この試合、徳島市立はこれまで戦ってきた4-4-2のシステムではなく、3-4-2-1を採用。早実対策としてシステム変更が奏功し、6大会ぶりの選手権初戦での白星を手にした。このシステム変更、徳島県予選決勝後にチャレンジしたやり方だったとのことで、「(県予選)決勝が終わって、こういうのも必要になるよねと言って、ちょっとだけ練習はしていたんです。ただガッツリ練習していたわけでもないし、どこで話も漏れるかわからないので。最終的に昨日も本当はいつも通りの4枚で行こうと思っていたんですが、何パターンかちょっとずつでもいいから試してみたら、案外システム的にもハマっちゃったので。選手に聞いても、3枚の方がもしかしたらやりやすいかもしれない」と、河野博幸監督が振り返るように、水面下で種をまいておいた“秘策”となった。
こういった戦い方の選択をしたのも、河野監督をはじめ、選手たちも口をそろえて「僕たちはあまり技術なくて。見て分かる通り速くてどんくさくて」(逢坂翔雅)と言うように、徳島市立がこれまで披露してきた技術力の高さを生かしたゲーム運びから、「3年生は技術的に高くないですが、運動能力が高い。2年生は逆に運動能力よりも技術的に上手な子が多いので、噛み合ってやれれば、また違ったことができるのでは、とチームを立ち上げた」(河野監督)、これまでの良さを残しつつ、現実路線にも目線を向けた戦いを選んだところにある。
河野監督が「去年、一昨年の先輩たちも能力は高かったですが、自分たちのやりたいことやろうとして、それができなくなった時にうまくいかなかった。チームの立ち上げから長いボールも含めていろいろな対応ができるようになろうというところから始めた」と今年のチームづくりを振り返れば、先制点を挙げた芳田翠も、「去年まではつなぐサッカーとかで、個はあったんですけど、そういうところでやられてしまったので、簡単にやって点を決めるサッカーを意識していました。今年は一年通して簡単にやるのを意識していたし、一年通してやってきたサッカーだと思います。
もちろん「(手応えは)最初の方は本当にになくて。めっちゃムズイやんみたいな。練習試合とかでもうまくいっている感じではなく、攻められて。4-4-2で3-0で勝っていたのに、3バックに変えたら4点取られたり」(逢坂)と、3バック導入への戸惑いも見られたようだが、けが人も戻ってきたことで、バックラインの成長と強さ、中盤のセカンドボールを回収、刈り取る能力の高さを生かせるようになり、「もうあとはやるだけだったので。怖いものないですし。監督が言うことを聞こうとなって。大まかなとこではなく、細かいところを一人ひとりが理解して、できた感じです」(逢坂)、「ポジションが決まったのも、昨日のご飯を食べてからのミーティングで3バックで行くって言うて。その時、腹くくってみんなで意識合わそうと言って。自分たちが今まで1年間やり続けてきた4-4-2もあるので、しっかり3-4-3で、相手がもしも違うことをやってきたら、しっかり声出して合わせていこうという話はしていました」(平尾海斗)と、開幕戦の大一番ですべてがかみ合った形となった。
6年前の初戦を突破した第98回大会では最高成績のベスト8を記録している徳島市立。
取材・文=小松春生
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