FIFAワールドカップ2026前最後の代表活動となる3月シリーズ。28日に対峙するスコットランド代表、31日に挑むイングランド代表はどちらも強豪国。
大舞台での躍進を目論む日本にとって、絶好の腕試しの場となるのは間違いない。

 しかしながら、主軸だった南野拓実久保建英の2人を揃って欠くシャドーはどういう構成になるか未知数。アジア最終予選で5ゴールを挙げた鎌田大地は、遠藤航不在のボランチが主戦場になると目されるだけに、伊東純也、堂安律、三笘薫、中村敬斗などウイングバックとしてプレーするメンバーをうまく組み合わせながら、苦境を乗り切らなければならないだろう。

 こうした中、2列目センターを本職とする数少ない存在が鈴木唯人だ。所属するフライブルクでは『4−2−3−1』のトップ下に固定され、今季初参戦のブンデスリーガで4得点2アシストを記録。日に日にインパクトを強めている。

 直近のザンクトパウリ戦でも、ライン間をフラフラと動きながら絶妙なボールタッチで数多くのチャンスメイクを披露した。後半33分には3~4人のマークを引き連れながら長い距離をドリブルで持ち上がって、イゴール・マタノヴィッチの逆転弾をお膳立て。UEFAヨーロッパリーグラウンド16・ゲンク戦2ndレグの1得点1アシストに続くインパクトを残したのだ。このプレーに対し、SNS上では「中田英寿を彷彿させる」といった賛辞も寄せられた。20年前に引退した日本のレジェンドに似てきたという前向きなイメージは確かにある。

「ああいうふうにドリブルで行ききれるようになろうと自分の中ですごく意識しているので、とりあえずは今はチャレンジしているところ。
回数は比較的多くなっているし、成功回数も少しずつ増えてきていると思います。最近はある程度、ブンデスの中で遜色なくできていると感じている。ザンクトパウリも残留争いしているチームだし、そのくらいやれないといけない。代表には自分に似たタイプはいないと思っているので、僕自身の特徴を生かしていければいいですね」と欧州挑戦4年目にして確固たる自信をつかんだ様子だ。

 2023年1月にストラスブール入りし、欧州でのキャリア第一歩を踏み出した頃は、ここまでの迫力、力強さ、守備強度や運動量は出せなかった。本人も「あの経験があるから今につながっている。回り道してきたことも決して無駄ではない」と言い切る。そこから2年間デンマークのブレンビーで実績を積み上げ、着実に前進してきたからこそ、ようやくたどり着いた欧州5大リーグで存在価値を示せているのだろう。今の鈴木唯人は、本当に世界のトップ・オブ・トップで堂々と戦えるプレーヤーに変貌しつつあるのだ。

 ただ、日本代表ではまだ完全定着を果たしたとは言い切れない状況にある。清水エスパルス時代にルーキーだった2021年3月のA代表候補合宿参加で好スタートを見せたが、2024年6月のミャンマー代表戦で初キャップを刻むまで3年以上の時間を要している。そのまますんなりとコアメンバー入りできればよかったが、アジア最終予選途中までは選外。
昨年6月のオーストラリア代表戦で復帰を果たし、9月のメキシコ代表・アメリカ代表との遠征でも再招集されるに至ったが、思うような活躍は叶っていない。

 それでも、本人は「僕自身、そんなにいいコンディションでここ(代表)に来られたことは今までない。今回は自信とともに来れていると思います」と力強く言い切る。「間違いなくブンデスで高い強度の中でやって、プレーと質は上がってきている。基本的に『走って戦って守備をしてそこから入る』というのを考えているので、そういうところからチームを助けながら、攻撃の特徴を見せていければいいですね」とフライブルクのプレーを日本代表に持ち込んで、“ニュー鈴木唯人”を印象付ける構えだ。
 
 森保一監督も若きファンタジスタの飛躍的成長を高く評価しているはず。今回は確実に出番を与えるだろう。その舞台がスコットランド戦になるのか、イングランド戦になるのかは分からないが、強豪バイエルンやドルトムント、ELでの多彩な相手との戦いから強敵との戦い方は心得ているはず。味方とうまくコミュニケーションを取りながら、鈴木唯人らしい“違い”を示していけば、W杯メンバー滑り込みに大きく前進するに違いない。

「僕のポジションは周りもいい選手が多いので、間違いなく厳しい競争が待っていると思います。でも、個々に特徴は違いますし、僕もまた違ったタイプの選手として、チームにいい色を与えられればいいかなと思っています」。あくまで謙虚な物言いを貫く鈴木唯人。
その分、ピッチ上では雄弁であってほしい。3月の2連戦で日本攻撃陣のキーマンとも言えるき男の一挙手一投足を、我々は冷静に注視していくべきだろう。

取材・文=元川悦子


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