■東海は初めての決勝同士のカードに

 3月29日に岐阜県関市のグリーン・フィールド中池で行われた「JA全農杯 全国小学生選抜サッカー IN 東海」。愛知県、岐阜県、三重県、静岡県から県大会の上位2チームの合計8チームが集結し、決勝トーナメントを行い、ファイナリスト2チームに与えられる全国大会(JA全農杯 全国小学生選抜サッカー決勝大会)の出場権をかけて熱戦を繰り広げた。


 試合のレギュレーションは8人制で、12分×3ピリオドのゲーム形式で行われる。第1ピリオド、第2ピリオドはそれぞれ試合前に決定した被りのないスタメン8人が出場。5分間のインターバルを挟んで行われる第3ピリオドは、負傷者などアクシデントの発生で第1、第2ピリオド両方に出場した選手を除いた中で自由な組み合わせでスタメン8人を決めて出場でき、かつ交代も無制限に行える。

 登録メンバー全員に一定数以上のプレー時間が与えられている中で、いかに3つのピリオドでスタメン起用する選手の組み合わせや、フォーメーションなど工夫して、選手たちの持ち味やチームカラーを打ち出せるか。相手のやり方を見て、第3ピリオドで勝負をかけるか。チームの方向性、選手の個性、ベンチの采配、そして総合力の全てが問われてくる。

■試合の流れを変えたビッグプレー

 東海地区は準決勝でFC,K-GP(岐阜県第二代表)を1-0で下したSEPALADA SC U-12(静岡県第一代表)と、ISS.F.C(岐阜県第一代表)を4-0で下したFCヴェルダン(愛知県第一代表)が東海代表の権利を手にし、決勝に勝ち上がった。

 第1ピリオド2分、いきなり試合は動いた。ヴェルダンの165cmのエースストライカー・林駿之介が先制ゴールを決めると、その勢いのままにヴェルダンが一気に攻勢に出る。3分には再び林が鋭いターンで前を向くと、ペナルティーエリア外から放った強烈なミドルシュートがバーを直撃した。

 直後の4分、ゴラッソが生まれる。左サイドハーフライン手前で相手を背負いながらボールを受けると、素早くターンをして交わしてドリブルを開始。
スピードと絶妙なコース取りで2人を振り切って、さらにカバーに来たDFも交わすと、GKとの1対1を制してゴールに突き刺した。

 だが、SEPALADAの選手は折れなかった。5分に林が再びGKと1対1になったが、シュートはGK石川拓実がビッグセーブ。直後の6分にも林がパスカットからシュートを狙うが、「左が空いていたのでそこを狙ってくると思った」とGK石川が即座に反応をして、足で阻んだ。

 石川の踏ん張りにフィールドの選手たちも応える。11分、右サイドで仲井桜祐が粘ってコーナーキックを得ると、川平漸のキックを中央でキャプテンの鈴木皇翔がドンピシャヘッドで合わせて1点差に追い上げて、第1ピリオドを終了した。

 迎えた第2ピリオド。3分にリードをしているヴェルダンが先に仕掛ける。右CKのショートコーナーから岸本新がミドルシュート。これはSEPALADAのGK久保川太陽がファインセーブ。

 すると、ここからSEPALADAが反撃に転じる。4分にロングパスから中西翔哉が相手DFをすり抜けてGKと1対1に。
だが、シュートは判断よく前に飛び出してきたGK阿知和匠に止められてしまう。

 直後の5分、この試合を大きく左右するビッグプレーがヴェルダンから飛び出した。スルーパスに抜け出したSEPALADAの川上大翔がドリブルでGKと1対1になりシュートを打とうとした瞬間に、ヴェルダンの小田切葉太が猛然とダッシュして食らいつき、足からボールが離れた瞬間にスライディングでボールをエンドラインにかき出したのだ。

 「自分がいま何をしなければいけないのかをしっかりジャッジした上で、危険を予測して対応してくれました。大きなプレーだと思います」とヴェルダンの荒川貴一監督が目を細めたように、最後まで諦めない姿勢がチームの大きなピンチを救った。

 このビッグプレーで勢いを取り戻したヴェルダンに対し、SEPALADAも前線の中西の飛び出し、川上の最終ラインからのスピードに乗ったプラスワンの動きなどで前への圧力を緩めなかった。

 ここからはまさに一進一退の攻防が続き、スコアは動かないまま第2ピリオドが終了。1点差で最後の第3ピリオドを迎えた。

■相手エースにマンマークをつけたSEPALADA

 ここでSEPALADAが動いた。第1ピリオドで2ゴールを挙げている相手のエース・林に対して仲井をマンマークにつけてきたのだった。この作戦を実行した裏側を西澤和真監督はこう明かした。

「相手の4番の選手(林)の対策は、試合前に子供たちが『いつも通り行く』という声が多かったので、そのまま挑んだら2点を取られてしまった。
第1ピリオドが終わって、選手たちがベンチで何を話すのか楽しみにしていたら、具体的な案が出なかった。なので、こちら側からマンマークをつけるか、そのままで行ってみんなで守り方を工夫するか投げかけると、『マンマークをやりたい』という意見が多かった。さらに選手たちに、誰がマンマークをするのか。足が速い選手か、身体が強い選手か、頑張れる選手なのかを考えてもらい、チームイチの頑張り屋である仲井を推す声が多く、本人に確認をしたら『やりたいです』と言ったので、彼がマンマークにつきました」

 ヒントを与えて、選手たちで考えて決断をして実践をする。それはヴェルダンも同じだった。相手がエースにマンマークをつけてきたことを、守備の要である岡安歩士が察すると、すぐに「駿之介にマークがついているから、他の選手がもっと関われ」と的確な指示を出した。

 その指示通りにフリーマンの岩﨑桜芽、コンビを組む飯川壮和、伊東羽優馬と牧隼人の両サイドが距離感を近くして、追い越す動きとパスコースを引き出す動きで林をサポート。それに対し、SEPALADAも大役を任された岡安だけでなく、小田統也、山田朔久、川上の最終ラインもサポートに入って、粘り強い守備を見せた。

 5分、ヴェルダンは林を経由せず、鵜飼航輔のクサビのパスから飯川壮和が受けてスルーパス。抜け出した伊東が狙うが、第1ピリオドでビッグセーブを連発したGK石川の抜群の飛び出しに阻まれた。6分にも右サイドに流れた林が素早いターンから突破を仕掛け、マイナスのクロス。ゴール前でフリーの岩﨑が狙うが、バーの上を超えて行った。


 8分、林が自陣からドリブルでカウンターを仕掛けてスルーパスを送ると、飯川が抜け出してGKと1対1になるが、これもGK石川が完璧に読み切ってブロック。

 このヴェルダンの波状攻撃を耐え凌いだことで、試合は再び膠着状態に陥り、そのままタイムアップ。第1ピリオド2-1、第2、3ピリオドが0-0と白熱の攻防戦は、ヴェルダンに軍配が上がり、初優勝を手にした。

 優勝したFCヴェルダン、準優勝のSEPALADA SC U-12が5月に神奈川県で開催される『JA全農チビリンピック2026 JA全農杯2026全国小学生選抜サッカー決勝大会』に東海代表として出場する。

■試合後コメント

▼荒川貴一監督(FCヴェルダン)
選手たちに一番やってほしいのは、「やらされている」のではなくて、言われて気づいたり、自分で見て気づいたりした上で、しっかりと考えてプレーに表現すること。もちろん、気づいてもうまくいかない時もある中で、失敗も大事な経験だからこそ、選手たちが試合の中でトライ&エラーを繰り返しながら成長してほしいと思っています。この大会はそういう機会を得られる場としても重要ですし、決勝まで経験できたことは大きかったと思います。

全国に向けての一番は、やっぱり子供たちがピッチで全力を出せるような準備をすること。足りない部分をこの1カ月でどこまでベースアップをできるか。いかに試合当日にメンタル的にも、身体的にもいい状況で迎えられるか。育成の観点からしっかりと準備をしたいと思います。

▼林駿之介(FCヴェルダン)
しっかりチームで崩せていたので、いい試合だったと思います。
個人的には小学3年生の時からターンと両足のキックを武器にしているので、全国に向けてもっと磨いていきたいと思っています。これを武器にしているのは、このまま身長が大きくなるかどうかは分かりませんし、この先、周りに追いつかれて何も出来なくなってしまうのは嫌なので、そこは身体だけじゃなくて、技術をちゃんと使って点を決められるようになると心がけています。

僕のスピードも武器だと思うので、スピードを生かしながらドリブルでかわして行ってシュートを決められるような選手になりたいですし、全国では自分の武器を生かしながら点を取ってチームを勝たせていきたいです。

▼岡安歩士(FCヴェルダン)
ディフェンスとして心がけていることはあまりシュートを打たせないことです。(林選手にマンマークをつけてきたことに対して)相手の4番がついている時に逆サイドなどが空いているので、そこにパスを出せたらフリーでシュートが打てると指示を出しました。僕は相手を見ることを大事にしていて、相手を見ないとワンタッチ目とかで取られてしまうからです。

あと、味方がボールを持った時に相手がどのように来ているかなどを見て指示を出しますし、味方が抜かれた時や裏を走られた時のカバーとかにちゃんといけるようなポジションを取ることを大事にしています。全国大会に出場できることは嬉しいので、全国でもできるだけ無失点にしてチームの役に立つことができたらいいなと思っています。


▼西澤和真監督(SEPALADA SC)
いつも言っているのは、「グラウンド内=グラウンド外」。宿舎でもスリッパ1つ並べることに気づかないのは、試合中に細かい気づきを得られないままやられてしまうんです。私生活を雑にしていると、プレーも雑になる。上手くなりたかったらピッチ外をちゃんとしようとは常に伝えています。
その中で今回は選手たちがミーティングで「守備をきちんとやろう」と話をして、静岡県予選を2失点だけで勝ち上がり、今大会も決勝のヴェルダンさんの2失点のみでした。

ただ、決勝を通じてまだまだ選手としての自立、自己解決力が足りないと思ったので、「準優勝だった。本当に悔しい」という気持ちを持って、また明日からやっていこうと選手には話しました。全国ではうまいチームを凌駕するくらいの魂を見せたいと思います。

▼石川拓実(SEPALADA SC U-12)
決勝で負けて本当に悔しかったです。でも、1対1のシーンでいつもGKコーチが「自分が出ると思ったら、迷わず出ろ」と言ってくれていたことを実際に出して止めることができたので、そこはよかったです。県予選を含め、ここまで来ることが出来たのは、みんなのおかげで、(小林)総司郎も僕に励ましの声をかけてくれるなど、みんなに助けられてプレーができていると思っています。全国ではみんなで優勝を狙いたいと思います。

取材・文=安藤隆人
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