2025年のJ1リーグで11位という不本意な成績に終わったFC東京。松橋力蔵監督体制2年目の2026年は、明治安田J1百年構想リーグを制覇し、AFCチャンピオンズリーグエリート出場権を掴みに行こうとしている。


 今オフは指揮官のアルビレックス新潟時代の秘蔵っ子である稲村隼翔や橋本健人、パリ五輪日本代表の山田楓喜らを補強。7日の開幕戦では昨季王者・鹿島アントラーズをホーム・味の素スタジアムに迎えた。雪が舞う中のゲーム、FC東京は貪欲に勝ちに行った。

 意外だったのは、ファジアーノ岡山への武者修行を終えた19歳MF佐藤龍之介がベンチスタートだったこと。指揮官の中では左MFに起用した遠藤渓太の方が状態が良いと判断したのだろう。確かに背番号22を着ける28歳のアタッカーは持ち味のスピードを前面に押し出し、決定機を演出。三竿健斗が退場になった直後の前半44分には、2025年MVPの早川友基が守るゴールに直接FKを叩き込み、先制点を奪った。しかしながら、この1点を守り切れないのがFC東京の勝負弱さでもある。前半終了間際に鹿島にとって“伝家の宝刀”であるリスタートからキム・テヒョンの一撃を浴び、1−1で試合を折り返すことになったのだ。

 後半も数的優位に立つFC東京が一方的に攻め込んだが、どうしてもゴールをこじ開けられない。そこで指揮官が後半18分に切り札として投入したのが、背番号23の佐藤だった。「百年構想リーグで圧倒的な数字とプレーを見せ続けないと、北中米ワールドカップへの道はない。
半年間で成長することを目標にやっていきたい」と2日の開幕前イベントで語気を強めた若武者は「自分がチームを勝たせる」という強い意気込みをピッチで示そうとしたのだ。

 その心意気は積極的なシュート3本という形で如実に表れた。特に惜しかったのは、後半40分のペナルティエリア内のフィニッシュ。しかしながら、名手・早川が立ちはだかり、得点とはならなかった。「早川選手からゴールを取ることは簡単じゃないですけど、僕は昨年(岡山で)取らせていただいたので、今年も取りたい。ゴール前に冷静に駆け引きして、単純なシュートだと入らないと思うので、一捻りしたいですね」とも2日に話していたが、今回はそこまでの余裕はなかったようだ。

 だが、佐藤の見せ場はまだ残されていた。1−1で90分が終了し、今大会の特別ルールであるPK戦に突入したからだ。そこでは指揮官から5番手に指名されたのである。「蹴るだろうとは思っていましたけど、『ああ、5番目か』と。5番目は最後ですし、自分が決めたら勝たせられるという非常に大事な場面を任せてもらえて、身が引き締まる思いでした」と本人は神妙な面持ちで語る。

 本当にその通りの局面が巡ってきた。
鹿島は4番手の小池龍太が失敗。佐藤に命運が託されたのだ。早川の方は「蹴る方が絶対に緊張している」と冷静に向き合ったが、19歳のアタッカーは「良いGKなので中途半端にコースに蹴るよりは、自信を持って真ん中に蹴ることを考えました」とキッパリ。思い切って右足を振り抜き、復帰したばかりの古巣に勝ち点2をもたらしたのである。

「5人目ということで、チームの勝利を決めるというプレッシャーがかかる中、若い選手がそこを任されて決め切った。強いメンタリティを持ち合わせているなと思いました」。この試合を現地で視察した日本代表の森保一監督も、佐藤の勇姿を目に焼き付けた様子。もちろんスタメンで出ていない現状では、W杯メンバー抜擢のレベルには至っていないはず。ここから佐藤がFC東京で地位を確立し、頭抜けた数字を残せば、何が起きるか分からない。そのくらいの期待感を指揮官が持ち合わせていることだけはしっかりと伺えた。

「自分としては『決めて当たり前』という感覚でしたけど、めちゃくちゃ嬉しかった。ただ、まだリーグ戦の1試合目なので、次につなげていきたいという思いが強いです。
チームにとってもこうやってPK戦で勝敗がついたことは大きいし、サポーターも『勝った!』という気持ちを持てたと思う。緊張感ある試合でPKを蹴れたことは自分にとってもプラスですね」

 力強く前を向いた佐藤。FC東京、そして日本サッカーの未来を担う若者が、今回のPKを機に一気に成長曲線を引き上げてくれれば一番だ。彼には単なる19歳のいちプレーヤーとしてとどまっていてもらっては困る。世界基準を常に見据え、凄まじい勢いで高みを追い求めていく姿勢をピッチ上で示し続けることが重要なのだ。

 次戦以降は浦和レッズ川崎フロンターレ柏レイソルと難しい相手が続く。そういう中で早くスタメンを奪取し、ゴールという結果を残してほしいところ。「点を取ってチームを勝たせられる存在」へ瞬く間に飛躍する佐藤龍之介の姿を心待ちにしたいものである。

取材・文=元川悦子


【ハイライト動画】雪中決戦! FC東京vs鹿島アントラーズ

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