プレミアリーグで長年審判を務めているアンソニー・テイラー氏が、審判業の難しさを吐露した。10日、イギリスメディア『BBC』が伝えている。


 プレミアリーグの審判として17シーズン目を迎えているテイラー氏は、2019年から同リーグに導入されたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が非現実的な期待を生み出してしまい、審判にとっては厳しい状況になっていることを主張した。

 テイラー氏は「プレミアリーグのフットボールを取り巻く監視、分析、議論の激しさは、誰もが完璧さを求めていることを意味している。だが、現実には完璧などは存在しない」ことを強調しながら、VARの影響力について次のように語った。

「VARは、誰もが抱える問題を完璧に解決し、ユートピアになるという期待をもたらした。しかし、実際はそうした人たちは大きく的外れだった。ある週は『VARに関与させすぎてはならない』と言うが、次の週では『なぜVARは介入しなかったんだ?』と言っていたりする」

「人々は本当に自分が何を望むのかを決める必要がある。ある週に『試合の流れを壊すので介入してほしくない』と言っておきながら、次の週には『VARが介入しないのは恥ずべきことだ』などとは言ってはならない。時には冷静になって、テクノロジーの目的をもう少し論理的に考える必要があると思う」

 また、2023年に行われたヨーロッパリーグ決勝のセビージャとローマの試合後には、家族と空港を歩いていた際にローマのサポーターから非難を浴びる事態となっていたことにも初めて言及したテイラー氏は「本当にこれでいいのか?」と考える時もあることを明かした。

「虐待という点ではこれまで経験した中で最悪の状況だった。私にとって、あれは大きな失望、フラストレーション、そして怒りといったものだった。なぜそれが許容されるのか、私には分からない。きっとあの人たちも、誰かに振り向かれて自分や自分の子供にそんなことを言われるのは嫌だろうからね」

「そもそも家族と一緒に旅行したのは間違いだったのかと反省させられることでもある。
それ以来、彼らは一度も試合を見に来てはいない」

 苦しいことも体験しているテイラー氏だが、「つまるところ、世界最高の仕事の一つだよ。世界で最も楽しみなリーグのまさに中心にいるのだからね」とプレミアリーグで笛を吹く楽しみも口にしながら、いつまで続けられるかはわからないとも語った。

「正直言うと、わからない。来週で47歳になる。このレベルで自分よりもずっと若い人たちを追いかけ回すにはかなりの高齢ではある。今はただ、来年アメリカで開催されるワールドカップで2つの審判団を編成できるようにすることに集中している」
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