迎えた2026年。ご存じの通り、今季は2月から6月まで明治安田J1百年構想リーグが行われる。FC東京は関東勢10クラブが集結するイーストに在籍。ここで勝ち上がり、最終的に優勝を目指すという目標を掲げて5日から始動した。
「本気で勝ちに行きます」と松橋監督が強調する中、新戦力として加わった一人が稲村隼翔。アルビレックス新潟時代に指揮官に師事し、2024年のJリーグYBCルヴァンカップ決勝でもフル出場した22歳のDFだ。FC東京U-15深川出身の稲村にとっては久しぶりの古巣復帰となるが「中学時代はあまり試合に出ていなかったので、『おかえり』と言ってもらえるのは嬉しいですけど、自分的には新しいチームに来たなというイメージです」と気持ちを切り替え、さらなる高みを目指す構えだ。
その稲村は2025年夏に新潟からセルティックへ完全移籍。東洋大学卒業からわずか半年での欧州挑戦ということで、大きな期待が寄せられた。しかしながら、新天地でのリーグ戦では8月の第3節・リヴィングストン戦1試合に出場しただけで、ほぼベンチ外。初めての異国でいきなり高い壁に阻まれることになったのだ。
「本当にサッカー面の実力の差は、悔しいけどすごくありました。試合に出た時にはやれていた自負もあったし、もっとできるという感触もありました。だけどなかなかチャンスをもらえず、メンタル的にも波があった。そういう中で、この決断をしました」と本人はピッチに立てなかった半年間の悔しさを吐露する。
実際、今季のセルティックは開幕時から不穏な空気に包まれていた。シーズン頭に指揮を執っていたブレンダン・ロジャーズ監督が10月末に辞任。マーティン・オニール監督が暫定でチームを率い、12月からフランス人のウィルフリード・ナンシー監督が後を引き継ぐというゴタゴタが続き、日本からやってきたばかりの若きDFが積極起用される環境とはかけ離れていた。それも逆風になったと言っていい。そんな時、親身になってサポートしてくれたのが、前田大然と旗手怜央という2人の年長者だった。
「2人は初日から温かく迎え入れてくれて、生活面でもすごくサポートしてくれました。試合に出られなくなってからは、メンタル面でもフォローしてくれました。怜央君は『(2024年)アジアカップの時は、自分もそういう立ち位置だったから』と声をかけてくれたし、大然君も『自分も一度海外に行って、日本に戻ってまた海外に来た』という経験を話してくれた。
稲村はとこう語ったが、ポルトガル1部・マリティモから一旦はJリーグに復帰し、横浜F・マリノスでJ1得点王に輝いてセルティックへの挑戦権を掴み取った前田の歩みに勇気づけられる部分もあったはずだ。今の稲村もレンタルで赴いたFC東京でブレイクできれば、再びスコットランドに戻って大きく飛躍できるだろう。恩師・松橋監督のもとでプレーすることで、その可能性がより広がったのは間違いない。
「力さんも昨年は就任1年目。自分の求めるところと選手たちのプレースタイルなど、いろいろな難しさがあって四苦八苦したのかなと感じました。そこに左利きの自分が入れば、ビルドアップのところはスムーズに行くようになるし、自分の特徴も生きるのかなと。守備もハイラインでやれれば、失点も少なくなるでしょうし、僕も前線の速攻の起点になるパス出しもできるようになる。そういうところで貢献できると思います」と本人も力を込めていたが、松橋監督にとっても非常に心強い存在が加わったのである。
ただ、その前に森重真人、アレクサンダー・ショルツという2人のセンターバックの牙城を崩さなければならない。とりわけ森重は稲村にとっての“憧れの人”。幼い頃、一緒に写真を撮ってもらったという偉大な先人を超えなければ、輝かしい未来は開けてこない。
「今までいろんな選手が森重選手に挑戦してきたけど、最後は森重選手が出ているというシーズンが続いていたと思うんです。
目を輝かせる成長株がFC東京の最終ラインに新風を吹かせられれば理想的。背番号17をつける男の躍動感あるパフォーマンスを、今から心待ちにしたいものである。
取材・文=元川悦子

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