11月唯一のホームゲームで3000人を超える観客の期待に応えられなかった。DF藤生菜摘は試合後、誰よりも悔しそうにうつむいていた。


「先制点を取れず、結果としてセットプレーとカウンターでやられて難しい展開になってしまって、自分たちの弱いところが出たと思います」

 サンフレッチェ広島レジーナは8日、SOMPO WEリーグ第13節でマイナビ仙台レディースをホームに迎えて0-2で敗戦。リーグ戦8試合ぶりの黒星を喫して6位に後退した。

「お互い良さを消しながら自分たちの良さを出すゲームだった」と赤井秀一監督が振り返ったように、特に前半はこう着状態が続いた。レジーナは最終ラインでボールを動かしながらビルドアップを試みていたが、中盤で相手にカットされるシーンも多く、思うように攻撃の形を作れなかった。

 左サイドバックの藤生もビルドアップで果敢にトライする姿勢は見せたが、「相手の右ウイングの矢形(海優)さんが出てきていたので、自分からボランチには(パスを)出せない部分があった」と苦戦してチームを前進させられず。「そこでボランチがピックアップしてくれたり、自分が1枚外して運べることでもう1個前でプレーできたと思いますし、縦パスが入った後のサポートの位置や速さといった予測のところで、自分たちが相手を上まれていなかったと感じました」と悔しさを滲ませ、「ピッチ内でもっと話して改善できれば、自分たちの良さが出せると思うので、そこは今回の反省を次に生かしていきたいです」と努めて前を向いた。

 なでしこジャパンにも選ばれた経験を持つ矢形とマッチアップする機会が多く、「逆サイドから入ってくるボールを矢形さんが狙っているところは相手のストロングだったので、そこは(GK藤田)七海さんと声をかけながらできたのは良かったと思います」と相手の得意な形では得点を許さなかったが、「セカンドボールのところは相手の嗅覚の方が上で、自分の反応が遅くなっていたので、そこをもっとアラートにして、ボールを自分たちのものにしないといけなかったです」と課題を挙げた。

 後半は広島が攻勢に出て決定的なシーンも作ったが、得点を奪えないまま終盤を迎えると、逆にセットプレーとカウンターから2失点。藤生は2点差を追う87分にペナルティエリア前でボールを拾うと、様々な選択肢があった中で「まず1点取って勢いを持たないといけなかったから、そういう時に自分でゴールを切り開きたかった」と左足に思いを乗せたが、渾身のシュートはGKにセーブされた。

 広島は7試合無敗だったが、2勝5分と勝ちきれない試合が多かった。10月13日以来のホームゲームとなった今節は、スタジアムに3523人が入ったが、熱い応援を続けたホームサポーターに得点も勝利も届けられなかった。藤生は試合後、「今日は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と悔し涙を流しながら心境を口にした。


「勝てていないけど、それでもいつも応援してくれるサポーターのみなさんがいてくれて、そこに対して自分たちはピッチでしか示せないので、もっとこのエンブレムを背負って戦う覚悟とか、試合に出られていないメンバーのためにという思いを持って、自分自身もっとやっていかないといけないと思いました」

 この悔しさを活かすためにも、「1人じゃないですし、いろんな仲間が支えてくれますし、ピッチで示してくれる仲間がいるので、それに自分もついていきたいです」と仲間とともに切り替えてトライを続けていく。

「今日負けたことを意味のあるものにするために、自分たちはもっとやらないといけないと思いますし、これだけホームで応援してくれるサポーターのためにも勝つしかないので、全員でまた1からやっていきたいです」

取材・文=湊昂大
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