宮崎の攻撃は巧みだった。今季のJ3で2番目に失点の少ないFC大阪の守備の特徴は、局地戦での鋭い寄せ。ならば、ピッチを幅広く使って「強烈な圧」をかわせばいい。素早くボールを動かして相手の守りを無力化すると、左サイドのMF井上怜、ボランチの奥村晃司を中心にゴール前に次々とアーリークロスを放り込み、好機を演出した。
29分の先制点も井上のアーリークロスから。ゴール前に上がったボールをFC大阪のDFがクリアミスし、オウンゴールを誘発した。「アーリークロスは今回準備してきたこと。狙いどおりだった」と大熊裕司監督。同42分にはFW吉澤柊が放ったロングシュートが決まって2-0で試合を折り返す。吉澤は「距離は遠いと思ったが、胸トラップが決まったので。キャリアの中で一番のゴール」と胸を張った。
後半に入って、ドリブラーのMF野瀬龍世を投入するなどして打開を図ったFC大阪の反攻を、体を張った守りでしのいだ宮崎。
レギュラーシーズンで25得点を挙げたJ3得点王のFW橋本啓吾を体調不良で欠きながら、宮崎は全員でJ2昇格を勝ち取った。「誰が出てもやることは変わらない。必ずチャンスはあると思っていたし、いつもどおりできた」と武。大熊監督は「我々が積み上げてきたクオリティーを出せた」とうなずいた。
宮崎は2023年12月に、不動産運用のいちごの全額出資子会社、宮交シティ(宮崎市)が経営権を取得。昨季は下位に低迷したが、J1のセレッソ大阪や横浜F・マリノスでアカデミー部門の整備などを手掛けた宮本功社長のもと、着実な成長を示した。
宮本社長とともにセレッソ大阪から活躍の場を移した大熊監督は「宮崎県や市町村に助けられ、感謝しかない。宮崎県のサッカーをテゲバジャーロが引っ張っていきたい強い思いがある」と言った。来季は一つ上のステージで、その思いを実現する。
一方、敗れたFC大阪は本拠地の東大阪市花園ラグビー場から北西へ約200km離れた地で、0-4の完敗。藪田光教監督は「リーグ戦の終盤から勝点3を取らないといけない試合が続き、勝ちにこだわってプレーしてきた。しかし、宮崎に圧力、気持ちで上回られた」と絞り出した。
前半で2失点。ハーフタイムに選手を落ち着かせ、後半は反攻に転じたが、最後まで好機を得点に結びつけられなかった。試合後には「この苦しい思い、経験がこれからの人生で生きる。この悔しさを存分に悔しがってほしい」と選手たちに伝えたという。指揮官は「FC大阪が歴史を変えていくきっかけが、今日の試合だったというようにしていきたい」と雪辱を誓った。
取材・文=北川信行

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