2023年夏に加入した市瀬は、対人の強さやロングフィードの武器を活かして、すぐに攻守にチームの要となった。昨シーズンも吉田恵前監督のもと、主力の1人としてWEリーグで20試合に出場。リーグ2位タイの14失点という堅守やクラシエカップ連覇に貢献し、「2024-25 WEリーグ 優秀選手賞」の1人にも選ばれ、7月のE-1選手権ではWEリーグ組主体の日本代表に招集されてデビューも飾った。
昨シーズン終了後には、レジーナ創設時から選手たちを引っ張ってきた近賀ゆかりさん(現・チームアンバサダー)とGK福元美穂(現・岡山湯郷Belle)が退団したことで大きな転換期を迎え、指揮官も赤井秀一監督に変わって新体制となった。新生レジーナで副キャプテンに初就任した市瀬は、「海外組もいるA代表入り」、「ベストイレブン」、「リーグ最小失点」という個人目標を掲げ、気持ちを新たに勝負のシーズンを迎えていた。
しかし、シーズン開幕前後にキャプテンのDF左山桃子、DF呉屋絵理子、MF瀧澤千聖といったチームの中心選手が相次いで長期離脱。さらに、負傷者や体調不良者が続出し、試合ごとにメンバーが変わり、結果も伴わない難しい時期もあった。その中でも、市瀬は今シーズンの公式戦19試合を終えてチームで唯一全試合にフル出場。負けん気の強い背番号5がピッチで戦い続け、力強いリーダーシップを発揮している。
今シーズンの広島は赤井監督のもと、攻守にアグレッシブなサッカーを掲げ、トップ3入りを目標としてシーズンに入ったが、WEリーグでは13試合を終えて4勝6分3敗で6位。目標とする3強を相手には1勝2分と善戦したが、それ以外では勝ちきれない試合が多かった。
ただ、カップ戦は快進撃を見せていて、史上初の3連覇を狙うクラシエカップはINAC神戸レオネッサとちふれASエルフェン埼玉を倒して2連勝の好スタート。皇后杯では、日テレ・東京ヴェルディベレーザやセレッソ大阪ヤンマーレディースを破り、元旦に国立競技場で開催される決勝の舞台に初めて駒を進めた。
公式戦5連勝と調子を上げて迎える2025年のラストマッチは、12月20日にホームのエディオンピースウイング広島(Eピース)で開催されるSOMPO WEリーグ第14節のノジマステラ神奈川相模原戦。Eピースでクラブ初のクリスマスイベントも開催される注目の一戦だ。
久々のホームゲームでサポーターとともに年内最終戦を勝利と笑顔で飾るべく、新たな紫のリーダーは燃えている。
インタビュー・文=湊昂大
――まずは今シーズンのこれまでの戦いを振り返っていかがですか?
市瀬 キンさん、フクさんがいなくなってレジーナはどうなるんだろうかと心配をされていたと思うんですけど、自分は不安よりも、2人が教えてくださったことや見せてくれた背中を表現できるシーズンだと思っていたので気合いはすごく入っていました。(赤井)監督から副キャプテンを任されたときに、昨シーズンよりは責任が全然違うなと思いながら準備していましが、エリさん、モモさん、チセが短いスパンで怪我をして、いろんな不安も多かったですし、うまくいかないことやいろんな壁にぶち当たりました。でも、みんなが本当に目指すところ、優勝や3強入り、リーグカップ戦や皇后杯のタイトルという軸はブレずにやってこられたと思いますし、それが今だと、勝ち進んでいる皇后杯につながっていると思います。
――キャプテンの左山選手などチームの中心選手の離脱によって、リーダーシップを取る意識は変わりましたか?
市瀬 みんなを引っ張れるように声をかけるところはすごく意識はしていましたが、その中でも勝てなくて、なかなか思うようにチームをまとめられていないなと思っていました。そのときはキンさんやフクさん、エリさん、モモさん、チセみたいなチームを引っ張ってきた人たちみたいに自分がなろうと思い過ぎていて、自分らしさを少し忘れていたなと思いました。でも、ホームでセレッソに勝てて(WEリーグ第8節)、やっとここからだと思えた瞬間に少し肩の荷が下りたというか、自分らしくチームを引っ張っていきたいと思うように変わりました。
――チームを引っ張る上で「自分らしさ」はどういったところに表れていると思いますか?
市瀬 難しいな……。
――「嫌われてもいい」と思えるようになったのは何がきっかけでしたか?
市瀬 自分がみんなを引っ張れていないなと思っていた時に、急に選手の数人が『いつも引っ張ってくれてありがとう』って声をかけてくれたことでした。そう思ってくれている人もいるんだとそこで思えて、それがすごく救いでした。そこからチームが勝てればそれでいいと思い始めて、自分らしくプレーできるようになりましたし、勝てるようにもなったかなと思います。
――同じポジションでキャプテンの左山選手とは、どんなコミュニケーションを取っていますか?
市瀬 モモさんは練習を全て見られているわけではないし、試合前の雰囲気とかわからないところを共有したり、自分がまだまだ足りないなって思うところを相談したり、モモさんからもアドバイスもらったりして、状況を伝え合っています。あとは、モモさんだけではなく、リハビリの3選手は本当に弱音を吐かなくて、楽しそうにリハビリをしていて、復帰するために、チームに貢献するために、今自分がやれることをすごく一生懸命やっているなと思っています。遠征に行く前に、みんながメンバー外の選手とハイタッチしてからバスに乗るんですけど、本当に笑顔で心から『頑張れ! ケガするなよ!』って言葉をかけてくれて。自分がもし今大ケガをして、あんな言葉をかけられるかな、あんな顔で言えるのかなって考えたら、本当にすごいなと思うので、だからこそ、ケガ人の選手の分も頑張りたい気持ちはすごくあります。
――毎試合のようにメンバーが変わりながらの戦いで、思うような結果も出ない難しい時期もありました。
市瀬 もう本当に試合ごとに組む選手が変わったり、ゴールキーパーが変わったり、両サイドの選手が変わったりしたので、積み上げというよりも、チーム全員で共通認識を作っていくところはすごく新鮮でした。
――今季はチームで唯一公式戦全19試合にフル出場中です。個人としては充実したシーズンになっていると思いますが、どう捉えていますか?
市瀬 まず個人的にケガをしていないのは100点です。リーグ戦ではすごく悔しい思いをしたので、それが皇后杯にいい影響を与えられているなら、今までの負けは無駄じゃなかったなとは思います。でも、まだ何も得ていないですし、優勝もしていないので、ここからまたやってやろうという気持ちがすごく強いです。ここからカップ戦のタイトル獲得やリーグ戦も負けなしでいければ、シーズンが終わったときに達成感はあると思いますけど、まだまだ何も得てない状況なので満足とは言えないです。
――今季の個人目標として「海外組もいるA代表入り」、「ベストイレブン」、「リーグ最小失点」を掲げていましたが、シーズン半分を終えて、どう捉えていますか?
市瀬 日本代表はE-1で選出してもらって、すごくワクワクした気持ちがあって、絶対に爪跡を残してまた呼ばれるようにやろうと思っていました。そういう強い気持ちがあった中で、出場した試合では得意なロングフィードでミスしたりして思うような爪痕が残せなかったですし、それきり代表に呼ばれていないので、A代表はまだ遠いのかなと思っています。でも、その反面、皇后杯やクラシエカップ、リーグ戦で(自分のプレーを)見せ続けたら可能性はあると思うので、そこは全く諦めてないですし、プロサッカー選手として目指すべき場所だと思っているので、変わらず目指してやっていきたいです。ベストイレブンのところも同じように、これからの試合で相手から脅威になる選手になって、リーグ最小失点に向けても変わらず体を張って戦っていきたいです。
――リーグの失点数は13試合を終えて昨季の14失点に並びましたが、どう受け止めていますか?
市瀬 昨シーズンはメグさん(吉田前監督)のもとで守備をすごく重視してトレーニングしていて、リーグ最小失点を個人的に目標としていた中で昨シーズンは失点数が2位だったので、今シーズンこそと思っていました。監督が変わってより攻撃を重視した戦術や練習になりましたが、やっぱりセンターバックとしては失点数が多いのは責任を感じますし、防げた失点がすごく多いので、昨シーズンはあれだけやれていたのにという悔しい気持ちもあります。でも、まだまだ巻き返せるチャンスはあるので、あまり数字にとらわれず、後半戦は失点0でいけたら最高かなと思っています。
――リーグでは現在6位に位置していて、トップ3に入るという目標をどう捉えていますか?
市瀬 3強に対してはすごく強い気持ちを持って立ち向かえている印象はありますが、自分たちより下の順位のチームに対して、3強にできていたことができなかったり、いつも通りの自分たちのプレーが出せなかったり、守備も攻撃もクオリティが下がってしまうところがすごく引っかかっています。メンタルの部分だと思いますが、そこは技術より簡単に変えられると思っていますし、逆に言えば、プロとしてメンタルの浮き沈みがあってはいけないと思っているので、後半戦はメンタルを強く持って戦っていきたいです。
――トップ3以外と対戦するときのメンタルはどういったところが課題と捉えていますか?
市瀬 一番は相手に合わせてしまうようなサッカーをしてしまうとすごく感じています。もちろん、負けたいとか引き分けでいいやと思っている選手はいないですけど、3強に対しては代表選手も多いので、『やってやる』っていう気持ちが強いですし、隙が出たらやれるなっていう締まった空気はすごく感じますが、3強以外のチームに対してはその空気がないように感じます。でも、センターバックとして自分がもっと声をかけないといけないと思いますし、自分がプレーで見せながら伝えることができたら、もっと違っただろうなという反省もあるので、後半戦は変えていきたいです。
――どの試合でも多くの広島のサポーターがスタジアムに駆けつけています。試合後には、負けた時でも激励の声が上がっていますが、それをどんな思いで聞いていますか?
市瀬 勝てなかった自分に対しての苛立ちや悔しさはすごく感じます。アウェイでもホームなんじゃないかって思うぐらいたくさんのサポーターの方が来てくれていますが、勝てなくて内容も不甲斐ない試合だった時でもレジーナのサポーターの方々は『次だよ、次』っていうポジティブな声をかけてくれます。もちろん、それに甘えてはいけないですし、甘えるつもりもないですけど、そういったサポーターの方の気持ちを裏切らないように戦わないといけないですし、負けた試合は自分にもチームにも不甲斐なさをすごく感じます。
――逆に勝った時のチームの雰囲気はとてもいいと思います。
市瀬 人のこと言えないですけど、みんなほんとにはっちゃけすぎってぐらい喜びますよね(笑)。でも、(皇后杯準々決勝で)ハリマ(ASハリマアルビオン)に勝ったとき、すごく印象的だったのが、前だったらめっちゃ喜んでいたのに、終了間際の失点や内容にこだわれなかったので、勝ったのに全然みんな笑っていなくて。でも、それはもっともっと強くなれるなっていう確信が強まりました。
――年内最終戦は約1カ月半ぶりのホームゲームですが、意気込みを教えてください。
市瀬 このスタジアムで勝つことがどれだけ特別かを自分もプレーしていて感じていますし、ファン・サポーターのみなさんの声援がすごく耳にも入ってきて、やっぱり力になります。個人的にはヘディングやロングフィードで満足いくプレーができた時にスタジアムが沸くのが一番好きです。次のホームゲームは大きい試合だと思っていて、ホームで勝って皇后杯の決勝へ行けるのはすごく気持ちも上がるので、絶対に勝ちたいです。
――Eピースで初のクリスマスイベントも開催される試合です。
市瀬 WEリーグのチームの中でも一番ぐらいファンを喜ばせたい気持ちが強いクラブだと感じているので、自分もクラブに乗っかるだけじゃなくて、もっと自分から発信していきたいですし、クラブのその熱意に負けないプレーを見せたいです。この試合もクラブのみなさんが集客に向けてすごく動いてくれているので、ファン・サポーターのみなさんには素敵なクリスマスプレゼントを届けたいです。
――年内最終戦はファン・サポーターの方にどんな1日にしてほしいですか?
市瀬 たまにSNSで「初めてレジーナの試合を見に行ったけど最高だった。

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