重注意とし、さらなるサポーター管理の厳格かつ慎重な体制構築と、違反行為者に対する法的手段による責任追及を強く求めるものとする。

■G大阪サポーターによる試合運営管理規程の違反行為に関する報告
▼ 調査に基づく主な認定事実
(1)G大阪サポーターの主な試合運営管理規程の違反行為
試合前、場外にて以下の行為が発生。
・ホームクラブの観戦ルール&マナーの禁止行為「集団での移動」に該当する隊列による行進、隊列による進行禁止エリアへの侵入や柵破壊行為を含む、複数の試合運営妨害行為
・G大阪サポーター複数名が相手クラブサポーター1名へ詰め寄り、そのうち1名が相手クラブサポーターを押し横転させるなどの威嚇・暴力行為

(2)G大阪(ビジタークラブ)の主な対応
・事前にサポーター7団体を束ねるリーダーと連絡をとり、決起集会等の特別な対応は行わない旨確認。
・試合当日、G大阪サポーター団体が乗り合うとの情報を得ていた公共交通機関にスタッフが同乗しホームクラブへ情報提供のうえ、スタジアムまでの移動に帯同し状況を注視した。
・試合前、場外で上記(1)に記す事案が発生し、隊列の2か所でもみ合いや遮蔽柵を蹴るなどの違反行為が生じたが、連携不足により一方への対応が出遅れ十分な人数がかけられず、収束に時間を要した。
・事案発生後は、実行者の特定を行い、無期限入場禁止処分を含むサポーターの処分が行われている。

▼ リーグのクラブに対する対応
上記を含む調査結果をふまえ、G大阪を厳重注意とし、サポーターコミュニケーションの強化、運営体制の見直し、集団での移動の制限を強く求めるものとする。
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